(C)2024「ぼくのお日さま」製作委員会/COMME DES CINE'MAS
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2024.10.23

奥山大史監督最新作『ぼくのお日さま』北海道ロケの協力をしたUHB社員が語る裏側!

池松壮亮さん主演映画『ぼくのお日さま』に北海道撮影のロケーション協力などで制作に参加したUHB映像プロデュース室の後藤一也部長に、アナウンサーの柴田平美がインタビュー。UHBがこの作品に関わることになった経緯、ロケ地選定の裏側を中心にお話を伺いました。

北海道の撮影を担当することになった経緯

―――まず、今回のロケーション協力はどのように行ったのでしょうか?
 
後藤:今回の僕の役割は、奥山監督がシナリオで描いた“雪が降る田舎町”を北海道で撮りたいけれども、北海道の地理や風土に詳しくなかった。撮影地が決まっていない段階で、こんな場所がいいんじゃないかとこちらから提案して、一緒に奥山監督と見て回りながらシナリオに合った場所を見つけていくという仕事でしたね。
 
―――どういう経緯でオファーを受けたのですか?
 
後藤:知人のプロデューサーから、奥山監督という海外からも注目されている若い監督が凍った湖でアイススケートをするシーンをメインに作りたがっていて、後藤さんもいるし北海道がいいんじゃないかという話をいただきました。僕なりのイメージは湧くけれど、最初は奥山監督がイメージする“雪が降る田舎町”がわからなくて。奥山監督とオンラインでイメージをすり合わせて、実際に北海道に来たプロデューサーと3人でこちらで提案した場所を中心に北海道中を車でぐるぐると回りました。車内で劇中にかかる「The Zombies」とか聞きながら、奥山監督の話を聞くうちに、監督が考える舞台となる街のイメージがだんだんわかっていきましたね。
 
―――奥山監督がイメージする北海道は、どういうイメージでしたか?
 
後藤:いわゆる、富良野とか美瑛みたいな“雄大な北海道”のような風景ではなくて、ちょっと生活感のある雪の降る田舎町、その町には都市部があって、都市部は住宅が密集して生活感のある場所。主人公の少年・タクヤが暮らしているところは、そこから少し外れた農村地帯。“雪が降る田舎町”と言っても物語によってイメージと違う。監督の世界観だから、そこを理解しようと提案していきました。
―――ロケ地選定のポイントは?
 
後藤:奥山監督は凍った沼でアイスダンスするシーンを第一に考えていたので、まずそこを決めることになりました。北海道で冬に凍って滑れる湖沼はそうそうないんですよね。雪が積らない場所は太平洋側の十勝や苫小牧周辺かなと。
 
―――私の出身地・根室があったのに(笑)
 
後藤:根室、釧路、苫小牧、帯広とかを選定していたんです。プロデューサーに提案していた段階では、ジュエリーアイスで有名な豊頃の十勝川などいくつか候補を立てていました。その中で奥山監督は、雪が少なくて、あまり広大じゃない場所がいいと言っていて。“コーチ役の池松さんだけが知っている場所”みたいなところが理想だと。調べていくと、苫小牧は樽前山からの伏流水がいっぱい出ていて、実はすごく沼の多い場所なんです。雪も少ないので、沼は苫小牧にしようと決まりました。舞台となる町については、色々なところに行く中で、監督がここ好きって言わないかもしれないと思いながら、以前プロデューサーをしていたUHBの番組『EXILE TRIBE 男旅』で通っていた余市のワイナリーの風景とかどうかなと。余市や赤井川は、カルデラ地形で山が重なり合い、北海道の他の場所にはない美しさがあるから山のレイヤーがすごく良いとなって。山が近くて重なっている風景はあまり北海道はないんですが、監督がすごく気に入って、ここがタクヤの住んでいる町だと。ここに比べてもう少し都市部だとすると…など、どんどんイメージが膨らんでいって、タクヤと一緒にアイスダンスを踊る少女・さくらは小樽がいいんじゃないか、コーチはこういうところに住んでいる、みたいにシナリオが固まっていく感じでした。
 

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―――結構回ったんじゃないですか。
 
後藤:苫小牧に行って、小樽、石狩、余市、赤井川、その後、ニセコや室蘭、道北の富良野、美瑛、名寄、美深までいきましたね。そこから監督が気に入った風景を“想像の町のピース”として集めて、一つの架空の街を作り上げました。石狩の灯台、カルデラの風景、石狩の円形小学校、小樽の海が見える坂道というように。その1ヶ月後ぐらいに、奥山監督が再び北海道に来て、シナリオや撮影地を固めていきました。
 
―――道内出身の私が知らないような北海道の景色もたくさんあるんでしょうね。
 
後藤:僕も知らない素敵な景色がすごくありました。「旧石狩小学校」は、道内で2番目にできた円形小学校で4年前に廃校になっていて、光の入り方や教室が素敵なんですよ。奥山監督はそうやって自分の好きなものを見つけていく。札幌の真駒内セキスイハイムアイスアリーナも、監督が切り取るとまるで北欧の風景みたいに映っていて、かなりレトロで雰囲気のある建物なんだと気付いたり。
 
―――そういう見せ方の部分も監督はこだわっていらっしゃった?
 
後藤:監督の感性で魅力的だな、かわいいな、雰囲気あっていいなというものを選んでいた。カメラも監督が自分で回しますから。
―――余市や赤井川、石狩の人たちの協力も必要でしたよね。
 
後藤:そうですね。UHBのニュースの特集にもなりましたが、苫小牧の沼にリンクを作るのが非常に大変で。凍った沼ですぐ滑れるかって言ったらガタガタで難しい。協力してくれた建設会社の方に聞くと、太平洋側の苫小牧では父母たちが自分たちで校舎のグラウンドにリンクを作る技術があるというので、その技術も活かして作ってもらいました。
 
―――皆さんに協力していただいて出来上がったあのシーンなんですね。実際に現場で撮影に立ち会って監督から感じたことを教えてください。
 
後藤:若いのに、自分の芯が強くある方だと思いました。現場で見ていると、本当にテイクを重ねるんですよ。20から30テイク。
 
―――そんなに!
 
後藤:監督という仕事は、現場スタッフから時間内に撮影を終えてくださいというプレッシャーがすごくかかるんです。役者さんも何回も同じ芝居をさせると怒る人もいる。粘って撮るって結構難しいんですよね。奥山監督の撮り方を見ていると、テイクを重ねながら役者の芝居を凝視するように観察している。すると、1シーンで5つくらい心を動かすテイクが撮れるんです。僕もドキュメンタリーやドラマの監督経験がありますが、これは発見でした。しかも、奥山監督はテイクを重ねながら自分の想像を超える芝居が生まれないか冷静に謙虚に観察しているんです。年上の大人たちに紛れながら、多分遠慮とかもあると思うんだけど、それでもぶれずに撮り切る人ってなかなかいないです。
あと、台本の中のセリフは極力少なくて、ドキュメンタリーのように撮りたいと台本に明記されていて。最初からそういう意図で撮影していましたね。
 

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―――確かに、かなりドキュメンタリーに近かったかもしれないです。後藤さんは、ドキュメンタリーなどを数多く制作していますが、そんな後藤さんから見た撮影現場での驚きや撮影の仕方の違いあれば教えてください。
 
後藤:やっぱり、30テイク重ねていくのは発見でしたね。僕もドラマを撮ったことがあるけれど、ドラマとドキュメンタリーの制作の仕方は色々違いがあるとされている中で、ドキュメンタリーっぽく撮ると、単に手持ちカメラで撮るとか、リハなしでいきなり芝居をさせるということをする人も多いんじゃないかと思います。ただ、奥山監督のように、何回も失敗する中で生まれてくる人間の関係とか、意味合いを観察して粘るというのはドキュメンタリーらしい行為なんですよね、フィクションの現場ですが。結局、ドキュメンタリーは“撮影対象を凝視する”ということだと思うので、ステレオタイプとか自分が思った通りに撮りたいとかではなくて、一体この人は何なのかとか、人間とは何なのかを相手の側から理解しようっていうことに近くて。つまり、よく相手を見るという行為と等しいんですよね。奥山監督は、若いのに思い上がらず、非常に謙虚に人を見ている気がします。そういう意味で能力がとても高くある人だなと感じました。
―――最後に、この映画に参加してみていかがでしたか?
 
後藤:奥山さんも言っていましたが、世界の映画祭は若い才能を求めている。実際に今回一緒に仕事をしてみると、僕たちが描いてこなかった北海道みたいのが切り取れて、例えば広角レンズで撮らないだとか、これまでと違う切り取り方だったりする。新しい才能ある人たちと一緒にここに住んでいる人たちのドラマを作るというのはとても面白いことで、活性化に繋がるんじゃないかと思って国際映画祭も応援しています。北海道やUHBが世界に挑戦する若い才能を応援し、北海道の新しい映像や魅力が世界に発信されていく仕事に携われたことは非常に刺激的でした。映画製作によって人と人がつながり、インバウンドなどで地域にも貢献できるといいなと思っています。今回、奥山さんたちに出会い、若い才能によって北海道が切り取られ、カンヌに行く作品が完成しました。テレビ局もそういう若い作り手がいっぱい入ってくると、ガラっと変わっていくような気がしますね。

後藤一也 プロフィール

北海道文化放送映像プロデュース室部長。『ある出所者の軌跡〜浅草レッサーパンダ事件の深層』(2005年)など複数のテレビドキュメンタリーを監督、日本民間放送連盟賞報道ドキュメンタリー部門最優秀賞、ギャラクシー賞選奨、放送文化基金賞、地方の時代映像祭優秀賞など多数受賞。プロデュース・監督した『乃木坂46橋本奈々未の恋する文学』では、2018アジア旅映画テレビ映像祭(中国テレビ芸術家協会主催)国際番組部門グランプリ受賞。ドラマ『バッケンレコードを超えて』(2013年、出演:比嘉愛未)監督・脚本を務める。映画は、『アジアの天使』(2021年、石井裕也監督)などに製作参加。2024年カンヌ国際映画祭正式出品『ぼくのお日さま』(9月13日全国公開、奥山大史監督)では、北海道撮影のロケーション担当など制作に参加している。

映画『ぼくのお日さま』 北海道撮影地ロケマップ
otaru-fc.jp/2024/09/10/384
 

作品情報

監督・撮影・脚本・編集:奥山大史

主題歌:ハンバート ハンバート「ぼくのお日さま」

出演:越山敬逹、中西希亜良、池松壮亮、若葉竜也、山田真歩、潤浩 ほか

製作:「ぼくのお日さま」製作委員会

製作幹事:朝日新聞社

企画・制作・配給:東京テアトル

共同製作:COMME DES CINE'MAS制作プロダクション:RIKIプロジェクト

助成:文化庁文化芸術振興費補助金(映画創造活動支援事業)独立行政法人日本芸術文化振興会

公式サイト:https://bokunoohisama.com/

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北海道の撮影を担当することになった経緯

―――まず、今回のロケーション協力はどのように行ったのでしょうか?
 
後藤:今回の僕の役割は、奥山監督がシナリオで描いた“雪が降る田舎町”を北海道で撮りたいけれども、北海道の地理や風土に詳しくなかった。撮影地が決まっていない段階で、こんな場所がいいんじゃないかとこちらから提案して、一緒に奥山監督と見て回りながらシナリオに合った場所を見つけていくという仕事でしたね。
 
―――どういう経緯でオファーを受けたのですか?
 
後藤:知人のプロデューサーから、奥山監督という海外からも注目されている若い監督が凍った湖でアイススケートをするシーンをメインに作りたがっていて、後藤さんもいるし北海道がいいんじゃないかという話をいただきました。僕なりのイメージは湧くけれど、最初は奥山監督がイメージする“雪が降る田舎町”がわからなくて。奥山監督とオンラインでイメージをすり合わせて、実際に北海道に来たプロデューサーと3人でこちらで提案した場所を中心に北海道中を車でぐるぐると回りました。車内で劇中にかかる「The Zombies」とか聞きながら、奥山監督の話を聞くうちに、監督が考える舞台となる街のイメージがだんだんわかっていきましたね。
 
―――奥山監督がイメージする北海道は、どういうイメージでしたか?
 
後藤:いわゆる、富良野とか美瑛みたいな“雄大な北海道”のような風景ではなくて、ちょっと生活感のある雪の降る田舎町、その町には都市部があって、都市部は住宅が密集して生活感のある場所。主人公の少年・タクヤが暮らしているところは、そこから少し外れた農村地帯。“雪が降る田舎町”と言っても物語によってイメージと違う。監督の世界観だから、そこを理解しようと提案していきました。

(C)2024「ぼくのお日さま」製作委員会/COMME DES CINE'MAS

―――ロケ地選定のポイントは?
 
後藤:奥山監督は凍った沼でアイスダンスするシーンを第一に考えていたので、まずそこを決めることになりました。北海道で冬に凍って滑れる湖沼はそうそうないんですよね。雪が積らない場所は太平洋側の十勝や苫小牧周辺かなと。
 
―――私の出身地・根室があったのに(笑)
 
後藤:根室、釧路、苫小牧、帯広とかを選定していたんです。プロデューサーに提案していた段階では、ジュエリーアイスで有名な豊頃の十勝川などいくつか候補を立てていました。その中で奥山監督は、雪が少なくて、あまり広大じゃない場所がいいと言っていて。“コーチ役の池松さんだけが知っている場所”みたいなところが理想だと。調べていくと、苫小牧は樽前山からの伏流水がいっぱい出ていて、実はすごく沼の多い場所なんです。雪も少ないので、沼は苫小牧にしようと決まりました。舞台となる町については、色々なところに行く中で、監督がここ好きって言わないかもしれないと思いながら、以前プロデューサーをしていたUHBの番組『EXILE TRIBE 男旅』で通っていた余市のワイナリーの風景とかどうかなと。余市や赤井川は、カルデラ地形で山が重なり合い、北海道の他の場所にはない美しさがあるから山のレイヤーがすごく良いとなって。山が近くて重なっている風景はあまり北海道はないんですが、監督がすごく気に入って、ここがタクヤの住んでいる町だと。ここに比べてもう少し都市部だとすると…など、どんどんイメージが膨らんでいって、タクヤと一緒にアイスダンスを踊る少女・さくらは小樽がいいんじゃないか、コーチはこういうところに住んでいる、みたいにシナリオが固まっていく感じでした。
 
―――結構回ったんじゃないですか。
 
後藤:苫小牧に行って、小樽、石狩、余市、赤井川、その後、ニセコや室蘭、道北の富良野、美瑛、名寄、美深までいきましたね。そこから監督が気に入った風景を“想像の町のピース”として集めて、一つの架空の街を作り上げました。石狩の灯台、カルデラの風景、石狩の円形小学校、小樽の海が見える坂道というように。その1ヶ月後ぐらいに、奥山監督が再び北海道に来て、シナリオや撮影地を固めていきました。
 
―――道内出身の私が知らないような北海道の景色もたくさんあるんでしょうね。
 
後藤:僕も知らない素敵な景色がすごくありました。「旧石狩小学校」は、道内で2番目にできた円形小学校で4年前に廃校になっていて、光の入り方や教室が素敵なんですよ。奥山監督はそうやって自分の好きなものを見つけていく。札幌の真駒内セキスイハイムアイスアリーナも、監督が切り取るとまるで北欧の風景みたいに映っていて、かなりレトロで雰囲気のある建物なんだと気付いたり。
 
―――そういう見せ方の部分も監督はこだわっていらっしゃった?
 
後藤:監督の感性で魅力的だな、かわいいな、雰囲気あっていいなというものを選んでいた。カメラも監督が自分で回しますから。

(C)2024「ぼくのお日さま」製作委員会/COMME DES CINE'MAS

―――余市や赤井川、石狩の人たちの協力も必要でしたよね。
 
後藤:そうですね。UHBのニュースの特集にもなりましたが、苫小牧の沼にリンクを作るのが非常に大変で。凍った沼ですぐ滑れるかって言ったらガタガタで難しい。協力してくれた建設会社の方に聞くと、太平洋側の苫小牧では父母たちが自分たちで校舎のグラウンドにリンクを作る技術があるというので、その技術も活かして作ってもらいました。
 
―――皆さんに協力していただいて出来上がったあのシーンなんですね。実際に現場で撮影に立ち会って監督から感じたことを教えてください。
 
後藤:若いのに、自分の芯が強くある方だと思いました。現場で見ていると、本当にテイクを重ねるんですよ。20から30テイク。
 
―――そんなに!
 
後藤:監督という仕事は、現場スタッフから時間内に撮影を終えてくださいというプレッシャーがすごくかかるんです。役者さんも何回も同じ芝居をさせると怒る人もいる。粘って撮るって結構難しいんですよね。奥山監督の撮り方を見ていると、テイクを重ねながら役者の芝居を凝視するように観察している。すると、1シーンで5つくらい心を動かすテイクが撮れるんです。僕もドキュメンタリーやドラマの監督経験がありますが、これは発見でした。しかも、奥山監督はテイクを重ねながら自分の想像を超える芝居が生まれないか冷静に謙虚に観察しているんです。年上の大人たちに紛れながら、多分遠慮とかもあると思うんだけど、それでもぶれずに撮り切る人ってなかなかいないです。
あと、台本の中のセリフは極力少なくて、ドキュメンタリーのように撮りたいと台本に明記されていて。最初からそういう意図で撮影していましたね。
 
―――確かに、かなりドキュメンタリーに近かったかもしれないです。後藤さんは、ドキュメンタリーなどを数多く制作していますが、そんな後藤さんから見た撮影現場での驚きや撮影の仕方の違いあれば教えてください。
 
後藤:やっぱり、30テイク重ねていくのは発見でしたね。僕もドラマを撮ったことがあるけれど、ドラマとドキュメンタリーの制作の仕方は色々違いがあるとされている中で、ドキュメンタリーっぽく撮ると、単に手持ちカメラで撮るとか、リハなしでいきなり芝居をさせるということをする人も多いんじゃないかと思います。ただ、奥山監督のように、何回も失敗する中で生まれてくる人間の関係とか、意味合いを観察して粘るというのはドキュメンタリーらしい行為なんですよね、フィクションの現場ですが。結局、ドキュメンタリーは“撮影対象を凝視する”ということだと思うので、ステレオタイプとか自分が思った通りに撮りたいとかではなくて、一体この人は何なのかとか、人間とは何なのかを相手の側から理解しようっていうことに近くて。つまり、よく相手を見るという行為と等しいんですよね。奥山監督は、若いのに思い上がらず、非常に謙虚に人を見ている気がします。そういう意味で能力がとても高くある人だなと感じました。
―――最後に、この映画に参加してみていかがでしたか?
 
後藤:奥山さんも言っていましたが、世界の映画祭は若い才能を求めている。実際に今回一緒に仕事をしてみると、僕たちが描いてこなかった北海道みたいのが切り取れて、例えば広角レンズで撮らないだとか、これまでと違う切り取り方だったりする。新しい才能ある人たちと一緒にここに住んでいる人たちのドラマを作るというのはとても面白いことで、活性化に繋がるんじゃないかと思って国際映画祭も応援しています。北海道やUHBが世界に挑戦する若い才能を応援し、北海道の新しい映像や魅力が世界に発信されていく仕事に携われたことは非常に刺激的でした。映画製作によって人と人がつながり、インバウンドなどで地域にも貢献できるといいなと思っています。今回、奥山さんたちに出会い、若い才能によって北海道が切り取られ、カンヌに行く作品が完成しました。テレビ局もそういう若い作り手がいっぱい入ってくると、ガラっと変わっていくような気がしますね。

後藤一也 プロフィール

北海道文化放送映像プロデュース室部長。『ある出所者の軌跡〜浅草レッサーパンダ事件の深層』(2005年)など複数のテレビドキュメンタリーを監督、日本民間放送連盟賞報道ドキュメンタリー部門最優秀賞、ギャラクシー賞選奨、放送文化基金賞、地方の時代映像祭優秀賞など多数受賞。プロデュース・監督した『乃木坂46橋本奈々未の恋する文学』では、2018アジア旅映画テレビ映像祭(中国テレビ芸術家協会主催)国際番組部門グランプリ受賞。ドラマ『バッケンレコードを超えて』(2013年、出演:比嘉愛未)監督・脚本を務める。映画は、『アジアの天使』(2021年、石井裕也監督)などに製作参加。2024年カンヌ国際映画祭正式出品『ぼくのお日さま』(9月13日全国公開、奥山大史監督)では、北海道撮影のロケーション担当など制作に参加している。

映画『ぼくのお日さま』 北海道撮影地ロケマップ
otaru-fc.jp/2024/09/10/384
 

作品情報


(C)2024「ぼくのお日さま」製作委員会/COMME DES CINE'MAS

監督・撮影・脚本・編集:奥山大史

主題歌:ハンバート ハンバート「ぼくのお日さま」

出演:越山敬逹、中西希亜良、池松壮亮、若葉竜也、山田真歩、潤浩 ほか

製作:「ぼくのお日さま」製作委員会

製作幹事:朝日新聞社

企画・制作・配給:東京テアトル

共同製作:COMME DES CINE'MAS制作プロダクション:RIKIプロジェクト

助成:文化庁文化芸術振興費補助金(映画創造活動支援事業)独立行政法人日本芸術文化振興会

公式サイト:https://bokunoohisama.com/

柴田平美

UHBアナウンサー

UHBアナウンサー。ねむろ観光大使。土曜の情報番組「いっとこ!」の映画コーナーを担当。私が初めて観た映画は『名探偵コナン 天国へのカウントダウン』(2001)。地元・根室に映画館がなかったため、観たい映画があると隣町の釧路まで行って観ていました。映画館では、一番後ろの真ん中で、ひとりで観るのが好き。ジャンルは、ラブ・ファンタジー・アクションを中心に、話題作をチェックしています。皆さんの心に残る映画を見つけるきっかけとなれますように。

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