(C)真藤順丈/講談社 (C)2025「宝島」製作委員会
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2025.9.27

琉球と米国の文化が混在する沖縄を再現、左ハンドルのビンテージカーも 『宝島』大友監督インタビュー後篇

毎週・木曜日の25:30から北海道・札幌のFM NORTH WAVE(JFL系)で放送されている、矢武企画制作・映画系トーク番組「キャプテン・ポップコーン」の内容をSASARU movieでも配信!
キャプテン・ポップコーンこと矢武企画・矢武兄輔が、映画の情報はもちろん、映画に関係するまちの情報、映画がもっと近くなる内容をお届けします。

映画系トーク番組「キャプテン・ポップコーン」は、北海道外にお住まいの方、もしくは聴き逃した方でも、インターネットで聴けるradikoで一定期間は聴取することが可能です。
この記事では9月18日(木)に放送した番組内容をお届けしています。 進行台本と放送内容を基に記事を作成しています。そのため、実際の放送内容とは違う表現・補足(話し言葉と書き言葉等)並びに、放送ではカットされた内容を含む場合がございます。 また、公開される映画館名や作品情報、イベントは上記日程の放送または収録時点のものになりますのでご留意ください。

【提供】キャプテン・ポップコーン/矢武企画

失われた時代を再現し、沖縄の声を届ける──大友啓史監督インタビュー【後篇】

矢武:これまで大友監督は全国各地の映画館で舞台挨拶を行われていますが、特に印象に残っている映画館はありますか。

大友:地元・岩手県の映画館です。私の友人たちが「世界最速上映」と題し、公開初日の深夜0時からカウントダウン上映を行ってくれるのです。震災以来「映画の力で街を盛り上げよう」と活動してきた仲間たちで、私が足を運ぶと大きな熱量で迎えてくれます。その思いが胸に響き、どうしても印象深い場所となっています。

 

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矢武:先週は企画に至った経緯を伺いました。今週は、美術や装飾が生み出す時代の空気についてお聞きします。撮影中に特に印象的だった点はありますか。

大友:日本映画ではあまり描かれてこなかった時代を再現するため、美術面で大きな挑戦が必要でした。1950年代の沖縄はアメリカ文化と琉球文化が入り混じる独自の世界。既に当時の面影が残る場所はほとんどなく、オープンセットを組み、2か月ほど沖縄で撮影を行いながら、当時の空気を徹底的に再現しました。美術部の資料を徹底的に活用し、アメリカ文化を象徴するビンテージカーも現地から調達しました。
大友:ただ、現在日本に残るビンテージカーの多くは右ハンドルに改造されており、当時を忠実に再現するには左ハンドルが必須でした。そのためアメリカや韓国から車を取り寄せています。最終的にはコザ騒動の大規模なアクションシーンで、それらをひっくり返したり燃やしたりする必要があり、予算は膨らみましたが「当時を届ける」という目的のために妥協せず進めました。

矢武:実際に壊してしまうのは惜しいようにも思えます。当時のものを購入する方が安く済むのでしょうか。

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大友:どちらにしても高額です。燃やすシーンでは近年の車を代用することもありますが、ひっくり返す場面などは当時のアメリカ車でなければ意味がありません。1950年代のアメ車は黄色いナンバーが特徴で、その再現にこだわりました。さらに当時の沖縄の日常風景も重要でした。例えば低空飛行の戦闘機が人々の会話を遮る光景や、夜空に照明弾が上がる様子。これらをリアルに取り込むため、照明部が工夫を重ねています。冒頭で「戦果アギヤー」が照明弾を盗み、花火のように打ち上げる場面も、すべて照明を駆使した演出で、アクション部のサポートで実現しました。
矢武:オープンセットやスタジオセットについてはいかがでしたか。

大友:物語の舞台である「ゲート通り」と呼ばれるカデナ基地につながる大通りは、現在とは全く異なる姿になっているため、最終的に群衆のエネルギーを前面に押し出して撮影するため、大規模なセットを組むことを選びました。米軍基地の滑走路も和歌山県の旧空港を活用し、金網などを設営して再現しました。さらに若者たちが裸足で走るシーンのために、特殊造形で裸足に見える靴を制作するなど、細部まで工夫を凝らしています。

 

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矢武:全国キャラバンも実施されていますが、特に沖縄での反応はいかがでしたか。

大友:本土出身の自分が沖縄を題材にすることに大きな緊張感がありましたが、上映後に観客から「ありがとう」という言葉を多くいただきました。祖父母世代が語ることの少なかった屈辱や悔しさを描いた映画に、どこかで伝えていきたいという思いを重ねてくださったのだと思います。その声は非常に印象に残っています。
矢武:一方で、青春物語としての側面もありますね。

大友:そうです。20年にわたり若者たちがどのように生き抜いたのかを描く青春群像劇でもあります。次の世代に伝えたい思いは多くありますが、映画を通じて当時の沖縄に思いを馳せ、登場人物と共に追体験していただきたい。そして『宝島』というタイトルが示す通り、自分たちにとっての“宝”とは何かを観客自身に考えていただければと思います。

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大友啓史監督プロフィール

大友啓史監督

1966年、岩手県生まれ。1990年にNHK に入局し、連続テレビ小説「ちゅらさん」シリーズ(01~07)や「ハゲタカ」(07)、NHK大河ドラマ「龍馬伝」(10)などの演出を担当。2009年『ハゲタカ』で映画監督デビューし、11年に独立。以降、『るろうに剣心』(12~21)シリーズや東映創立70周年記念作品『レジェンド&バタフライ』(23)などを手がける。最新作は9月19日(金)公開の映画『宝島』と、Netflixで12月配信予定の『10DANCE』。

映画『宝島』作品情報

映画『宝島』

1952 年のアメリカ統治下の沖縄を舞台に、米軍基地から物資を奪い、住民に分け与える「戦果アギヤー」と呼ばれる若者たちがいた。幼馴染のグスク、ヤマコ、レイ。そして、彼らの英雄的存在であり、リーダーのオンの4人だった。全てを懸けて、のぞんだある襲撃の夜、オンが「予定外の戦果」を手に入れ、突然消息を絶つ。残された3人はそれぞれ刑事、教師、ヤクザの道へ進むが、米軍支配と本土から見捨てられた環境の中、ある事件で感情が爆発。オンの失踪の謎と彼が持ち出した「何か」を追う中、米軍も動き出し、20年後の衝撃の真実が明らかに!

主演に妻夫木聡を迎え、広瀬すず、窪田正孝、永山瑛太ら日本映画界を牽引する豪華俳優陣が集結!!第160回直木賞など三冠に輝いた真藤順丈による傑作小説「宝島」を企画から完成まで6年、2度の撮影延期などの困難を乗り越え、東映とソニー・ピクチャーズによる共同配給のもと実写映画化。

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映画系トーク番組「キャプテン・ポップコーン」は、北海道外にお住まいの方、もしくは聴き逃した方でも、インターネットで聴けるradikoで一定期間は聴取することが可能です。
この記事では9月18日(木)に放送した番組内容をお届けしています。 進行台本と放送内容を基に記事を作成しています。そのため、実際の放送内容とは違う表現・補足(話し言葉と書き言葉等)並びに、放送ではカットされた内容を含む場合がございます。 また、公開される映画館名や作品情報、イベントは上記日程の放送または収録時点のものになりますのでご留意ください。

【提供】キャプテン・ポップコーン/矢武企画

失われた時代を再現し、沖縄の声を届ける──大友啓史監督インタビュー【後篇】


(C)真藤順丈/講談社 (C)2025「宝島」製作委員会

矢武:これまで大友監督は全国各地の映画館で舞台挨拶を行われていますが、特に印象に残っている映画館はありますか。

大友:地元・岩手県の映画館です。私の友人たちが「世界最速上映」と題し、公開初日の深夜0時からカウントダウン上映を行ってくれるのです。震災以来「映画の力で街を盛り上げよう」と活動してきた仲間たちで、私が足を運ぶと大きな熱量で迎えてくれます。その思いが胸に響き、どうしても印象深い場所となっています。

 

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矢武:先週は企画に至った経緯を伺いました。今週は、美術や装飾が生み出す時代の空気についてお聞きします。撮影中に特に印象的だった点はありますか。

大友:日本映画ではあまり描かれてこなかった時代を再現するため、美術面で大きな挑戦が必要でした。1950年代の沖縄はアメリカ文化と琉球文化が入り混じる独自の世界。既に当時の面影が残る場所はほとんどなく、オープンセットを組み、2か月ほど沖縄で撮影を行いながら、当時の空気を徹底的に再現しました。美術部の資料を徹底的に活用し、アメリカ文化を象徴するビンテージカーも現地から調達しました。

(C)真藤順丈/講談社 (C)2025「宝島」製作委員会

大友:ただ、現在日本に残るビンテージカーの多くは右ハンドルに改造されており、当時を忠実に再現するには左ハンドルが必須でした。そのためアメリカや韓国から車を取り寄せています。最終的にはコザ騒動の大規模なアクションシーンで、それらをひっくり返したり燃やしたりする必要があり、予算は膨らみましたが「当時を届ける」という目的のために妥協せず進めました。

矢武:実際に壊してしまうのは惜しいようにも思えます。当時のものを購入する方が安く済むのでしょうか。

(C)真藤順丈/講談社 (C)2025「宝島」製作委員会

大友:どちらにしても高額です。燃やすシーンでは近年の車を代用することもありますが、ひっくり返す場面などは当時のアメリカ車でなければ意味がありません。1950年代のアメ車は黄色いナンバーが特徴で、その再現にこだわりました。さらに当時の沖縄の日常風景も重要でした。例えば低空飛行の戦闘機が人々の会話を遮る光景や、夜空に照明弾が上がる様子。これらをリアルに取り込むため、照明部が工夫を重ねています。冒頭で「戦果アギヤー」が照明弾を盗み、花火のように打ち上げる場面も、すべて照明を駆使した演出で、アクション部のサポートで実現しました。

(C)真藤順丈/講談社 (C)2025「宝島」製作委員会

矢武:オープンセットやスタジオセットについてはいかがでしたか。

大友:物語の舞台である「ゲート通り」と呼ばれるカデナ基地につながる大通りは、現在とは全く異なる姿になっているため、最終的に群衆のエネルギーを前面に押し出して撮影するため、大規模なセットを組むことを選びました。米軍基地の滑走路も和歌山県の旧空港を活用し、金網などを設営して再現しました。さらに若者たちが裸足で走るシーンのために、特殊造形で裸足に見える靴を制作するなど、細部まで工夫を凝らしています。

 

(C)真藤順丈/講談社 (C)2025「宝島」製作委員会

矢武:全国キャラバンも実施されていますが、特に沖縄での反応はいかがでしたか。

大友:本土出身の自分が沖縄を題材にすることに大きな緊張感がありましたが、上映後に観客から「ありがとう」という言葉を多くいただきました。祖父母世代が語ることの少なかった屈辱や悔しさを描いた映画に、どこかで伝えていきたいという思いを重ねてくださったのだと思います。その声は非常に印象に残っています。

(C)真藤順丈/講談社 (C)2025「宝島」製作委員会

矢武:一方で、青春物語としての側面もありますね。

大友:そうです。20年にわたり若者たちがどのように生き抜いたのかを描く青春群像劇でもあります。次の世代に伝えたい思いは多くありますが、映画を通じて当時の沖縄に思いを馳せ、登場人物と共に追体験していただきたい。そして『宝島』というタイトルが示す通り、自分たちにとっての“宝”とは何かを観客自身に考えていただければと思います。

大友啓史監督プロフィール

大友啓史監督

1966年、岩手県生まれ。1990年にNHK に入局し、連続テレビ小説「ちゅらさん」シリーズ(01~07)や「ハゲタカ」(07)、NHK大河ドラマ「龍馬伝」(10)などの演出を担当。2009年『ハゲタカ』で映画監督デビューし、11年に独立。以降、『るろうに剣心』(12~21)シリーズや東映創立70周年記念作品『レジェンド&バタフライ』(23)などを手がける。最新作は9月19日(金)公開の映画『宝島』と、Netflixで12月配信予定の『10DANCE』。

映画『宝島』作品情報


(C)真藤順丈/講談社 (C)2025「宝島」製作委員会

映画『宝島』

1952 年のアメリカ統治下の沖縄を舞台に、米軍基地から物資を奪い、住民に分け与える「戦果アギヤー」と呼ばれる若者たちがいた。幼馴染のグスク、ヤマコ、レイ。そして、彼らの英雄的存在であり、リーダーのオンの4人だった。全てを懸けて、のぞんだある襲撃の夜、オンが「予定外の戦果」を手に入れ、突然消息を絶つ。残された3人はそれぞれ刑事、教師、ヤクザの道へ進むが、米軍支配と本土から見捨てられた環境の中、ある事件で感情が爆発。オンの失踪の謎と彼が持ち出した「何か」を追う中、米軍も動き出し、20年後の衝撃の真実が明らかに!

主演に妻夫木聡を迎え、広瀬すず、窪田正孝、永山瑛太ら日本映画界を牽引する豪華俳優陣が集結!!第160回直木賞など三冠に輝いた真藤順丈による傑作小説「宝島」を企画から完成まで6年、2度の撮影延期などの困難を乗り越え、東映とソニー・ピクチャーズによる共同配給のもと実写映画化。

キャプテン・ポップコーン

映画専門ラジオ番組

キャプテン・ポップコーンは、エフエムノースウェーブで毎週木曜日深夜1時半から放送するラジオ番組です。北海道・札幌で映画のお仕事に従事する「まちのえいが屋さん・矢武企画」が気になった映画の情報、映画に関係したまちの情報、そして、映画がもっと近くなるようなお話をお届けします。映画がはじける、映画で踊る夜、きょうも映画と、コミュニケーションしていきましょう!

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