(C)2024映画『本心』製作委員会
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2024.10.23

急逝した母をAIで再現する。その心を知るためにー「本心」試写会レビュー

「マチネの終わりに」「ある男」を生み出した平野啓一郎原作の小説「本心」が、主演・池松壮亮と石井裕也監督のタッグにより映画化。急逝した母親をAI技術で再生した青年が、加速度的に進化していく時代に迷いながらも"本心"を探ろうとする様を映し出します。
公開に先駆けて試写会に参加したSASARU movie編集部が映画の見どころをレビューします。

「本心」の気になるストーリー


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工場に勤める青年・朔也(池松壮亮)は、仕事中に母・秋子(田中裕子)から電話で「帰ったら大切な話があるの」と告げられます。帰宅を急ぐさなか、豪雨で氾濫する川べりに母が立っているのを目撃。助けようと飛び込むも重傷を負い、1 年もの間昏睡状態に陥ってしまいます。目が覚めたときには母はすでに亡くなっており、その上母は生前に"自由死"を選択していたと聞かされ、激しく動揺する朔也。幸せそうに見えた母が、なぜ自ら死を望んでいたのか。そして大切な話とはなんだったのか…。どうしても母の本心を知りたい朔也は、生前のパーソナルデータをAIに集約させ、仮想空間上に"人間"を作る技術、ヴァーチャル・フィギュア(VF)を頼ることに。開発者の野崎(妻夫木聡)が告げた「本物以上のお母様を作れます」という言葉に一抹の不安を覚えつつも、VF制作に伴うデータ収集のため、母の同僚で親友だったという女性・三好(三吉彩花)に接触します。ほどなくして"母"は完成。朔也は、VFゴーグルを装着すればいつでも会える"母"、そして台風被害により一時的に同居することになった三好との共同生活をスタートさせます。しかし、VFは徐々に"知らない母の一面"をさらけ出していき…。
 

映画を紐解くために注目したいキーワード

小説では2040年代が舞台となっていましが、ここ数年の目覚ましい技術発達を受けて、映画においては2025年の近い将来として描かれます。
特に気になるキーワードは「自由死」「ヴァーチャル・フィギュア(VF)」「リアル・アバター」
「自由死」は、自分の死のタイミングを決められる制度です。作中では合法であるものの、寿命による自然死とは違う無条件の安楽死であり、"自死"とも捉えられます。税金が優遇されたり見舞金が出たりと、メリットがある反面、ただ弱者を切り捨てる制度だと朔也が憤るシーンも。

最先端のAI(人工知能)、AR(添加現実)の技術を組み合わせ、仮想空間上に外見だけでなく会話もできるよう"人間"を再現する「ヴァーチャル・フィギュア(VF)」。朔也が母の本心を知りたいがため、藁にもすがる思いで頼った技術です。これまでのライフログ、メールのやり取り、写真、動画、ネットの検索履歴などの情報をAIが集約し生成される"人間"は、初めから完璧というわけではありません。日々対話を重ね、学習を続けさせることでより"再現されたその人"に近づいていきます。その過程で朔也は母が隠していた衝撃の過去を知ることに…。

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「リアル・アバター」は、昏睡状態から目覚めた後、朔也が就いた仕事。カメラ付きゴーグルや360度カメラを装備し、依頼者のアバター(分身)として指示通りに行動します。いわば体を丸ごと貸し出す業務。依頼者はヘッドセットを身につけ遠隔でアバターに指示を出すことで、アバターの行動を自身のことのように体験できるのです。依頼者からの評価で契約続行か、打ち切りかが決まる残酷なシステムになっており、最期の願いを叶えたいがためリアル・アバターを使用する依頼者もいれば、おもしろ半分に理不尽な行動を指示し、悪意をぶつける依頼者も。
キーワードのどれもが現時点で議論されていたり、似たようなサービスが思い浮かぶものばかりです。VFとの対話で使用されるゴーグルは、今年6月に発売された現実世界と仮想世界が相互に影響しあう技術 ・MR(複合現実)デバイスを意識して作ったそう。携帯電話やスマートフォンがいつのまにか社会に浸透していたように、どれもが「近い将来提供されてもおかしくないな」と感じさせるほどリアル。この映画は今生きている世界と地続きなのだと感じさせます。

9度目のタッグ!池松壮亮×石井裕也によるヒューマンミステリー

ミステリーの手法を取りつつ、"人の心とは何か"を核に、死の自己決定や加速するテクノロジー、格差社会といったテーマが複雑に折重なる本作は、主演の池松壮亮が『これを映画化すべき』と石井裕也監督に勧めたそう。二人がタッグを組むのは「ぼくたちの家族 (2014年)」から数えて9作目。どちらも"母親"が題材の作品で、今作はリアルとヴァーチャルの境界が曖昧になった世界での母と子の心を主軸に描かれています。
池松壮亮が演じる主人公の朔也は、たった1人の肉親である母親を亡くした上に1年近くも眠っていたことで、技術革新が進んだ時代に突然放り出されてしまいます。仕事はロボットに奪われ、知らない技術に新しい職業、出会う人々やAIの母に翻弄され続ける朔也。迷子のようになりながらも、母の本心を知りたい一心で懸命に日々を生きる様を、あえて地に足のつかない不安定な演技で見事に表現しています。
 

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朔也の母・秋子を演じる田中裕子は、生身とVFの2役に挑戦。口調や表情の微妙な違いでそれぞれを演じ分けます。そして秋子の親友であり、過去の傷を抱えるミステリアスな女性・三好を三吉彩花が好演。さらに朔也の幼馴染である岸谷を水上恒司、最新AIを駆使したVFの開発を行う技術者の野崎将人に妻夫木聡、ある出来事をきっかけに朔也に興味を抱くアバターデザイナ ーのイフィー役に仲野太賀、VF の中尾役に綾野剛、朔也にある依頼をする若松役を田中泯が演じ、立場の違う人物たちが朔也の心を大きく揺さぶります。

進化し続ける世界における人間の心と本質

技術革新によりどんどん便利になっていく生活。しかし、その心が豊かになったのかを、本作では真摯に問いかけます。どれだけ技術が発達したとしても、完全には理解できない人の心の本質。淡々と進むストーリーの中では、主に朔也の母の本心についてピックアップされているものの、登場人物たちの心の動きも様々な形で作中に散りばめられています。
『AI やテクノロジーに対して少しでも不安に思っている方々に捧げる 』と述べる石井監督。朔也と母・秋子によるじわりと胸を締めつけるラストシーンで、これから到来するであろう未来に想いを馳せてみてくださいね。

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映画「本心」の基本情報


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・公開日:2024年11月8日(金)
・出演:池松壮亮
 三吉彩花、水上恒司、仲野太賀 / 田中 泯 綾野 剛 / 妻夫木 聡、田中裕子
・原作:平野啓一郎「本心」(文春文庫 / コルク)
・監督・脚本:石井裕也
・音楽:Inyoung Park 河野丈洋
・公式サイト:https://happinet-phantom.com/honshin/

「本心」の気になるストーリー


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工場に勤める青年・朔也(池松壮亮)は、仕事中に母・秋子(田中裕子)から電話で「帰ったら大切な話があるの」と告げられます。帰宅を急ぐさなか、豪雨で氾濫する川べりに母が立っているのを目撃。助けようと飛び込むも重傷を負い、1 年もの間昏睡状態に陥ってしまいます。目が覚めたときには母はすでに亡くなっており、その上母は生前に"自由死"を選択していたと聞かされ、激しく動揺する朔也。幸せそうに見えた母が、なぜ自ら死を望んでいたのか。そして大切な話とはなんだったのか…。どうしても母の本心を知りたい朔也は、生前のパーソナルデータをAIに集約させ、仮想空間上に"人間"を作る技術、ヴァーチャル・フィギュア(VF)を頼ることに。開発者の野崎(妻夫木聡)が告げた「本物以上のお母様を作れます」という言葉に一抹の不安を覚えつつも、VF制作に伴うデータ収集のため、母の同僚で親友だったという女性・三好(三吉彩花)に接触します。ほどなくして"母"は完成。朔也は、VFゴーグルを装着すればいつでも会える"母"、そして台風被害により一時的に同居することになった三好との共同生活をスタートさせます。しかし、VFは徐々に"知らない母の一面"をさらけ出していき…。
 

映画を紐解くために注目したいキーワード


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小説では2040年代が舞台となっていましが、ここ数年の目覚ましい技術発達を受けて、映画においては2025年の近い将来として描かれます。
特に気になるキーワードは「自由死」「ヴァーチャル・フィギュア(VF)」「リアル・アバター」
「自由死」は、自分の死のタイミングを決められる制度です。作中では合法であるものの、寿命による自然死とは違う無条件の安楽死であり、"自死"とも捉えられます。税金が優遇されたり見舞金が出たりと、メリットがある反面、ただ弱者を切り捨てる制度だと朔也が憤るシーンも。

最先端のAI(人工知能)、AR(添加現実)の技術を組み合わせ、仮想空間上に外見だけでなく会話もできるよう"人間"を再現する「ヴァーチャル・フィギュア(VF)」。朔也が母の本心を知りたいがため、藁にもすがる思いで頼った技術です。これまでのライフログ、メールのやり取り、写真、動画、ネットの検索履歴などの情報をAIが集約し生成される"人間"は、初めから完璧というわけではありません。日々対話を重ね、学習を続けさせることでより"再現されたその人"に近づいていきます。その過程で朔也は母が隠していた衝撃の過去を知ることに…。

(C)2024映画『本心』製作委員会

「リアル・アバター」は、昏睡状態から目覚めた後、朔也が就いた仕事。カメラ付きゴーグルや360度カメラを装備し、依頼者のアバター(分身)として指示通りに行動します。いわば体を丸ごと貸し出す業務。依頼者はヘッドセットを身につけ遠隔でアバターに指示を出すことで、アバターの行動を自身のことのように体験できるのです。依頼者からの評価で契約続行か、打ち切りかが決まる残酷なシステムになっており、最期の願いを叶えたいがためリアル・アバターを使用する依頼者もいれば、おもしろ半分に理不尽な行動を指示し、悪意をぶつける依頼者も。
キーワードのどれもが現時点で議論されていたり、似たようなサービスが思い浮かぶものばかりです。VFとの対話で使用されるゴーグルは、今年6月に発売された現実世界と仮想世界が相互に影響しあう技術 ・MR(複合現実)デバイスを意識して作ったそう。携帯電話やスマートフォンがいつのまにか社会に浸透していたように、どれもが「近い将来提供されてもおかしくないな」と感じさせるほどリアル。この映画は今生きている世界と地続きなのだと感じさせます。

9度目のタッグ!池松壮亮×石井裕也によるヒューマンミステリー


(C)2024映画『本心』製作委員会

ミステリーの手法を取りつつ、"人の心とは何か"を核に、死の自己決定や加速するテクノロジー、格差社会といったテーマが複雑に折重なる本作は、主演の池松壮亮が『これを映画化すべき』と石井裕也監督に勧めたそう。二人がタッグを組むのは「ぼくたちの家族 (2014年)」から数えて9作目。どちらも"母親"が題材の作品で、今作はリアルとヴァーチャルの境界が曖昧になった世界での母と子の心を主軸に描かれています。
池松壮亮が演じる主人公の朔也は、たった1人の肉親である母親を亡くした上に1年近くも眠っていたことで、技術革新が進んだ時代に突然放り出されてしまいます。仕事はロボットに奪われ、知らない技術に新しい職業、出会う人々やAIの母に翻弄され続ける朔也。迷子のようになりながらも、母の本心を知りたい一心で懸命に日々を生きる様を、あえて地に足のつかない不安定な演技で見事に表現しています。
 

(C)2024映画『本心』製作委員会

朔也の母・秋子を演じる田中裕子は、生身とVFの2役に挑戦。口調や表情の微妙な違いでそれぞれを演じ分けます。そして秋子の親友であり、過去の傷を抱えるミステリアスな女性・三好を三吉彩花が好演。さらに朔也の幼馴染である岸谷を水上恒司、最新AIを駆使したVFの開発を行う技術者の野崎将人に妻夫木聡、ある出来事をきっかけに朔也に興味を抱くアバターデザイナ ーのイフィー役に仲野太賀、VF の中尾役に綾野剛、朔也にある依頼をする若松役を田中泯が演じ、立場の違う人物たちが朔也の心を大きく揺さぶります。

進化し続ける世界における人間の心と本質


(C)2024映画『本心』製作委員会

技術革新によりどんどん便利になっていく生活。しかし、その心が豊かになったのかを、本作では真摯に問いかけます。どれだけ技術が発達したとしても、完全には理解できない人の心の本質。淡々と進むストーリーの中では、主に朔也の母の本心についてピックアップされているものの、登場人物たちの心の動きも様々な形で作中に散りばめられています。
『AI やテクノロジーに対して少しでも不安に思っている方々に捧げる 』と述べる石井監督。朔也と母・秋子によるじわりと胸を締めつけるラストシーンで、これから到来するであろう未来に想いを馳せてみてくださいね。

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・公開日:2024年11月8日(金)
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・原作:平野啓一郎「本心」(文春文庫 / コルク)
・監督・脚本:石井裕也
・音楽:Inyoung Park 河野丈洋
・公式サイト:https://happinet-phantom.com/honshin/

休日のスケジュールが決まっていない方、何を見ようか迷っている方など"ライトな映画ファン"に対して、映画館に出かけて、映画を楽しむことをおすすめします。SASARU movie編集部では、話題性の高い最新映画を中心にその情報や魅力を継続的に発信していきます。

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