2025.4.8

札幌や夕張、沖縄などで撮影した「地下の世界」と「土地の記憶」。舞台挨拶で小田香監督が最新作を語る

ベルリン国際映画祭と東京国際映画祭に正式出品された『Underground アンダーグラウンド』が4月5日(土)よりシアターキノ(札幌市中央区南2西6)で公開。映画作家タル・ベーラの愛弟子、小田香監督が三たび、カメラを向けるのは日本の“地下世界”。漆黒の暗闇に横たわる歴史を揺れる色とりどりの眩い光と鼓膜が震える音響設計で描き出す作品です。
この作品、筆者は東京国際映画祭のP&I上映で鑑賞しました。「札幌と夕張でも撮影が行われた」という地元民の喜びだけではなく、音と光、16mmフィルムの粗さが美しく見える映像の魅力が、映画館という最高の環境、そして「土地の記憶」という大きなテーマとシンクロしていて印象に強く残っていました。
公開初日の5日(土)には、小田監督が登壇し、シアターキノの中島洋代表と一緒にティーチイン形式で舞台挨拶を行いました。SASARU movieでは、その様子をレポートします。
 
(text/photo|矢武兄輔[キャプテン・ポップコーン])
 

 

80年代につくっていた中島洋さんのフィルムを引用しようとした理由、知り合われたキッカケは?

まず札幌は、1年目の後半ぐらいからSCARTS(札幌のアートセンター)さんと一緒に何かしようという試みがありました。西2丁目地下歩道の4面プロジェクションをつくることになり、「Underground」というプロジェクトが既にあったので「ぜひ札幌で撮影したい」という運びでした。自分たちの中に札幌出身者やゆかりのある人間がいなかったので、何から着手したらいいんだろうな、と思って相談させてもらってました。洋さんが札幌で撮られた家族ムービーのような映像のアーカイブプロジェクトとしてされていたので見させて頂きました。
 

地域ごとに区切らず、札幌や沖縄など各ロケ地をどういう順番で構想していったのですか?

まずは戦争以降の管理されていない土地や戦争時に使用されていたものをリサーチしていきました。SCARTS(札幌のアートセンター)からお声をかけて頂いたことがキッカケで「札幌編」が始まりました。当初、先ほどの家族ムービーも映像(素材)としてお借りしたんですが、非常に親密な映像で私自身がその画に上手いこと近づけなかったんですよね。その家族ムービーが撮影された時代と。なので、現代の記憶…少し前から今までの記憶をどうやって扱うかが自分たちの課題だと気づきました。

「どうしようか」と考えているうちに、大阪の豊中市が声をかけてくださったのですが、自分たちが撮りたい地下が見つからなかったんですね。そしたら「(豊中市と兄弟都市提携の)沖縄市に行っていいですよ!」と。沖縄市自体にはガマはないんですが、少し南部に行くと、(平和ガイドの)松永光雄さんとの出会いもあり、これが札幌編のときに課題と思っていた“何か”かもな、と予感はありました。しばらく時間を空けて、いろいろ回ったんですが、撮影できない土地もあり、最後は夕張市に協力頂いて、ダムのシークエンスを撮影させてもらいました。なので、1つ決まって、何かを学んだり気づいたりして、「じゃあ、次はどこに行こう?」という策があった感じでした。

(C)2024 trixta

夕張シューパロダム


(C)2024 trixta

この場所もプロデューサーのおひとりが見つけてくださったんです。「なんで、ずっと地下に潜る?」「なんで地下が好きなのですか?」という問いをずっと浴びてきて、「“地下”というのは、自分にとって何なのか」というのを上手いことを翻せないかという試みでした。
ここ(シューパロダム)は、冬の間、道路が沈むんです。水位が調整されていてダムなので、夏場だけこういう風に出てくる土地の表面が、表層があるんですけれども、物理的地下といっても季節や時間によって変わったりと、我々が立っている位置を変えれば、地図を変えれば「地下空間自体だけが地下じゃないな」という気づきがありました。
なので、もう“地下”は卒業したいな、と思っています。

土地の記憶がテーマですが、札幌は比較的新しい街なので、記憶は薄めなイメージ。札幌を選んだ意味は?

「どこまでだったらやれるかな」「どういうものだったら借りてもいいかな」という倫理的な選択があってですね。私は、札幌の歴史に詳しくないのですが、遡ったら(札幌は)基本的に和人の土地ではなかっただろうし、いろいろな歴史自体はあると思うんですよ。ただ、1年間で、そこまでを描くのは無理だと思っていました。
なので、比較的近代にできた人工的な視覚を撮りましたね。札幌は、SCARTSさんが中心的な役割を担ってくださっていたので、役場の人たちに随分協力していただきました。
 
 

これまでの作品はサブスクで配信やソフト化されていませんが理由を知りたいです


(C)2024 trixta

私自身は、他の映画を配信でも観られるんですけれども、「自分の作品を配信で観られるかな」という気持ちがあります。ただ、映画館のチケット代は決して安くないし、来るのも大変だけど、でもやっぱり映画館で観ていただきたいな、という思いがあります。
しかし、生きている人間全員が映画館に来られるわけではないので、その層の方々にどうやって作品を届けたらいいのかな、という課題はあります。DVDとかは、もしかしたらこれから考えるかもしれないです。
 

映画館で上映する前提の工夫はどうされていたのか?

例えばラストショットが顕著ですけども本当に、吉開さんがとても小さく映っちゃうじゃないですか。モニターで見ていたら小さいですが、(映画館で公開する前提だと)大きなスクリーンで観て頂くから大丈夫だ、という安心のさせ方を、自分へしています(笑)。そこは担保として!
音は、ノーマルな録音をしてもらってるんですけれども、整音、音響となった時に、今もこうやって(映画館の中には)スピーカーが何個もあるし、ウーファーもこの辺にあると思うんですけど、作っていただいた音、現場で録った音というのがどういう風に映画館という空間で聴こえるべきか、というのは一律に設定して頂いています。
映画館だからこそ拾える小さな音と、映画館だからこそ浴びれる大きな音、というレンジがあるみたいで、そのレンジは目一杯使って頂きました。
 

作品情報


(C)2024 trixta

『Underground アンダーグラウンド』

『ニーチェの馬』(11)で知られる映画作家タル・ベーラが設立した映画学校で学んだ後、『鉱 ARAGANE』(15)では、ボスニア・ヘルツェゴビナの炭鉱を、第1 回大島渚賞を受賞した『セノーテ』(19)では、メキシコ・ユカタン半島北部の洞窟内の泉と、異形の地下世界を題材に制作を続けてきた小田香が三たび、遂に日本の地下世界にカメラを向ける。
3年かけて日本各地の地下世界をリサーチし、その土地に宿る歴史と記憶を辿り、土地の人々の声に耳を傾け、これまでとは全く異なる撮影体制で、地下の暗闇を16mmフィルムに焼き付けていく。
米津玄師「Lemon」MVのダンスで鮮烈な印象を残し、映画作家・ダンサーの吉開菜央が、ある女の姿を借りた「シャドウ(影)」という存在を演じた。
 
『Underground アンダーグラウンド』は4月11日(金)までシアターキノで公開予定

80年代につくっていた中島洋さんのフィルムを引用しようとした理由、知り合われたキッカケは?

まず札幌は、1年目の後半ぐらいからSCARTS(札幌のアートセンター)さんと一緒に何かしようという試みがありました。西2丁目地下歩道の4面プロジェクションをつくることになり、「Underground」というプロジェクトが既にあったので「ぜひ札幌で撮影したい」という運びでした。自分たちの中に札幌出身者やゆかりのある人間がいなかったので、何から着手したらいいんだろうな、と思って相談させてもらってました。洋さんが札幌で撮られた家族ムービーのような映像のアーカイブプロジェクトとしてされていたので見させて頂きました。
 

地域ごとに区切らず、札幌や沖縄など各ロケ地をどういう順番で構想していったのですか?


(C)2024 trixta

まずは戦争以降の管理されていない土地や戦争時に使用されていたものをリサーチしていきました。SCARTS(札幌のアートセンター)からお声をかけて頂いたことがキッカケで「札幌編」が始まりました。当初、先ほどの家族ムービーも映像(素材)としてお借りしたんですが、非常に親密な映像で私自身がその画に上手いこと近づけなかったんですよね。その家族ムービーが撮影された時代と。なので、現代の記憶…少し前から今までの記憶をどうやって扱うかが自分たちの課題だと気づきました。

「どうしようか」と考えているうちに、大阪の豊中市が声をかけてくださったのですが、自分たちが撮りたい地下が見つからなかったんですね。そしたら「(豊中市と兄弟都市提携の)沖縄市に行っていいですよ!」と。沖縄市自体にはガマはないんですが、少し南部に行くと、(平和ガイドの)松永光雄さんとの出会いもあり、これが札幌編のときに課題と思っていた“何か”かもな、と予感はありました。しばらく時間を空けて、いろいろ回ったんですが、撮影できない土地もあり、最後は夕張市に協力頂いて、ダムのシークエンスを撮影させてもらいました。なので、1つ決まって、何かを学んだり気づいたりして、「じゃあ、次はどこに行こう?」という策があった感じでした。

夕張シューパロダム


(C)2024 trixta

この場所もプロデューサーのおひとりが見つけてくださったんです。「なんで、ずっと地下に潜る?」「なんで地下が好きなのですか?」という問いをずっと浴びてきて、「“地下”というのは、自分にとって何なのか」というのを上手いことを翻せないかという試みでした。
ここ(シューパロダム)は、冬の間、道路が沈むんです。水位が調整されていてダムなので、夏場だけこういう風に出てくる土地の表面が、表層があるんですけれども、物理的地下といっても季節や時間によって変わったりと、我々が立っている位置を変えれば、地図を変えれば「地下空間自体だけが地下じゃないな」という気づきがありました。
なので、もう“地下”は卒業したいな、と思っています。

土地の記憶がテーマですが、札幌は比較的新しい街なので、記憶は薄めなイメージ。札幌を選んだ意味は?

「どこまでだったらやれるかな」「どういうものだったら借りてもいいかな」という倫理的な選択があってですね。私は、札幌の歴史に詳しくないのですが、遡ったら(札幌は)基本的に和人の土地ではなかっただろうし、いろいろな歴史自体はあると思うんですよ。ただ、1年間で、そこまでを描くのは無理だと思っていました。
なので、比較的近代にできた人工的な視覚を撮りましたね。札幌は、SCARTSさんが中心的な役割を担ってくださっていたので、役場の人たちに随分協力していただきました。
 
 

これまでの作品はサブスクで配信やソフト化されていませんが理由を知りたいです


(C)2024 trixta

私自身は、他の映画を配信でも観られるんですけれども、「自分の作品を配信で観られるかな」という気持ちがあります。ただ、映画館のチケット代は決して安くないし、来るのも大変だけど、でもやっぱり映画館で観ていただきたいな、という思いがあります。
しかし、生きている人間全員が映画館に来られるわけではないので、その層の方々にどうやって作品を届けたらいいのかな、という課題はあります。DVDとかは、もしかしたらこれから考えるかもしれないです。
 

映画館で上映する前提の工夫はどうされていたのか?

例えばラストショットが顕著ですけども本当に、吉開さんがとても小さく映っちゃうじゃないですか。モニターで見ていたら小さいですが、(映画館で公開する前提だと)大きなスクリーンで観て頂くから大丈夫だ、という安心のさせ方を、自分へしています(笑)。そこは担保として!
音は、ノーマルな録音をしてもらってるんですけれども、整音、音響となった時に、今もこうやって(映画館の中には)スピーカーが何個もあるし、ウーファーもこの辺にあると思うんですけど、作っていただいた音、現場で録った音というのがどういう風に映画館という空間で聴こえるべきか、というのは一律に設定して頂いています。
映画館だからこそ拾える小さな音と、映画館だからこそ浴びれる大きな音、というレンジがあるみたいで、そのレンジは目一杯使って頂きました。
 

作品情報


(C)2024 trixta

『Underground アンダーグラウンド』

『ニーチェの馬』(11)で知られる映画作家タル・ベーラが設立した映画学校で学んだ後、『鉱 ARAGANE』(15)では、ボスニア・ヘルツェゴビナの炭鉱を、第1 回大島渚賞を受賞した『セノーテ』(19)では、メキシコ・ユカタン半島北部の洞窟内の泉と、異形の地下世界を題材に制作を続けてきた小田香が三たび、遂に日本の地下世界にカメラを向ける。
3年かけて日本各地の地下世界をリサーチし、その土地に宿る歴史と記憶を辿り、土地の人々の声に耳を傾け、これまでとは全く異なる撮影体制で、地下の暗闇を16mmフィルムに焼き付けていく。
米津玄師「Lemon」MVのダンスで鮮烈な印象を残し、映画作家・ダンサーの吉開菜央が、ある女の姿を借りた「シャドウ(影)」という存在を演じた。
 
『Underground アンダーグラウンド』は4月11日(金)までシアターキノで公開予定

矢武兄輔

まちのえいが屋さん/キャプテン・ポップコーン

20歳の1月。札幌映画サークルに入会直後、さぬき映画祭への参加で『踊る大捜査線』の製作陣や深田晃司監督と出逢い、映画界の現実や地方から発信するエンタメの可能性を知る。そこから「映画館へ行く人を増やす」という目標を持ち、カネゴンを呼んでみたり、学生向け媒体をつくったり、休学して東京国際映画祭で勤務、映画館へ就職→退職→「矢武企画」を起業からの今は某局でラジオDJ。 すべては『踊る』の完結が始まりだった。そして、踊るプロジェクト再始動と共に…! ということで、皆さんにとって映画がもっと近くなれますように。

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