2025.7.27

映画『宝島』の特別授業で高校生が妻夫木聡から受け取った命のバトン─当たり前じゃない今を生きるために

アメリカ統治下にあった1950年代の沖縄を舞台に、“戦果アギヤー”と呼ばれる若者たちの葛藤と希望を描いた映画『宝島』。直木賞受賞作・真藤順丈の小説を原作に、妻夫木聡さんと大友啓史監督がタッグを組んだ感動作です。

物語の中心は、米軍基地から物資を奪い住民に分け与える4人の若者。正義感の強いグスク(妻夫木聡)、教師を志すヤマコ(広瀬すず)、冷静なレイ(窪田正孝)、そしてカリスマ的リーダーのオン(永山瑛太)。ある襲撃の夜、オンが“予定外の戦果”を手にして姿を消したことで、彼らの運命は大きく揺らぎます。

刑事、教師、ヤクザへと別々の道を歩んだ3人は、20年後、オンが遺した謎と“本当の英雄とは何か”を追い、沖縄に眠る真実へと辿り着いていきます。

そんな重厚な物語と向き合う特別授業が、7月13日(日)、札幌・北海高等学校で開催されました。生徒たちは事前に映画を鑑賞し、命の重みと向き合いながら作品の核心に迫っていきました。
彼らが映画から受け取った「命のバトン」とは? 当日の様子をレポートします。

高校生の問いに、妻夫木聡と大友監督が熱く答える──映画『宝島』が映し出す“命”と“知らなかったこと”

特別授業ではグスク役の妻夫木聡さんと大友監督が生徒たちからの質問に答えながら、映画に託されたメッセージを語ってくれました。

―――撮影をしている中で、心に深く刻まれたことはありますか?

妻夫木:教科書で学んで考えるということはみなさんもあると思うけれど、僕自身がまだまだ沖縄について知らないことがある。沖縄に行ったとき、カフェにいたら突然戦闘機が何機も飛んできたんです。「これが沖縄だよ」と友人に言われて、ハッとしました。きれいな海や空の裏に、今も戦争の影がある。
沖縄にとって戦争は“終わっていない”と感じた瞬間でした。

その現実を知らずにいた自分にも気づいて、過去をきちんと知ることの大切さを改めて感じました。
―――作品づくりにおいて、観客にどんなメッセージを1番伝えたかったですか?

大友監督:僕たちも沖縄のことを本当には知りませんでした。特に、戦後のアメリカ統治下で人々がどう生きていたのか──この映画を通して、初めてその現実に向き合いました。

『宝島』では、登場人物たちの感情を追体験できるように作っています。彼らは特別な存在ではなく、僕たちと同じ人間です。観た人が自分ごととして感じて、「もし自分だったら」と考えるきっかけになってほしい。

“宝”とは何か──その問いを、この映画を通して自分の中で探してみてください。
―――グスクたちにとって、沖縄のどんなところが“宝”だったと思いますか?

妻夫木:グスクを演じて感じたのは、「命こそ宝(ぬちどぅたから)」という沖縄の言葉の重みです。撮影中は無我夢中でしたが、完成した作品を観て、命のつながりを強く実感しました。

以前は「死=終わり」だと思っていましたが、今は違います。亡くなった人の想いは、心の中で生き続けている。命は途切れるものではなく、受け継がれていくもの。だからこそ、僕たちが“今ここに生きていること”自体が、かけがえのない宝なんだと思います。
―――この映画を通じて、どんなことを感じましたか?

妻夫木:この映画、そして原作が持っていた圧倒的な熱量に、まず心を打たれました。そして強く感じたのは、「命は繋がっていくものなんだ」ということ。『宝島』は、まさに“命のバトン”の物語だと思います。

映画を観ている皆さんこそが、次のグスクなんです。沖縄の話ではあるけれど、これは日本全体の、そして皆さん一人ひとりの物語。観る中で、いつの間にかグスクの目線で世界を見ていたはずです。

この映画は、ただ「感動した」で終わる作品じゃない。観た人に“何か”を託している、映画という枠を超えた作品だと思います。そんな特別な映画に関われたことが、本当に嬉しく、光栄に思っています。

「映画がなければ出会えなかった」──最後の言葉に込めた想い

特別授業の最後には、映画を通じて登壇者の2人が熱いメッセージを伝えてくれました。

妻夫木:この映画がなければ、皆さんと出会うこともなかった。そう思うと、映画って本当に不思議なものだなと思います。生きていると、気づかないだけで身の回りに小さな幸せがたくさんある。そういう瞬間を見逃さず、大切にしてほしい。

高校時代は、何でも吸収できる特別な時間。今しかないこの瞬間を、全力で楽しんで生きてほしい。そんな思いを込めて、この映画をつくりました。今日、その想いが少しでも届いていたら嬉しいです。
大友監督:僕は岩手出身で、高校時代はケガで野球を諦めたことをきっかけに、地元の映画館に通うようになりました。暗闇の中で映画を観ることで、行ったことのない国や知らない世界を体験できたんです。それは、孤独だった自分にとって大きな救いであり、学びの場でもありました。

今回の『宝島』も、そうした“知らないことに触れる体験”を大切にしてほしいという思いでつくりました。沖縄と北海道では距離が離れているけれど、人の心は繋がっている。映画はそのことを教えてくれるものです。

観たあとは、ぜひ家族や友達と感じたことを話し合ってみてください。それが、自分の世界を広げていくきっかけになると思います。今日、皆さんに観てもらえたことに心から感謝しています。

生徒たちに繋がれた命のバトン。想いを受け継ぎ、伝える大切さを知る

今回の特別授業を通して、生徒たちからは「授業で沖縄の戦争について少し学んだ程度で、自分たちがどれだけ表面的なことしか知らなかったのか、思い知らされました。とても圧倒されました」などの声が寄せられました。戦争は遠い過去のことではないという現実にふれ、命の重みや、今ここに生きていることの意味を、あらためて見つめ直していました。

登場人物たちの葛藤や選択に自分を重ねながら、“知ることの責任”や“誰かの想いを受け継いで生きること”への意識が、彼らの中に確かに芽生えていたように感じます。映画によって繋がれた“命のバトン”が、より多くの人のもとへ届くこと、そして命の尊さや、当時を懸命に生きた若者たちの姿が、ひとりひとりの心に刻まれることを願っています。
そして、本作が物語る宝とは何なのか?ぜひ劇場でその答えを確かめてみてください。

映画『宝島』の基本情報

■劇場公開日:2025年9月19日(金)

■監督:大友啓史

■原作:真藤順丈『宝島』(講談社文庫)

■出演:妻夫木聡、広瀬すず、窪田正孝、永山瑛太
塚本晋也、中村蒼、瀧内公美、栄莉弥、尚玄
ピエール瀧、木幡竜、奥野瑛太、村田秀亮
デリック・ドーバー

■公式サイト:https://www.takarajima-movie.jp/

(C)真藤順丈/講談社 (C)2025「宝島」製作委員会

高校生の問いに、妻夫木聡と大友監督が熱く答える──映画『宝島』が映し出す“命”と“知らなかったこと”

特別授業ではグスク役の妻夫木聡さんと大友監督が生徒たちからの質問に答えながら、映画に託されたメッセージを語ってくれました。

―――撮影をしている中で、心に深く刻まれたことはありますか?

妻夫木:教科書で学んで考えるということはみなさんもあると思うけれど、僕自身がまだまだ沖縄について知らないことがある。沖縄に行ったとき、カフェにいたら突然戦闘機が何機も飛んできたんです。「これが沖縄だよ」と友人に言われて、ハッとしました。きれいな海や空の裏に、今も戦争の影がある。
沖縄にとって戦争は“終わっていない”と感じた瞬間でした。

その現実を知らずにいた自分にも気づいて、過去をきちんと知ることの大切さを改めて感じました。
―――作品づくりにおいて、観客にどんなメッセージを1番伝えたかったですか?

大友監督:僕たちも沖縄のことを本当には知りませんでした。特に、戦後のアメリカ統治下で人々がどう生きていたのか──この映画を通して、初めてその現実に向き合いました。

『宝島』では、登場人物たちの感情を追体験できるように作っています。彼らは特別な存在ではなく、僕たちと同じ人間です。観た人が自分ごととして感じて、「もし自分だったら」と考えるきっかけになってほしい。

“宝”とは何か──その問いを、この映画を通して自分の中で探してみてください。
―――グスクたちにとって、沖縄のどんなところが“宝”だったと思いますか?

妻夫木:グスクを演じて感じたのは、「命こそ宝(ぬちどぅたから)」という沖縄の言葉の重みです。撮影中は無我夢中でしたが、完成した作品を観て、命のつながりを強く実感しました。

以前は「死=終わり」だと思っていましたが、今は違います。亡くなった人の想いは、心の中で生き続けている。命は途切れるものではなく、受け継がれていくもの。だからこそ、僕たちが“今ここに生きていること”自体が、かけがえのない宝なんだと思います。
―――この映画を通じて、どんなことを感じましたか?

妻夫木:この映画、そして原作が持っていた圧倒的な熱量に、まず心を打たれました。そして強く感じたのは、「命は繋がっていくものなんだ」ということ。『宝島』は、まさに“命のバトン”の物語だと思います。

映画を観ている皆さんこそが、次のグスクなんです。沖縄の話ではあるけれど、これは日本全体の、そして皆さん一人ひとりの物語。観る中で、いつの間にかグスクの目線で世界を見ていたはずです。

この映画は、ただ「感動した」で終わる作品じゃない。観た人に“何か”を託している、映画という枠を超えた作品だと思います。そんな特別な映画に関われたことが、本当に嬉しく、光栄に思っています。

「映画がなければ出会えなかった」──最後の言葉に込めた想い

特別授業の最後には、映画を通じて登壇者の2人が熱いメッセージを伝えてくれました。

妻夫木:この映画がなければ、皆さんと出会うこともなかった。そう思うと、映画って本当に不思議なものだなと思います。生きていると、気づかないだけで身の回りに小さな幸せがたくさんある。そういう瞬間を見逃さず、大切にしてほしい。

高校時代は、何でも吸収できる特別な時間。今しかないこの瞬間を、全力で楽しんで生きてほしい。そんな思いを込めて、この映画をつくりました。今日、その想いが少しでも届いていたら嬉しいです。
大友監督:僕は岩手出身で、高校時代はケガで野球を諦めたことをきっかけに、地元の映画館に通うようになりました。暗闇の中で映画を観ることで、行ったことのない国や知らない世界を体験できたんです。それは、孤独だった自分にとって大きな救いであり、学びの場でもありました。

今回の『宝島』も、そうした“知らないことに触れる体験”を大切にしてほしいという思いでつくりました。沖縄と北海道では距離が離れているけれど、人の心は繋がっている。映画はそのことを教えてくれるものです。

観たあとは、ぜひ家族や友達と感じたことを話し合ってみてください。それが、自分の世界を広げていくきっかけになると思います。今日、皆さんに観てもらえたことに心から感謝しています。

生徒たちに繋がれた命のバトン。想いを受け継ぎ、伝える大切さを知る

今回の特別授業を通して、生徒たちからは「授業で沖縄の戦争について少し学んだ程度で、自分たちがどれだけ表面的なことしか知らなかったのか、思い知らされました。とても圧倒されました」などの声が寄せられました。戦争は遠い過去のことではないという現実にふれ、命の重みや、今ここに生きていることの意味を、あらためて見つめ直していました。

登場人物たちの葛藤や選択に自分を重ねながら、“知ることの責任”や“誰かの想いを受け継いで生きること”への意識が、彼らの中に確かに芽生えていたように感じます。映画によって繋がれた“命のバトン”が、より多くの人のもとへ届くこと、そして命の尊さや、当時を懸命に生きた若者たちの姿が、ひとりひとりの心に刻まれることを願っています。
そして、本作が物語る宝とは何なのか?ぜひ劇場でその答えを確かめてみてください。

映画『宝島』の基本情報


(C)真藤順丈/講談社 (C)2025「宝島」製作委員会

■劇場公開日:2025年9月19日(金)

■監督:大友啓史

■原作:真藤順丈『宝島』(講談社文庫)

■出演:妻夫木聡、広瀬すず、窪田正孝、永山瑛太
塚本晋也、中村蒼、瀧内公美、栄莉弥、尚玄
ピエール瀧、木幡竜、奥野瑛太、村田秀亮
デリック・ドーバー

■公式サイト:https://www.takarajima-movie.jp/

早川真澄

ライター・編集者

北海道の情報誌の編集者として勤務し映画や観光、人材など地域密着の幅広いジャンルの制作を手掛ける。現在は編集プロダクションを運営し雑誌、webなど媒体を問わず企画制作を行っています。

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