(C)2024 20th Century Studios. All Rights Reserved.
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2024.9.5

想像を超えた脳内世界が観る者を激しく揺さぶる「憐れみの3章」試写会レビュー

前作「哀れなるものたち」で、アカデミー賞作品賞など11部門にノミネートされたヨルゴス・ランティモス監督の最新作「憐れみの3章」が、9月27日(金)に公開。ランティモス監督の作品は、テーマや映像表現、俳優の演技まで、いずれも大胆かつ斬新、脳裏に焼きついて離れない独特の描写が多いですが、本作も同様に、強烈な印象を残しています。そして、「哀れなる者たち」や「女王陛下のお気に入り」に続いて監督とタッグを組む、主演のひとりエマ・ストーンとのコンビネーションにも注目!観るものを激しく揺さぶる本作をSASARU movie編集部がレビュー!

奇想天外で接点のない3つの物語で構成されるストーリー

場面写真2

(C)2024 20th Century Studios. All Rights Reserved.

本作はタイトルの通り、3つの独立した物語=章で構成され、それぞれの物語で、主要キャストが別のキャラクターを演じています。冒頭、「R.M.F.」という刺繍が入ったシャツを着た男が登場。ここから、その記号だけが共通する不思議な3つの物語が始まります。
 
1話目の「R.M.F.の死」は、ある夜、ロバート(ジェシー・プレモンス)の運転する車が、わざと別の車に追突するところから始まります。ロバートは病院に運ばれるものの軽傷でしたが、彼の行動や食生活、妻との性生活などすべてを把握する上司のレイモンド(ウィレム・デフォー)は、再び同じ車で、今度はもっと高速で追突することを命令します。これまで、それらに従ってきたロバートですが、恐怖のあまり断ると、妻のサラ(ホン・チャウ)が行方不明になってしまい…。
 
2話目「R.M.Fは飛ぶ」は、警察官のダニエル(ジェシー・プレモンス)と、海洋調査に出たまま行方不明になった妻リズ(エマ・ストーン)との話。精神的なダメージが大きいダニエルを案じた同僚のニーズ(ママドゥ・アティエ)と妻のマーサ(マーガレット・クアリー)は、彼を励まそうと自宅を訪ねてディナーを共にします。その場で、「4人の思い出が見たい」と言い出しますが、それはかつて4人で行った性行為のビデオ。その後、リズが無事発見されて大事もなく自宅に戻るのですが、ダニエルはなぜか疑心暗鬼になり…。
 
3話目「R.M.F.サンドウィッチを食べる」は、エミリー(エマ・ストーン)とアンドリュー(ジェシー・プレモンス)が死体安置所に行き、1人の女性アナウンサー(ハンター・シェイファー)の遺体にふれさせ、蘇らせる能力があるか確かめるものの失敗します。それは、彼らが信仰するカルト教団のリーダーであるオミ(ウィレム・デフォー)とアカ(ホン・チャウ)のため、教祖にふさわしい特殊能力をもった人物を探していたから。そして、教祖の資格を持つのは「双子の女性の片方で、もう1人が亡くなっていること」という過酷な条件が課せられていました。2人が該当人物を探す旅を続けていたある日、エミリーは夢に現れた双子こそが意中の人物だと確信するのですが…。

不可解で狂気じみた世界にある人間の本質

本作は、われわれが過ごす日常とはかけ離れた展開で、パラレルワールドに迷い込んだような感覚に見舞われます。
 
まったく関係がないと思われる3つのストーリーですが、どこかで関連し、通底する本質を持っています。同じ俳優を役柄違いで出演させる演出が、その効果にひとつ。自らの中にもある、人のもつ欲望や恐れ、弱さなどを突きつけられます。1話目は、主人公の盲目的な上司への服従によって得られる苦痛と安穏、2話目は、夫の妻への愛情と期待が突然失われた時に生じる狂気じみた執着、3話目は、不安定さを抱えた人々が何かにすがることで精神のバランスを保とうとする歪み、といったように。観た人を不可解な世界に迷い込ませて、そこに潜む深層心理を否応なく見せつける、サイコスリラーといえる作品です。

(C)2024 20th Century Studios. All Rights Reserved.

ランティモス監督が本作に込めた思いとは

場面写真3

(C)2024 20th Century Studios. All Rights Reserved.

ランティモス監督作品で多く採用されているのがモノクロ映像。本作でも一部に使用されており、撮影は「女王陛下のお気に入り」「哀れなるものたち」でもコンビを組んだロビー・ライアン、不穏さを強く演出するピアノと合唱を織り込んだ音楽はジャースキン・フェンドリックスがそれぞれ担当。映像と音楽により、異様な世界観をさらに増幅させています。
 
ランティモス監督は「映画を作るなら、観る人の価値観を揺るがすような、観る人によって反応が分かれるようなものを作りたい」と話しています。本作は突飛な描写も多く、論理で理解することはとても難しく思えますが、理屈ではなく、得られる感覚を共有しながら、そこから琴線にふれるものをつかみ取ることが、おすすめの楽しみ方です。支配と欲望、愛と期待、盲信など、誰しもが潜在的に持ち合わせている感情を、独特で残酷とも思える描写から、ぜひ突きつけられてください。

受賞・ノミネート情報

・第77回 カンヌ国際映画祭(2024年)
男優賞受賞(ジェシー・プレモンス)
 
 
作品情報
 
監督・脚本:ヨルゴス・ランティモス
撮影監督:ロビー・ライアン , BSC,ISC
音楽・ジャースキン・フェンドリックス
出演:エマ・ストーン ジェシー・プレモンス ウィレム・デフォー マーガレット・クアリーほか
製作:エレメント・ピクチャーズ
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
2024年/イギリス・アメリカ/166分/スコープサイズ/R15+

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奇想天外で接点のない3つの物語で構成されるストーリー

場面写真2

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本作はタイトルの通り、3つの独立した物語=章で構成され、それぞれの物語で、主要キャストが別のキャラクターを演じています。冒頭、「R.M.F.」という刺繍が入ったシャツを着た男が登場。ここから、その記号だけが共通する不思議な3つの物語が始まります。
 
1話目の「R.M.F.の死」は、ある夜、ロバート(ジェシー・プレモンス)の運転する車が、わざと別の車に追突するところから始まります。ロバートは病院に運ばれるものの軽傷でしたが、彼の行動や食生活、妻との性生活などすべてを把握する上司のレイモンド(ウィレム・デフォー)は、再び同じ車で、今度はもっと高速で追突することを命令します。これまで、それらに従ってきたロバートですが、恐怖のあまり断ると、妻のサラ(ホン・チャウ)が行方不明になってしまい…。
 
2話目「R.M.Fは飛ぶ」は、警察官のダニエル(ジェシー・プレモンス)と、海洋調査に出たまま行方不明になった妻リズ(エマ・ストーン)との話。精神的なダメージが大きいダニエルを案じた同僚のニーズ(ママドゥ・アティエ)と妻のマーサ(マーガレット・クアリー)は、彼を励まそうと自宅を訪ねてディナーを共にします。その場で、「4人の思い出が見たい」と言い出しますが、それはかつて4人で行った性行為のビデオ。その後、リズが無事発見されて大事もなく自宅に戻るのですが、ダニエルはなぜか疑心暗鬼になり…。
 
3話目「R.M.F.サンドウィッチを食べる」は、エミリー(エマ・ストーン)とアンドリュー(ジェシー・プレモンス)が死体安置所に行き、1人の女性アナウンサー(ハンター・シェイファー)の遺体にふれさせ、蘇らせる能力があるか確かめるものの失敗します。それは、彼らが信仰するカルト教団のリーダーであるオミ(ウィレム・デフォー)とアカ(ホン・チャウ)のため、教祖にふさわしい特殊能力をもった人物を探していたから。そして、教祖の資格を持つのは「双子の女性の片方で、もう1人が亡くなっていること」という過酷な条件が課せられていました。2人が該当人物を探す旅を続けていたある日、エミリーは夢に現れた双子こそが意中の人物だと確信するのですが…。

不可解で狂気じみた世界にある人間の本質


(C)2024 20th Century Studios. All Rights Reserved.

本作は、われわれが過ごす日常とはかけ離れた展開で、パラレルワールドに迷い込んだような感覚に見舞われます。
 
まったく関係がないと思われる3つのストーリーですが、どこかで関連し、通底する本質を持っています。同じ俳優を役柄違いで出演させる演出が、その効果にひとつ。自らの中にもある、人のもつ欲望や恐れ、弱さなどを突きつけられます。1話目は、主人公の盲目的な上司への服従によって得られる苦痛と安穏、2話目は、夫の妻への愛情と期待が突然失われた時に生じる狂気じみた執着、3話目は、不安定さを抱えた人々が何かにすがることで精神のバランスを保とうとする歪み、といったように。観た人を不可解な世界に迷い込ませて、そこに潜む深層心理を否応なく見せつける、サイコスリラーといえる作品です。

ランティモス監督が本作に込めた思いとは

場面写真3

(C)2024 20th Century Studios. All Rights Reserved.

ランティモス監督作品で多く採用されているのがモノクロ映像。本作でも一部に使用されており、撮影は「女王陛下のお気に入り」「哀れなるものたち」でもコンビを組んだロビー・ライアン、不穏さを強く演出するピアノと合唱を織り込んだ音楽はジャースキン・フェンドリックスがそれぞれ担当。映像と音楽により、異様な世界観をさらに増幅させています。
 
ランティモス監督は「映画を作るなら、観る人の価値観を揺るがすような、観る人によって反応が分かれるようなものを作りたい」と話しています。本作は突飛な描写も多く、論理で理解することはとても難しく思えますが、理屈ではなく、得られる感覚を共有しながら、そこから琴線にふれるものをつかみ取ることが、おすすめの楽しみ方です。支配と欲望、愛と期待、盲信など、誰しもが潜在的に持ち合わせている感情を、独特で残酷とも思える描写から、ぜひ突きつけられてください。

受賞・ノミネート情報


(C)2024 20th Century Studios. All Rights Reserved.

・第77回 カンヌ国際映画祭(2024年)
男優賞受賞(ジェシー・プレモンス)
 
 
作品情報
 
監督・脚本:ヨルゴス・ランティモス
撮影監督:ロビー・ライアン , BSC,ISC
音楽・ジャースキン・フェンドリックス
出演:エマ・ストーン ジェシー・プレモンス ウィレム・デフォー マーガレット・クアリーほか
製作:エレメント・ピクチャーズ
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
2024年/イギリス・アメリカ/166分/スコープサイズ/R15+

休日のスケジュールが決まっていない方、何を見ようか迷っている方など"ライトな映画ファン"に対して、映画館に出かけて、映画を楽しむことをおすすめします。SASARU movie編集部では、話題性の高い最新映画を中心にその情報や魅力を継続的に発信していきます。

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