急逝した母にもう一度会って話を聞くために、VF(バーシャルフィギュア)でよみがえらせる物語が原作の映画。AIと共存する世界を生きることについて考えさせられるこの作品の立ち上げから携わり、今やる意義を強く感じたという主演の池松壮亮さん、三吉彩花さんに、UHBアナウンサーの柴田平美がインタビュー。
池松壮亮さん・三吉彩花さんインタビュー
池松:原作が魅力的なトピックが多いので、2時間の映画にするために原作からだいぶ映画的な改編がされています。原作の心髄を借りながら、何か原作の読後感と同じような映画として新しく生まれ変わらせるということをずっと目指していました。脚本を作っている最中から見ていたので、読んだときにこれはいけるんじゃないか、素晴らしい設計図が出来上がったと非常に撮影が楽しみになりました。
―――三吉さんはどのように感じましたか?
三吉:今回、“三好彩花(みよしあやか)”という役どころだったので、そういう部分も含めて運命というかご縁を感じていました。ちょうど去年の夏頃に撮っていたのですが、その前に私が、自分の“本心”や、何が楽しくて何が辛いんだっけ…ということを自分の中で悶々と考えていた時期でもありました。その点がすごく役柄とマッチ して、一緒に自分自身の“本心”を探求していく感覚で、グっと入りやすい脚本だったと思います。
―――“三好彩花”という役名が、三吉さんご本人の名前と読みが一緒だったので、どういう気持ちなのだろうと思っていました。
三吉:本当にすごくご縁を感じました。作品が終わって、試写会の時に原作を書いた平野啓一郎さんにお会いして、あの役名はどういうことだったんでしょうか?と話を伺ったんですけど、本当に偶然だったようで!すごく驚きました。
池松:大きなメッセージというより、もう少し普遍的な、簡単に言うと“未来の迷子エンタメ”。そう遠くないこれから生きる時代で彷徨っている青年が、いかにして生きることを選ぶか、何を求めてそれぞれがどう生きているか。ちょっと先の未来の人のお話を観ていただいて、同時代の人たちとこれからのことを共有できたらなというふうに思っています。
―――池松さんは、この物語を見た時に「これは映画にするべきだ」と話していたことを聞きました。どのような思いからそういう風に感じたのですか?
池松:2020年の夏に(原作に)出会ったのですけど、あの頃やっぱりコロナで人と対面でない状況の中、あまりにも先見の明がある原作に出会って、ものすごいインパクトを受けました。なぜ、コロナがまだ終わってないのにアフターコロナのことがこれだけ書かれているのだろうと。非常に映像的なお話でもあったので、これは急いでなんとか映像的な具現化ができないかなというふうに思いました。
―――三吉さんはこの映画からどういうメッセージを感じましたか?
三吉:この作品は誰しもが自分に当てはまるというか、自分に置き換えて考えられる題材でもあると思いますし、私自身も“三好”という役を演じながら自分の“本心”を感じたのと同じように、すごく自分の中で考えたり感じたりできる作品だと思います。AIの技術などが私たちのところに迫ってきている中で、ここだけはアナログを守らなければいけないとか、何を大事にしなければいけないということを考えて、今後どうやって生きていくのかということに気付かせてくれる作品なのかなと感じます。
三吉:今まで、映像の作品で関わった中でも、本当に体力的にも精神的にも結構ぎりぎりな感じでした(笑)。でも、それはネガティブな意味ではなくて、自分の女優というキャリアにおいても、自分自身にとっても必要なことだったと思います。三好という役を追求することも簡単なことではないと思いつつ、それと同時に、自分の本心も探求していく“2本の軸”でずっと現場にいたので、そういう意味ではしんどかったのですが、タイミングとして必要な役だったと感じています。
―――成長に繋がったということですね。この映画の中には、VF(バーチャル フィギュア)が出てくると思います。実際にVFで何か作ることができるとしたら、池松さんは何か作りたいと思いますか?
池松:何かいい付き合い方が出来ればいいですけどね。やっぱり僕はまだ恐怖しか感じていないのですが、きっとVFって、子供をカメラで写真におさめるとか記録をするというところの延長にあると思うんですよ。でも、バーチャルだとしても、その先のことを考えると、人間を創り出すというある一線を超えてしまう事、死の克服においては神の領域だったものに対してテクノロジーが追いついてしまうことへの恐怖は、今作でかなり体感しましたね。実際、VFの母と再会して、嬉しいけれどあまりにも複雑な心境でした。でも、もう韓国でも中国でもサービスとして実際に始まっているので、そう遠くない未来なのかなと思ってはいますけど、この役を経験してこういうのを作りたいということは今はないですね。
―――すごく考えさせられますよね。
池松:ただ、自分がすごくおじいちゃん子だったので、15歳の時に亡くなってからもいまだに脳内で会話をしていますし、これまでに何度も脳内で再会していて。死者との対面というのは、昔からあるみんなが持っている欲求だと思うんですよね。それを実際やるかやらないか、やりたい気持ちは正直あるけど怖いというふうに思っています。
池松:もう、大好きです。ご飯が美味しい、景色が綺麗!冬に行きましたが、本当に雪景色が美しくて、どこに行っても最高でした。
―――三吉さんはいかがですか?
三吉:北海道は、最近あまり行けていないのです、何回かプライベートでもお仕事でも行っています。とにかくずっと食べていますね、ずっーと。ジンギスカンやら海鮮やら…本当にAIで自分の胃袋を作りたいくらい(笑)。胃袋だけパっと入れ替えて。それだったらしてみたいかも。
池松:それだったらいいのかな…ま、いいか(笑)!
三吉:食べ続けたいので。
池松:そんなことも簡単にもうできる日が来るかもしれないですよね。
ナルミのススメ。~『本心』~
『本心』作品情報
出演:池松壮亮
三吉彩花、水上恒司、仲野太賀 / 田中 泯 綾野 剛 / 妻夫木 聡、田中裕子
原作:平野啓一郎「本心」(文春文庫 / コルク)
監督・脚本:石井裕也
音楽:Inyoung Park 河野丈洋
公式サイト:https://happinet-phantom.com/honshin/
池松壮亮さん・三吉彩花さんインタビュー
池松:原作が魅力的なトピックが多いので、2時間の映画にするために原作からだいぶ映画的な改編がされています。原作の心髄を借りながら、何か原作の読後感と同じような映画として新しく生まれ変わらせるということをずっと目指していました。脚本を作っている最中から見ていたので、読んだときにこれはいけるんじゃないか、素晴らしい設計図が出来上がったと非常に撮影が楽しみになりました。
―――三吉さんはどのように感じましたか?
三吉:今回、“三好彩花(みよしあやか)”という役どころだったので、そういう部分も含めて運命というかご縁を感じていました。ちょうど去年の夏頃に撮っていたのですが、その前に私が、自分の“本心”や、何が楽しくて何が辛いんだっけ…ということを自分の中で悶々と考えていた時期でもありました。その点がすごく役柄とマッチ して、一緒に自分自身の“本心”を探求していく感覚で、グっと入りやすい脚本だったと思います。
―――“三好彩花”という役名が、三吉さんご本人の名前と読みが一緒だったので、どういう気持ちなのだろうと思っていました。
三吉:本当にすごくご縁を感じました。作品が終わって、試写会の時に原作を書いた平野啓一郎さんにお会いして、あの役名はどういうことだったんでしょうか?と話を伺ったんですけど、本当に偶然だったようで!すごく驚きました。
(C)2024映画『本心』製作委員会
池松:大きなメッセージというより、もう少し普遍的な、簡単に言うと“未来の迷子エンタメ”。そう遠くないこれから生きる時代で彷徨っている青年が、いかにして生きることを選ぶか、何を求めてそれぞれがどう生きているか。ちょっと先の未来の人のお話を観ていただいて、同時代の人たちとこれからのことを共有できたらなというふうに思っています。
―――池松さんは、この物語を見た時に「これは映画にするべきだ」と話していたことを聞きました。どのような思いからそういう風に感じたのですか?
池松:2020年の夏に(原作に)出会ったのですけど、あの頃やっぱりコロナで人と対面でない状況の中、あまりにも先見の明がある原作に出会って、ものすごいインパクトを受けました。なぜ、コロナがまだ終わってないのにアフターコロナのことがこれだけ書かれているのだろうと。非常に映像的なお話でもあったので、これは急いでなんとか映像的な具現化ができないかなというふうに思いました。
―――三吉さんはこの映画からどういうメッセージを感じましたか?
三吉:この作品は誰しもが自分に当てはまるというか、自分に置き換えて考えられる題材でもあると思いますし、私自身も“三好”という役を演じながら自分の“本心”を感じたのと同じように、すごく自分の中で考えたり感じたりできる作品だと思います。AIの技術などが私たちのところに迫ってきている中で、ここだけはアナログを守らなければいけないとか、何を大事にしなければいけないということを考えて、今後どうやって生きていくのかということに気付かせてくれる作品なのかなと感じます。
(C)2024映画『本心』製作委員会
三吉:今まで、映像の作品で関わった中でも、本当に体力的にも精神的にも結構ぎりぎりな感じでした(笑)。でも、それはネガティブな意味ではなくて、自分の女優というキャリアにおいても、自分自身にとっても必要なことだったと思います。三好という役を追求することも簡単なことではないと思いつつ、それと同時に、自分の本心も探求していく“2本の軸”でずっと現場にいたので、そういう意味ではしんどかったのですが、タイミングとして必要な役だったと感じています。
―――成長に繋がったということですね。この映画の中には、VF(バーチャル フィギュア)が出てくると思います。実際にVFで何か作ることができるとしたら、池松さんは何か作りたいと思いますか?
池松:何かいい付き合い方が出来ればいいですけどね。やっぱり僕はまだ恐怖しか感じていないのですが、きっとVFって、子供をカメラで写真におさめるとか記録をするというところの延長にあると思うんですよ。でも、バーチャルだとしても、その先のことを考えると、人間を創り出すというある一線を超えてしまう事、死の克服においては神の領域だったものに対してテクノロジーが追いついてしまうことへの恐怖は、今作でかなり体感しましたね。実際、VFの母と再会して、嬉しいけれどあまりにも複雑な心境でした。でも、もう韓国でも中国でもサービスとして実際に始まっているので、そう遠くない未来なのかなと思ってはいますけど、この役を経験してこういうのを作りたいということは今はないですね。
―――すごく考えさせられますよね。
池松:ただ、自分がすごくおじいちゃん子だったので、15歳の時に亡くなってからもいまだに脳内で会話をしていますし、これまでに何度も脳内で再会していて。死者との対面というのは、昔からあるみんなが持っている欲求だと思うんですよね。それを実際やるかやらないか、やりたい気持ちは正直あるけど怖いというふうに思っています。
(C)2024映画『本心』製作委員会
池松:もう、大好きです。ご飯が美味しい、景色が綺麗!冬に行きましたが、本当に雪景色が美しくて、どこに行っても最高でした。
―――三吉さんはいかがですか?
三吉:北海道は、最近あまり行けていないのです、何回かプライベートでもお仕事でも行っています。とにかくずっと食べていますね、ずっーと。ジンギスカンやら海鮮やら…本当にAIで自分の胃袋を作りたいくらい(笑)。胃袋だけパっと入れ替えて。それだったらしてみたいかも。
池松:それだったらいいのかな…ま、いいか(笑)!
三吉:食べ続けたいので。
池松:そんなことも簡単にもうできる日が来るかもしれないですよね。
ナルミのススメ。~『本心』~
『本心』作品情報
(C)2024映画『本心』製作委員会
出演:池松壮亮
三吉彩花、水上恒司、仲野太賀 / 田中 泯 綾野 剛 / 妻夫木 聡、田中裕子
原作:平野啓一郎「本心」(文春文庫 / コルク)
監督・脚本:石井裕也
音楽:Inyoung Park 河野丈洋
公式サイト:https://happinet-phantom.com/honshin/
柴田平美
UHBアナウンサー
UHBアナウンサー。ねむろ観光大使。土曜の情報番組「いっとこ!」の映画コーナーを担当。私が初めて観た映画は『名探偵コナン 天国へのカウントダウン』(2001)。地元・根室に映画館がなかったため、観たい映画があると隣町の釧路まで行って観ていました。映画館では、一番後ろの真ん中で、ひとりで観るのが好き。ジャンルは、ラブ・ファンタジー・アクションを中心に、話題作をチェックしています。皆さんの心に残る映画を見つけるきっかけとなれますように。