2024.11.27

小樽が舞台の映画『海の沈黙』主演の本木雅弘さん・小泉今日子さんインタビュー

倉本聰さんが36年ぶりに執筆した映画作品『海の沈黙』。――本当の美とは何なのか。現代に生きる我々にその本質を届けてくれるような、寂しくも燃えるような情熱を感じる物語。孤高の天才画家・津山竜次役の本木雅弘さんと、竜次のかつての恋人・田村安奈役の小泉今日子さんにUHBアナウンサーの柴田平美がインタビュー。倉本さんからオファーが来た時の思いやロケ地だった小樽でのエピソードを伺いました。
 

本木雅弘さん・小泉今日子さんインタビュー

―――『北の国から』の倉本聰さん脚本、『Fukushima 50』の若松節朗監督の最新作。今作のオファーはどのように受けたのか教えていただけますか。
 
本木:
倉本さんとの仕事は初めてで、それまで自分はご縁がないだろうというふうに思っていました。倉本さんがある新聞で自分の今までの生い立ちから仕事の仕方までインタビューを受けていらっしゃった記事がありました。その中で、私が久世光彦さん演出で、狂気の作家役を演じた作品の印象が残っていて、いつかオファーするかもしれないというお話をされていました。そして今回、本当にオファーが来たと驚いたのですが、とにかくお受けしました。お会いしたことがなかったので、演じる前に一度電話でもいいから、倉本さんから何かアドバイスが欲しいと思い、電話をしました。1番気になっていたのは、“倉本さんの作品は、脚本上のセリフを一字一句、語尾に至るまで変えてはいけない”という定説で、「そういうことでよろしいでしょうか?」と電話でお話した時に、「そんなことないですよ、あれは噂が1人歩きしているだけで、そのキャラクターの心情に沿っていれば多少変えることはオッケーですよ。」ということで1つだけハードルが低くなり安心しましたね。
 
―――小泉さんはどのようなオファーを受けたのでしょうか?
 
小泉:
竜次役は本木さんにやってもらおうっていうことが決まっていて、その後、私の方にお話が来ました。倉本さんとは以前もご一緒するチャンスがあったのですが、こちらの都合で出演することができなかったという心残りがあったため、いつかそれを解消したいと思っていたこと、脚本がとても素敵だったこともあり、これを本木さんがやるならとても素敵になるだろうなと感じてお受けしました。
 
 
―――今作は、小樽でのロケがあったと思いますが、印象に残っている出来事などがあれば教えていただけますか。
 
本木:
とてもプライベートな話ですが、ロケ場所の1つとなった、本作で登場する「マロース」というバーは、「小樽ゴールドストーン」という小樽の老舗のライブハウスで、歌手をやっていた時代に音響でお世話になった方が運営されているお店でした。しかも、その「ゴールドストーン」に“漁の網の風景”を描いた日本画が飾られていて、その絵を描いた方が、私が結婚したときに、仲人をしていただいた方の息子さんの奥さんのお父様という。色々な縁が堀り起こされて、ここまで連れて来られたのだなと感じましたね。

(C)2024 映画『海の沈黙』INUP CO.,LTD


(C)2024 映画『海の沈黙』INUP CO.,LTD

―――小泉さんはいかがですか?
 
小泉:
私は、小樽に1日だけ撮影で来たことがあります。これまでは1日だけだったのですが、今回の撮影では数日滞在できました。自分の撮影がない時もあったので、レンタカーを借りてプラプラといろんなところに行きました。
本木:一度、小泉さんの運転でごはんを食べに行きました。
小泉:地方ロケとかに来たら、割と空き時間にレンタカーを借りて、ぐるぐる回るのが好きで。
 
―――レンタカーで小樽を周る中で、気に入った景色や食べ物はありましたか?
 
小泉:
ちょっと外れに自然食の小さなお店があって、何となく調べてそこに行ったら、「(本木さんが)映画の撮影だって来ていたけど…」という話になって(笑)。
本木:そうなんです。映画のために、ある時期まで減量をしていたので、ナチュラル志向の食事を探していました。意外とそういうマニアックなお店も見つけましたね。
小泉:すごくかわいい小さなお店があって、私も健康に気をつけたいと思い探して行ったら、東京から映画を撮影している方がこの間も来たわねって話していました(笑)。
本木:別々で同じ店に行っていましたよね(笑)。
―――お二人は92年のドラマ「あなただけ見えない」以来32年ぶりの共演ということですが、今お二人がお話されているところを見ていて、息がぴったりのように感じられます。
 
小泉:
幼なじみに近いですよね。15、6歳から歌手として頑張っていた時代も知っているし、そこからそれぞれの選択をして、歩み始めた時もそうでした。横を見るとずっと本木さんがいて、「大丈夫、私の位置大丈夫。」と確認しながら。
本木:私は、「小泉さんすごく飛ばしている」みたいな。(笑)
小泉:そんなふうにずっと人生のほとんどを横目で見ているみたいなね。
本木:42年ですから。もう親戚感があるんですよね。
 
 
―――お二人が対峙するシーンもありましたが、一緒に何か話し合ってコミュニケーションをとって臨まれたのですか?
 
本木:
今まで話してきたようなリアルな関係性っていうのが、うまく交錯したと思います。80年代、当時自分たちがアイドルをやっていた頃は、無邪気に若さを放出していたというのがありますけれども、キャリアを経て、こういう形のこういう役で向き合うというのは、それぞれにそれなりの老いもさらしつつ。小泉さんと向き合えたというのは、役を通しての色々な交錯する想いだけではない深さで、何となく通じ合ったり探り合ったりできたなと思います。
小泉:本木さんが若い時と私の若い時、お互いにその時のエネルギーを知っているから、“竜次”という役の若い頃のエネルギーを想像しやすかったですね。

(C)2024 映画『海の沈黙』INUP CO.,LTD

ナルミのススメ。~『海の沈黙』~

今回、本木さんと小泉さんにインタビューした際、お二人の柔らかく温かい空気感が印象的で、10代の頃から共に歩んできた関係性が垣間見えてとても素敵だなと思いながら話を聞いていました。この関係性があるからこそ、たくさんセリフがあるわけではない二人のシーンの余白部分には、一朝一夕では伝わってこない濃密さを感じとることが出来るのかなと。倉本聰さんが、どうしても書いておきたかったという渾身の作品は「この絵は贋作だ!」というインパクトの強い一言から物語が始まります。芸術家ならではの思いが見え隠れし、様々な角度から“芸術に対する思い”が描かれていて、“美とは何か?”という問いに対する、映画から感じる解に頷けた気がします。また、映画の中で、本木さん演じる竜次が描く絵が本当に素晴らしいのですが、岩手県二戸市の洋画家である高田啓介さんの作品だそう。力強く、熱量を感じる鮮やかな作品たちも本作の見どころです。本木さん、小泉さんをはじめ、中井貴一さんや俳優の皆さんからあふれ出る荘厳なオーラ。作品にずっしりとした重さと厚みをもたらす日本を代表するキャストの方々が集まっていて、見ごたえ抜群の作品です。

『海の沈黙』作品情報

公開日:11月22日(金)
 
原作・脚本:倉本 聰
 
監督:若松節朗
 
出演:本木雅弘
小泉今日子 清水美砂 仲村トオル 菅野 恵 / 石坂浩二
萩原聖人 村田雄浩 佐野史郎 田中 健 三船美佳 津嘉山正種
中井貴一
 
絵画協力:高田啓介
 
配給:ハピネットファントム・スタジオ
 
公式 HP: https://happinet-phantom.com/uminochinmoku/

(C)2024 映画『海の沈黙』INUP CO.,LTD

本木雅弘さん・小泉今日子さんインタビュー

―――『北の国から』の倉本聰さん脚本、『Fukushima 50』の若松節朗監督の最新作。今作のオファーはどのように受けたのか教えていただけますか。
 
本木:
倉本さんとの仕事は初めてで、それまで自分はご縁がないだろうというふうに思っていました。倉本さんがある新聞で自分の今までの生い立ちから仕事の仕方までインタビューを受けていらっしゃった記事がありました。その中で、私が久世光彦さん演出で、狂気の作家役を演じた作品の印象が残っていて、いつかオファーするかもしれないというお話をされていました。そして今回、本当にオファーが来たと驚いたのですが、とにかくお受けしました。お会いしたことがなかったので、演じる前に一度電話でもいいから、倉本さんから何かアドバイスが欲しいと思い、電話をしました。1番気になっていたのは、“倉本さんの作品は、脚本上のセリフを一字一句、語尾に至るまで変えてはいけない”という定説で、「そういうことでよろしいでしょうか?」と電話でお話した時に、「そんなことないですよ、あれは噂が1人歩きしているだけで、そのキャラクターの心情に沿っていれば多少変えることはオッケーですよ。」ということで1つだけハードルが低くなり安心しましたね。
 

(C)2024 映画『海の沈黙』INUP CO.,LTD

―――小泉さんはどのようなオファーを受けたのでしょうか?
 
小泉:
竜次役は本木さんにやってもらおうっていうことが決まっていて、その後、私の方にお話が来ました。倉本さんとは以前もご一緒するチャンスがあったのですが、こちらの都合で出演することができなかったという心残りがあったため、いつかそれを解消したいと思っていたこと、脚本がとても素敵だったこともあり、これを本木さんがやるならとても素敵になるだろうなと感じてお受けしました。
 
 
―――今作は、小樽でのロケがあったと思いますが、印象に残っている出来事などがあれば教えていただけますか。
 
本木:
とてもプライベートな話ですが、ロケ場所の1つとなった、本作で登場する「マロース」というバーは、「小樽ゴールドストーン」という小樽の老舗のライブハウスで、歌手をやっていた時代に音響でお世話になった方が運営されているお店でした。しかも、その「ゴールドストーン」に“漁の網の風景”を描いた日本画が飾られていて、その絵を描いた方が、私が結婚したときに、仲人をしていただいた方の息子さんの奥さんのお父様という。色々な縁が堀り起こされて、ここまで連れて来られたのだなと感じましたね。

(C)2024 映画『海の沈黙』INUP CO.,LTD

―――小泉さんはいかがですか?
 
小泉:
私は、小樽に1日だけ撮影で来たことがあります。これまでは1日だけだったのですが、今回の撮影では数日滞在できました。自分の撮影がない時もあったので、レンタカーを借りてプラプラといろんなところに行きました。
本木:一度、小泉さんの運転でごはんを食べに行きました。
小泉:地方ロケとかに来たら、割と空き時間にレンタカーを借りて、ぐるぐる回るのが好きで。
 
―――レンタカーで小樽を周る中で、気に入った景色や食べ物はありましたか?
 
小泉:
ちょっと外れに自然食の小さなお店があって、何となく調べてそこに行ったら、「(本木さんが)映画の撮影だって来ていたけど…」という話になって(笑)。
本木:そうなんです。映画のために、ある時期まで減量をしていたので、ナチュラル志向の食事を探していました。意外とそういうマニアックなお店も見つけましたね。
小泉:すごくかわいい小さなお店があって、私も健康に気をつけたいと思い探して行ったら、東京から映画を撮影している方がこの間も来たわねって話していました(笑)。
本木:別々で同じ店に行っていましたよね(笑)。

(C)2024 映画『海の沈黙』INUP CO.,LTD

―――お二人は92年のドラマ「あなただけ見えない」以来32年ぶりの共演ということですが、今お二人がお話されているところを見ていて、息がぴったりのように感じられます。
 
小泉:
幼なじみに近いですよね。15、6歳から歌手として頑張っていた時代も知っているし、そこからそれぞれの選択をして、歩み始めた時もそうでした。横を見るとずっと本木さんがいて、「大丈夫、私の位置大丈夫。」と確認しながら。
本木:私は、「小泉さんすごく飛ばしている」みたいな。(笑)
小泉:そんなふうにずっと人生のほとんどを横目で見ているみたいなね。
本木:42年ですから。もう親戚感があるんですよね。
 
 
―――お二人が対峙するシーンもありましたが、一緒に何か話し合ってコミュニケーションをとって臨まれたのですか?
 
本木:
今まで話してきたようなリアルな関係性っていうのが、うまく交錯したと思います。80年代、当時自分たちがアイドルをやっていた頃は、無邪気に若さを放出していたというのがありますけれども、キャリアを経て、こういう形のこういう役で向き合うというのは、それぞれにそれなりの老いもさらしつつ。小泉さんと向き合えたというのは、役を通しての色々な交錯する想いだけではない深さで、何となく通じ合ったり探り合ったりできたなと思います。
小泉:本木さんが若い時と私の若い時、お互いにその時のエネルギーを知っているから、“竜次”という役の若い頃のエネルギーを想像しやすかったですね。

ナルミのススメ。~『海の沈黙』~

今回、本木さんと小泉さんにインタビューした際、お二人の柔らかく温かい空気感が印象的で、10代の頃から共に歩んできた関係性が垣間見えてとても素敵だなと思いながら話を聞いていました。この関係性があるからこそ、たくさんセリフがあるわけではない二人のシーンの余白部分には、一朝一夕では伝わってこない濃密さを感じとることが出来るのかなと。倉本聰さんが、どうしても書いておきたかったという渾身の作品は「この絵は贋作だ!」というインパクトの強い一言から物語が始まります。芸術家ならではの思いが見え隠れし、様々な角度から“芸術に対する思い”が描かれていて、“美とは何か?”という問いに対する、映画から感じる解に頷けた気がします。また、映画の中で、本木さん演じる竜次が描く絵が本当に素晴らしいのですが、岩手県二戸市の洋画家である高田啓介さんの作品だそう。力強く、熱量を感じる鮮やかな作品たちも本作の見どころです。本木さん、小泉さんをはじめ、中井貴一さんや俳優の皆さんからあふれ出る荘厳なオーラ。作品にずっしりとした重さと厚みをもたらす日本を代表するキャストの方々が集まっていて、見ごたえ抜群の作品です。

『海の沈黙』作品情報


(C)2024 映画『海の沈黙』INUP CO.,LTD

公開日:11月22日(金)
 
原作・脚本:倉本 聰
 
監督:若松節朗
 
出演:本木雅弘
小泉今日子 清水美砂 仲村トオル 菅野 恵 / 石坂浩二
萩原聖人 村田雄浩 佐野史郎 田中 健 三船美佳 津嘉山正種
中井貴一
 
絵画協力:高田啓介
 
配給:ハピネットファントム・スタジオ
 
公式 HP: https://happinet-phantom.com/uminochinmoku/

柴田平美

映画ライター

映画ライター。ねむろ観光大使。UHBの情報番組「いっとこ!」の映画コーナーで俳優や監督のインタビューを6年間担当し、およそ100作品近く携わってきました。私が初めて観た映画は『名探偵コナン 天国へのカウントダウン』(2001)。故郷・根室に映画館がなかったため、観たい映画があると隣町の釧路まで行って観ていました。映画館では、一番後ろの真ん中で、ひとりで観るのが好き。ジャンルは、ラブ・ファンタジー・アクションを中心に、話題作をチェックしています。皆さんの心に残る映画を見つけるきっかけとなれますように。

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