(C)2025 UNIVERSAL PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.
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2025.8.15

空を飛ぶという、かつての夢を思い出させてくれる実写版映画『ヒックとドラゴン』試写会レビュー

子どもの頃、1度は夢見た“空を飛ぶ感覚”。
もしそれを本当に体験できたとしたら——。

映画『ヒックとドラゴン』(実写版)は、そんな空想を超える臨場感と、温かな物語の力で観る者の心を強く揺さぶります。アニメーション版では、アニー賞で10部門を制するなど、その年を代表するアニメーションとして世界的に高く評価されています。その生みの親、ディーン・デュボア監督自身がメガホンを取り、実写という新たな表現で物語を再構築しました。

スケールの拡張、感情の深掘り、そして息を呑む映像美。すべてがアップグレードされた“もうひとつのヒックとドラゴン”が、いまスクリーンに羽ばたきます。

五感を揺さぶる、空のリアリズム


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冒頭から圧倒されるのは、その映像表現の臨場感です。
ドラゴンの背に乗って大空を舞うシーンは、ただ美しいだけではありません。風の重み、空気の抵抗、落差のスリルまでがリアルに伝わり、観客は思わず身体を預けてしまいそうになる没入感。
この体験を支えるのが、撮影監督ビル・ポープの存在です。
『マトリックス』3部作や、『スパイダーマン2・3』などで知られる彼の映像演出は、本作でも冴えわたっています。アニメ版の色彩と世界観を尊重しながらも、実写ならではのリアリティで「空を飛ぶ」という幻想を、まるで現実の感覚として体感させてくれます。

ヒックとトゥースの“心の対話”

この作品の核となるのは、少年ヒックとドラゴン・トゥースとの出会いと心の交流です。敵同士として出会ったはずのふたりが、互いの中に“自分と似た孤独”を見出し、少しずつ心を通わせていく——。
その過程は確かな説得力を持っています。ヒックが恐れではなく理解を選び、傷ついたトゥースにそっと手を差し伸べるシーンには、静かな勇気と深い共感が息づいていました。

そして何よりも印象的なのは、ヒックとトゥースがお互いを本当に大切に思っていることが、言葉以上に映像と仕草から伝わってくること。

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言葉を持たないトゥースが、ヒックを助けようと目の動きや仕草だけで意思を伝える——。
その一瞬一瞬があまりに真っ直ぐで、観る者の心に深く響きます。
CGでありながら、身体の動き、間の取り方まで丁寧に描かれており、「言葉に頼らない演技」が成立しているのです。
トゥースの仕草には、生身の俳優以上の繊細さと真心が宿り、物語の核心を静かに支えています。

父と子、信じることのむずかしさ

ヒックとトゥースの絆と同様に深く心に残ったのは、ヒックと父・ストイックとの関係です。強くあれ、戦士であれという父の願いと、自分らしく生きたいというヒックの思いは、すれ違い続けます。
けれど、息子の選んだ道を真正面から見つめ、最後にはそれを信じようとする父の変化は、この物語に温かな「赦し」と「希望」をもたらしていました。
父であること、子であること、その間にある理解のむずかしさと愛おしさを、実写ならではの繊細な演技でしっかりと感じることができます。

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実写化によって得た“触れられるリアル”


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アニメ版の持っていた物語の美しさやテーマの深さは、そのまま丁寧に継承されています。
しかし、実写化されたことで、そこに“触れられるようなリアリティ”が加わりました。風の音、羽ばたきの圧、呼吸の揺らぎ、鼓動の響き——。
そうした細部の描写が、ヒックとトゥースの関係に「絵空事ではない」重みと温度を与えています。
飛行や戦闘のシーンも圧巻です。
音響も画面構成も、まるで遊園地のアトラクションのような臨場感。
しかし、その演出は決して“派手さのため”ではなく、「生きている存在」としてのドラゴンを描くための必然として機能しています。
実写化によって、ドラゴンは想像上の生き物から「もうひとつの知性」へと変わり、人間との関係性に深みと現実味を与えていました。

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異なる存在をつなぐ、静かな手ざわり


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実写版『ヒックとドラゴン』は、単なる冒険ファンタジーではありません。
「異なる存在を理解しようとする心」「恐れよりも共感を選ぶ勇気」——。
そのひとつひとつが物語の中で丁寧に描かれ、観る者の心に静かに染み渡ります。
そして、実写だからこそ感じられる“触れられるリアル”が、この作品を“もうひとつの感動”へと導いてくれます。終映後も、まだ風の感触が肌に残っているような気がしました。あの空は、スクリーンの向こうではなく、ほんの少し先にあったのかもしれない。空を飛ぶ夢を、もう一度心に取り戻したい人へ。そして、誰かとの“違い”に戸惑っているすべての人へ。この映画は、きっとそっと手を差し伸べてくれるはずです。

映画『ヒックとドラゴン』基本情報

公開日:2025年9月5日(金)

出演:メイソン・テムズ、ニコ・パーカー、
ニック・フロスト、ジェラルド・バトラー

脚本&監督:ディーン・デュボア

撮影:ビル・ポープ

製作:マーク・プラット、アダム・シーゲル

音楽:ジョン・パウエル

公式HP:https://hic-dragon-movie.jp/


 

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五感を揺さぶる、空のリアリズム


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冒頭から圧倒されるのは、その映像表現の臨場感です。
ドラゴンの背に乗って大空を舞うシーンは、ただ美しいだけではありません。風の重み、空気の抵抗、落差のスリルまでがリアルに伝わり、観客は思わず身体を預けてしまいそうになる没入感。
この体験を支えるのが、撮影監督ビル・ポープの存在です。
『マトリックス』3部作や、『スパイダーマン2・3』などで知られる彼の映像演出は、本作でも冴えわたっています。アニメ版の色彩と世界観を尊重しながらも、実写ならではのリアリティで「空を飛ぶ」という幻想を、まるで現実の感覚として体感させてくれます。

ヒックとトゥースの“心の対話”


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この作品の核となるのは、少年ヒックとドラゴン・トゥースとの出会いと心の交流です。敵同士として出会ったはずのふたりが、互いの中に“自分と似た孤独”を見出し、少しずつ心を通わせていく——。
その過程は確かな説得力を持っています。ヒックが恐れではなく理解を選び、傷ついたトゥースにそっと手を差し伸べるシーンには、静かな勇気と深い共感が息づいていました。

そして何よりも印象的なのは、ヒックとトゥースがお互いを本当に大切に思っていることが、言葉以上に映像と仕草から伝わってくること。

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言葉を持たないトゥースが、ヒックを助けようと目の動きや仕草だけで意思を伝える——。
その一瞬一瞬があまりに真っ直ぐで、観る者の心に深く響きます。
CGでありながら、身体の動き、間の取り方まで丁寧に描かれており、「言葉に頼らない演技」が成立しているのです。
トゥースの仕草には、生身の俳優以上の繊細さと真心が宿り、物語の核心を静かに支えています。

父と子、信じることのむずかしさ


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ヒックとトゥースの絆と同様に深く心に残ったのは、ヒックと父・ストイックとの関係です。強くあれ、戦士であれという父の願いと、自分らしく生きたいというヒックの思いは、すれ違い続けます。
けれど、息子の選んだ道を真正面から見つめ、最後にはそれを信じようとする父の変化は、この物語に温かな「赦し」と「希望」をもたらしていました。
父であること、子であること、その間にある理解のむずかしさと愛おしさを、実写ならではの繊細な演技でしっかりと感じることができます。

実写化によって得た“触れられるリアル”


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アニメ版の持っていた物語の美しさやテーマの深さは、そのまま丁寧に継承されています。
しかし、実写化されたことで、そこに“触れられるようなリアリティ”が加わりました。風の音、羽ばたきの圧、呼吸の揺らぎ、鼓動の響き——。
そうした細部の描写が、ヒックとトゥースの関係に「絵空事ではない」重みと温度を与えています。

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飛行や戦闘のシーンも圧巻です。
音響も画面構成も、まるで遊園地のアトラクションのような臨場感。
しかし、その演出は決して“派手さのため”ではなく、「生きている存在」としてのドラゴンを描くための必然として機能しています。
実写化によって、ドラゴンは想像上の生き物から「もうひとつの知性」へと変わり、人間との関係性に深みと現実味を与えていました。

異なる存在をつなぐ、静かな手ざわり


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実写版『ヒックとドラゴン』は、単なる冒険ファンタジーではありません。
「異なる存在を理解しようとする心」「恐れよりも共感を選ぶ勇気」——。
そのひとつひとつが物語の中で丁寧に描かれ、観る者の心に静かに染み渡ります。
そして、実写だからこそ感じられる“触れられるリアル”が、この作品を“もうひとつの感動”へと導いてくれます。終映後も、まだ風の感触が肌に残っているような気がしました。あの空は、スクリーンの向こうではなく、ほんの少し先にあったのかもしれない。空を飛ぶ夢を、もう一度心に取り戻したい人へ。そして、誰かとの“違い”に戸惑っているすべての人へ。この映画は、きっとそっと手を差し伸べてくれるはずです。

映画『ヒックとドラゴン』基本情報


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公開日:2025年9月5日(金)

出演:メイソン・テムズ、ニコ・パーカー、
ニック・フロスト、ジェラルド・バトラー

脚本&監督:ディーン・デュボア

撮影:ビル・ポープ

製作:マーク・プラット、アダム・シーゲル

音楽:ジョン・パウエル

公式HP:https://hic-dragon-movie.jp/


 

早川真澄

ライター・編集者

北海道の情報誌の編集者として勤務し映画や観光、人材など地域密着の幅広いジャンルの制作を手掛ける。現在は編集プロダクションを運営し雑誌、webなど媒体を問わず企画制作を行っています。

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