(C)2025「火喰鳥を、喰う」製作委員会
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2025.8.2

死者の日記から始まる怪異が日常に忍び寄る──映画『火喰鳥を、喰う』が誘う、先読み不能の迷宮

戦死したはずの人物から届いた一冊の日記。
そこに記されていたのは、「ヒクイドリ、クイタイ」という謎めいた言葉と、異常なまでの“生”への執着だった──。

映画『火喰鳥を、喰う』は、日常のすぐ隣にある“異常”が音もなく忍び寄る恐怖を描いた、静かで不穏なサスペンス。10月3日(金)の公開に先駆け、SASARU movie編集部がその魅力を紐解きます。

「ヒクイドリ、クイタイ」──記された“生への執着”


(C)2025「火喰鳥を、喰う」製作委員会

信州の山間で暮らす久喜雄司(水上恒司)と妻の夕里子(山下美月)のもとに、一冊の古びた日記が届きます。
書いたのは、雄司の祖父・保(吉澤健)の兄、久喜貞市。太平洋戦争末期に戦死したとされていた人物です。

日記には、「ヒクイドリ、クイタイ」という意味不明な言葉とともに、尋常ではない“生”への執着が綴られていました。
それを境に、久喜家の墓石から貞市の名前が消え、祖父・保の姿も忽然と消えてしまう──。過去と現在が交差し、見えない何かがふたりの周囲を蝕み始めます。

世界に滲み始める、もうひとつの現実

この作品の真の恐怖は、突如訪れる異常ではなく、じわじわと現実世界の輪郭が曖昧になっていく感覚にあります。
最初は気のせいのように思えた出来事が、積み重なるごとに、信じていた現実そのものが静かに変質しているのではという疑念を呼び起こす。

音もなく、色もなく、説明もつかないまま、私たちの世界の足元にもうひとつの世界が重なっていく──その“静かな歪み”を一つずつすくい上げるように描く演出こそが、本作の核心です。

(C)2025「火喰鳥を、喰う」製作委員会

崩れていく現実と、抗う理性

雄司は大学で化学を教える助教授という立場から、起きている出来事を論理的に解釈しようと試みます。
しかし、理屈では割り切れない現象が彼の冷静さを揺るがしていきます。

一方、夕里子は恐怖や不安に動揺しながらも、崩れゆく日常を必死に繋ぎとめようとする。
理性と感情、その両端で揺れるふたりの姿が、本作に確かな人間的重みを与えています。

味方か、それとも──北斗が放つ違和感の正体

夕里子の大学時代の同級生・北斗総一郎(宮舘涼太)は、怪異に精通した人物として登場します。

彼は理知的で落ち着いた語り口ながら、どこか現実の外側に立っているような違和感をまとっています。観客はその存在に「この人は何を知っていて、何を隠しているのか」と、自然と注意を向けさせられるでしょう。

(C)2025「火喰鳥を、喰う」製作委員会

演技が導く“沈黙のサスペンス”


(C)2025「火喰鳥を、喰う」製作委員会

水上恒司は、変化に巻き込まれても理性を保とうとする雄司の苦悩を、繊細かつ抑制された演技で表現。

また、山下美月が演じる夕里子は、口数少なくとも確かな感情の揺れを伝える表情の演技が光ります。

そして、宮舘涼太演じる北斗は、言葉ではなく「空気」を揺らすような存在感で、登場シーンそのものが緊張感を生み出しています。

執着が、今いる世界を侵すということ

本作の根底にあるのは、「執着」が現実世界に影響を及ぼすというテーマです。
「消えたはずの存在を取り戻したい」「やり直したい」という願いが、もし本当に何かを呼び寄せてしまうとしたら──。

「死を“過去の出来事”として片付けきれない」という感覚は、多くの日本的ホラーや宗教観に共通するテーマであり、本作もそこに通じているように思えます。

願いの強さが、見えない扉を開いてしまうとしたら──
その時、私たちはどの現実を選ぶのか。

(C)2025「火喰鳥を、喰う」製作委員会

映画『火喰鳥を、喰う』基本情報


(C)2025「火喰鳥を、喰う」製作委員会

出演:水上恒司、山下美月、
森田望智、吉澤健、カトウシンスケ、豊田裕大、
佐伯日菜子、足立正生、小野塚勇人/麻生祐未、
宮舘涼太(Snow Man)

監督:本木克英 

原作:原浩「火喰鳥を、喰う」(角川ホラー文庫/KADOKAWA刊)

主題歌:マカロニえんぴつ「化け物」(トイズファクトリー)

公式HP:https://gaga.ne.jp/hikuidori/

「ヒクイドリ、クイタイ」──記された“生への執着”


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信州の山間で暮らす久喜雄司(水上恒司)と妻の夕里子(山下美月)のもとに、一冊の古びた日記が届きます。
書いたのは、雄司の祖父・保(吉澤健)の兄、久喜貞市。太平洋戦争末期に戦死したとされていた人物です。

日記には、「ヒクイドリ、クイタイ」という意味不明な言葉とともに、尋常ではない“生”への執着が綴られていました。
それを境に、久喜家の墓石から貞市の名前が消え、祖父・保の姿も忽然と消えてしまう──。過去と現在が交差し、見えない何かがふたりの周囲を蝕み始めます。

世界に滲み始める、もうひとつの現実


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この作品の真の恐怖は、突如訪れる異常ではなく、じわじわと現実世界の輪郭が曖昧になっていく感覚にあります。
最初は気のせいのように思えた出来事が、積み重なるごとに、信じていた現実そのものが静かに変質しているのではという疑念を呼び起こす。

音もなく、色もなく、説明もつかないまま、私たちの世界の足元にもうひとつの世界が重なっていく──その“静かな歪み”を一つずつすくい上げるように描く演出こそが、本作の核心です。

崩れていく現実と、抗う理性

雄司は大学で化学を教える助教授という立場から、起きている出来事を論理的に解釈しようと試みます。
しかし、理屈では割り切れない現象が彼の冷静さを揺るがしていきます。

一方、夕里子は恐怖や不安に動揺しながらも、崩れゆく日常を必死に繋ぎとめようとする。
理性と感情、その両端で揺れるふたりの姿が、本作に確かな人間的重みを与えています。

味方か、それとも──北斗が放つ違和感の正体


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夕里子の大学時代の同級生・北斗総一郎(宮舘涼太)は、怪異に精通した人物として登場します。

彼は理知的で落ち着いた語り口ながら、どこか現実の外側に立っているような違和感をまとっています。観客はその存在に「この人は何を知っていて、何を隠しているのか」と、自然と注意を向けさせられるでしょう。

演技が導く“沈黙のサスペンス”


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水上恒司は、変化に巻き込まれても理性を保とうとする雄司の苦悩を、繊細かつ抑制された演技で表現。

また、山下美月が演じる夕里子は、口数少なくとも確かな感情の揺れを伝える表情の演技が光ります。

そして、宮舘涼太演じる北斗は、言葉ではなく「空気」を揺らすような存在感で、登場シーンそのものが緊張感を生み出しています。

執着が、今いる世界を侵すということ


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本作の根底にあるのは、「執着」が現実世界に影響を及ぼすというテーマです。
「消えたはずの存在を取り戻したい」「やり直したい」という願いが、もし本当に何かを呼び寄せてしまうとしたら──。

「死を“過去の出来事”として片付けきれない」という感覚は、多くの日本的ホラーや宗教観に共通するテーマであり、本作もそこに通じているように思えます。

願いの強さが、見えない扉を開いてしまうとしたら──
その時、私たちはどの現実を選ぶのか。

映画『火喰鳥を、喰う』基本情報


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出演:水上恒司、山下美月、
森田望智、吉澤健、カトウシンスケ、豊田裕大、
佐伯日菜子、足立正生、小野塚勇人/麻生祐未、
宮舘涼太(Snow Man)

監督:本木克英 

原作:原浩「火喰鳥を、喰う」(角川ホラー文庫/KADOKAWA刊)

主題歌:マカロニえんぴつ「化け物」(トイズファクトリー)

公式HP:https://gaga.ne.jp/hikuidori/

休日のスケジュールが決まっていない方、何を見ようか迷っている方など"ライトな映画ファン"に対して、映画館に出かけて、映画を楽しむことをおすすめします。SASARU movie編集部では、話題性の高い最新映画を中心にその情報や魅力を継続的に発信していきます。

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