9月19日(金)に公開される映画『宝島』。主演の妻夫木聡さんを始め、広瀬すずさん、窪田正孝さん、永山瑛太さんら豪華キャストが共演する誰も描かなかった沖縄、誰も知らない空白の20年、戦争に翻弄された若者たちの姿を描くエンターテインメント作品です。実際に起きた事件を背景に進行する本作は、1952年から1970年にかけて、当時に限りなく近い沖縄を細部までこだわって再現したデモやクライマックスシーンも注目ポイント。全国宣伝キャラバンで北海道にいらした大友啓史監督と妻夫木聡さんに、柴田平美がインタビュー。もの凄い量のリサーチや歴史を学び、リアルな沖縄を再現したというこの映画にかける熱い思いを伺いました。

大友:基本的に、僕らは人間で“感情”の生き物です。知識などからのアプローチではなく、同じ人間としてこういう状況になったらどう思うだろう、僕だけじゃなくて、誰もがどう思うだろうという特別なことではない意識ですかね。そのことを常に忘れないことが、沖縄という舞台を考えるときにひとつ突破するヒントになった気がします。もちろん沖縄は、色々と特殊な事情があるわけですよね。それを強いてきたのは、私たち自身でもあるという意識をベースに僕は、“ドラマ”を撮りたいと思いました。何か歴史的な事象ではなくて、登場人物たちの感情の起伏を通して皆さんに伝えたい。迷ったらそこに戻ることを心がけて撮影していました。
―――妻夫木さんはいかがですか?
妻夫木:この映画は戦争映画ではないけれど、それは切り離せないことだと思います。改めて歴史を学ぶことはとても大切だと思って、1から勉強し直すところから始めましたが、最終的には「沖縄戦の図」という佐喜眞美術館にある絵を見たときに、涙して動けなくなってしまいました。ずっと沖縄のことを学んではいたけれど、どこかわかった気になってないかと絵に言われた気がして、戦争をすべて物語っている絵だから声がどんどん入ってきてしまって。感じるということを自分はどこか忘れていたなと思いました。この役を演じるにはそれ相応の覚悟を持たなくてはいけないし、沖縄の皆さんの思いを背負っていかないといけない。感じることを忘れてはダメだったとその時に思いました。あの経験がなかったら、僕自身、胸を張って「この映画を見てください」と言える自分がいなかったような気がしますし、僕の礎、核のようなものになっています。
大友:この物語の求心力になっているオンちゃんがいなくなった後、それぞれが個として対峙するシーン。最初はレイとヤマコ、その後、基地の中でのグスクとレイのシーン。今まで背中を見てきたオンちゃんがいなくなったことで、彼らがどういう感情を抱えてさまよってきたかという切なさみたいなものをぶつけ合うシーンだったので、撮っていてもしびれましたし、あとはラストの…言っちゃいけないのかな、どうなんだこれは。
妻夫木:ラストはダメじゃないですか(笑)。
大友:ラストのシーンですよ。あの、グスクが…言ってはいけませんね。伝えたい気持ちはありますが(笑)。やっぱりこの3つのシーンが僕の中では印象深いです。自分自身も撮りながら魂を揺さぶられました。沖縄の人たちが、もしかしたら本当にこういう感情を抱えながら生きてきたのではないかとリアルに感じさせてくれるような核となるシーンだと思うので観てほしいです。
妻夫木:それぞれで思うことはいっぱいあると思うので選ぶのは本当に難しいですが、代表してひとつ言うと、レイとグスクが基地の中でお互いの思いをぶつけ合うシーンが最後の方にあります。そのシーンを撮っているときに、いくら台本を読んでも自分の中で思い描けなかったものが、窪田くんを目の前にしたときにありました。グスクとレイを演じる僕たちは、当然一緒に生きてきた時間はないはずなのですが、2人の時間や歴史が走馬灯のように見えました。ぐっと込み上げるものがあって、どこでお互いこんなにすれ違ってしまったのだろうって。でも、向いている方向は一緒で、この国を守りたい、みんなを守りたいという思いだけなのになぜこんなに方向が違ってしまったのだろうと。監督もおっしゃいましたけど、切なさや、1番大好きだからこそ思う気持ちがあって。そんな2人の歴史がバーッと見えた時はやっぱり芝居、映画は生き物なんだなと思いましたね。


妻夫木:あまり発見というイメージで演じてなかったのかもしれません。でも、“信じる”ということは、映画を作る上でも、普通に人として生きる上でも1番大事なことだと思います。僕は、監督を信じて最後まで本当に心中する覚悟でしたし、今もなお、一緒に宣伝しながらこの『宝島』という僕らにとって子供みたいな存在が巣立っていくのをずっと見届けています。監督は導いてくれるんですよね。人を信じて、僕らだけじゃなくてエキストラひとりひとりの答えを導いてくれる監督としての度量の深さに、本当に驚かされましたし、その監督のOKをもらうために僕たちは生きているのだと今回思いました。
大友:映画が2回延期になっていますが、それでも最初から心中するというふうに妻夫木くんが言ってくれていて、僕もその言葉を信じて最後まで走れたところもあるし、今やほとんど週末婚状態ですから(笑)。毎週話す中で、こういうことをお互いに思っていたのだなと理解することもあります。おっしゃる通り、スタッフに対してもキャストに対しても、映画は本当に集団芸術なので、“信頼”がやっぱりキーになる。特異な芸術形態、想像の形態だなと思いますし、そこが1番面白いところなのだろうなと思いました。
妻夫木:ええ!めちゃくちゃ難しいですね。北海道は広いですし。食もそうだし、景色もそうだし…。初めて北海道旅行したときに、“美瑛”に感動しました。見渡す限り草原で、「ああ、こんなに綺麗な場所あるんだなぁ」と思いました。小樽とか美瑛とか、本当に素晴らしいですよね。心が洗われるというのはこういうことかと初めて思いました。それから何度も北海道には旅行で来ていますが、最近では特に“牡蠣”が好きなので、厚岸の方に友達と一緒に牡蠣を食べるツアーに行きました。
大友:僕も“牡蠣”と言おうと思っていたら取られました(笑)。魚全般おいしいですけどね。あとやっぱりラーメンも、東京にある札幌ラーメンとは違うものですよね。スープカレーも、この土地で食べるからおいしいのだろうなと思います。

ナルミのススメ。~『宝島』~

(C)真藤順丈/講談社 (C)2025「宝島」製作委員会
映画『宝島』作品情報
監督:大友啓史
原作:真藤順丈『宝島』(講談社文庫)
出演:妻夫木聡、広瀬すず、窪田正孝、永山瑛太
塚本晋也、中村蒼、瀧内公美、栄莉弥、尚玄
ピエール瀧、木幡竜、奥野瑛太、村田秀亮
デリック・ドーバー
公式サイト:https://www.takarajima-movie.jp/

(C)真藤順丈/講談社 (C)2025「宝島」製作委員会

大友:基本的に、僕らは人間で“感情”の生き物です。知識などからのアプローチではなく、同じ人間としてこういう状況になったらどう思うだろう、僕だけじゃなくて、誰もがどう思うだろうという特別なことではない意識ですかね。そのことを常に忘れないことが、沖縄という舞台を考えるときにひとつ突破するヒントになった気がします。もちろん沖縄は、色々と特殊な事情があるわけですよね。それを強いてきたのは、私たち自身でもあるという意識をベースに僕は、“ドラマ”を撮りたいと思いました。何か歴史的な事象ではなくて、登場人物たちの感情の起伏を通して皆さんに伝えたい。迷ったらそこに戻ることを心がけて撮影していました。
―――妻夫木さんはいかがですか?
妻夫木:この映画は戦争映画ではないけれど、それは切り離せないことだと思います。改めて歴史を学ぶことはとても大切だと思って、1から勉強し直すところから始めましたが、最終的には「沖縄戦の図」という佐喜眞美術館にある絵を見たときに、涙して動けなくなってしまいました。ずっと沖縄のことを学んではいたけれど、どこかわかった気になってないかと絵に言われた気がして、戦争をすべて物語っている絵だから声がどんどん入ってきてしまって。感じるということを自分はどこか忘れていたなと思いました。この役を演じるにはそれ相応の覚悟を持たなくてはいけないし、沖縄の皆さんの思いを背負っていかないといけない。感じることを忘れてはダメだったとその時に思いました。あの経験がなかったら、僕自身、胸を張って「この映画を見てください」と言える自分がいなかったような気がしますし、僕の礎、核のようなものになっています。

大友:この物語の求心力になっているオンちゃんがいなくなった後、それぞれが個として対峙するシーン。最初はレイとヤマコ、その後、基地の中でのグスクとレイのシーン。今まで背中を見てきたオンちゃんがいなくなったことで、彼らがどういう感情を抱えてさまよってきたかという切なさみたいなものをぶつけ合うシーンだったので、撮っていてもしびれましたし、あとはラストの…言っちゃいけないのかな、どうなんだこれは。
妻夫木:ラストはダメじゃないですか(笑)。
大友:ラストのシーンですよ。あの、グスクが…言ってはいけませんね。伝えたい気持ちはありますが(笑)。やっぱりこの3つのシーンが僕の中では印象深いです。自分自身も撮りながら魂を揺さぶられました。沖縄の人たちが、もしかしたら本当にこういう感情を抱えながら生きてきたのではないかとリアルに感じさせてくれるような核となるシーンだと思うので観てほしいです。
妻夫木:それぞれで思うことはいっぱいあると思うので選ぶのは本当に難しいですが、代表してひとつ言うと、レイとグスクが基地の中でお互いの思いをぶつけ合うシーンが最後の方にあります。そのシーンを撮っているときに、いくら台本を読んでも自分の中で思い描けなかったものが、窪田くんを目の前にしたときにありました。グスクとレイを演じる僕たちは、当然一緒に生きてきた時間はないはずなのですが、2人の時間や歴史が走馬灯のように見えました。ぐっと込み上げるものがあって、どこでお互いこんなにすれ違ってしまったのだろうって。でも、向いている方向は一緒で、この国を守りたい、みんなを守りたいという思いだけなのになぜこんなに方向が違ってしまったのだろうと。監督もおっしゃいましたけど、切なさや、1番大好きだからこそ思う気持ちがあって。そんな2人の歴史がバーッと見えた時はやっぱり芝居、映画は生き物なんだなと思いましたね。

妻夫木:あまり発見というイメージで演じてなかったのかもしれません。でも、“信じる”ということは、映画を作る上でも、普通に人として生きる上でも1番大事なことだと思います。僕は、監督を信じて最後まで本当に心中する覚悟でしたし、今もなお、一緒に宣伝しながらこの『宝島』という僕らにとって子供みたいな存在が巣立っていくのをずっと見届けています。監督は導いてくれるんですよね。人を信じて、僕らだけじゃなくてエキストラひとりひとりの答えを導いてくれる監督としての度量の深さに、本当に驚かされましたし、その監督のOKをもらうために僕たちは生きているのだと今回思いました。
大友:映画が2回延期になっていますが、それでも最初から心中するというふうに妻夫木くんが言ってくれていて、僕もその言葉を信じて最後まで走れたところもあるし、今やほとんど週末婚状態ですから(笑)。毎週話す中で、こういうことをお互いに思っていたのだなと理解することもあります。おっしゃる通り、スタッフに対してもキャストに対しても、映画は本当に集団芸術なので、“信頼”がやっぱりキーになる。特異な芸術形態、想像の形態だなと思いますし、そこが1番面白いところなのだろうなと思いました。

妻夫木:ええ!めちゃくちゃ難しいですね。北海道は広いですし。食もそうだし、景色もそうだし…。初めて北海道旅行したときに、“美瑛”に感動しました。見渡す限り草原で、「ああ、こんなに綺麗な場所あるんだなぁ」と思いました。小樽とか美瑛とか、本当に素晴らしいですよね。心が洗われるというのはこういうことかと初めて思いました。それから何度も北海道には旅行で来ていますが、最近では特に“牡蠣”が好きなので、厚岸の方に友達と一緒に牡蠣を食べるツアーに行きました。
大友:僕も“牡蠣”と言おうと思っていたら取られました(笑)。魚全般おいしいですけどね。あとやっぱりラーメンも、東京にある札幌ラーメンとは違うものですよね。スープカレーも、この土地で食べるからおいしいのだろうなと思います。
ナルミのススメ。~『宝島』~

(C)真藤順丈/講談社 (C)2025「宝島」製作委員会
映画『宝島』作品情報

(C)真藤順丈/講談社 (C)2025「宝島」製作委員会
監督:大友啓史
原作:真藤順丈『宝島』(講談社文庫)
出演:妻夫木聡、広瀬すず、窪田正孝、永山瑛太
塚本晋也、中村蒼、瀧内公美、栄莉弥、尚玄
ピエール瀧、木幡竜、奥野瑛太、村田秀亮
デリック・ドーバー
公式サイト:https://www.takarajima-movie.jp/
柴田平美
UHBアナウンサー
UHBアナウンサー。ねむろ観光大使。土曜の情報番組「いっとこ!」の映画コーナーを担当。私が初めて観た映画は『名探偵コナン 天国へのカウントダウン』(2001)。故郷・根室に映画館がなかったため、観たい映画があると隣町の釧路まで行って観ていました。映画館では、一番後ろの真ん中で、ひとりで観るのが好き。ジャンルは、ラブ・ファンタジー・アクションを中心に、話題作をチェックしています。皆さんの心に残る映画を見つけるきっかけとなれますように。