(C)2026 20th Century Studios. All Rights Reserved.
(C)2026 20th Century Studios. All Rights Reserved.

2026.8.30

映画『ラスト・サバイバー』レビュー|世界はこんなにも美しいのに――終末世界に残された希望とは

2026年8月28日(金)公開の映画『ラスト・サバイバー』は、感染症によって人口の大半が失われた世界を舞台にしたサバイバルドラマです。

妻を失ったパイロットのヒッグ(ジェイコブ・エロルディ)は、愛犬ジャスパー、元軍人のバングリー(ジョシュ・ブローリン)とともに、人影の消えた世界で暮らしています。そんなある日、無線から聞こえてきた謎の声。ヒッグはその声の主を探すため、飛行機で外の世界へ向かいます。

リドリー・スコット監督が見つめるのは、荒廃した世界で敵と戦う姿だけではありません。誰もいなくなった妻との寝室、容赦なく侵入者を撃つバングリー、ヒッグのそばを離れないジャスパー。そして、人間が消えても変わらず広がる雄大な自然。それぞれの光景から、ヒッグがなぜまだ生き続けているのかが少しずつ見えてきます。

まず印象に残るのが、終末世界とは思えないほど美しい自然です。山々の稜線、広い空、緑に覆われた大地。文明が崩壊し、人間同士がわずかな物資をめぐって争っていても、自然だけは何事もなかったようにそこにあります。

撮影を手がけるエリック・メッサーシュミットは、そんな風景の中に人間や飛行機を小さく置きます。広大な土地を飛ぶヒッグの機体を見ていると、「世界が終わった」という言葉そのものが少し違って見えてきます。終わりを迎えたのは地球そのものではなく、人間が築いてきた社会なのだと感じさせる。しかも、その人間たちは生き残るために互いを警戒し、ときには命を奪い合っています。雄大な自然が美しければ美しいほど、その中で争う人間の姿が小さく見える。この対比が、本作の終末世界をより印象的なものにしています。

侵入者を撃つバングリーと、引き金を簡単には引けないヒッグ

ヒッグとバングリーは、同じ場所で暮らしながら、生き残るための考え方が大きく異なります。元軍人のバングリーは、侵入者に対してためらうことなく引き金を引きます。相手がこちらを襲う可能性があるなら、襲われる前に排除する。それは冷酷に見えますが、秩序も法律も失われた世界では極めて合理的です。

一方、ヒッグは簡単には人を殺そうとしません。
その違いが面白いのは、ヒッグだけを「善人」として描いているわけではないところ。バングリーの判断によって命を守られる場面もあり、彼のやり方を単純に否定することはできません。それでもヒッグは、目の前の人間を最初から“敵”として割り切ることができない。生き残る確率だけを考えれば、バングリーのほうが正しいのかもしれません。それでもヒッグが同じ選択をしない姿からは、文明が失われても命の重さまで消えてしまうわけではない、という本作の感覚が伝わってきます。
大柄で力強いジェイコブ・エロルディの体格と、どこか傷ついた少年のようにも見える表情のギャップも印象的。強さだけでは捉えきれないヒッグの人物像を、視線や沈黙から感じ取ることができます。

(C)2026 20th Century Studios. All Rights Reserved.

妻と過ごした、今は誰もいない寝室とヒッグの隣にいるジャスパー

ヒッグの喪失を強く感じさせるのが、妻と暮らした家での描写です。妻と過ごした寝室には、もう誰もいません。ヒッグはそのベッドに腰掛け、かつてそこにあった時間を確かめるように静かに過ごします。大げさに泣き崩れるわけではありません。それでも、妻を失った悲しみと、ひとり残された苦しさが表情や姿勢から伝わってきます。

だからこそ、愛犬ジャスパーの存在が効いてきます。ジャスパーは妻との記憶を残す存在でありながら、同時に「今」のヒッグが世話をし、声をかけ、守らなければならない相手でもあります。誰もいない寝室では、ヒッグは過去の記憶と向き合う。一方、ジャスパーといるときには、自分以外の命へ意識が向きます。妻のいないベッド、隣を歩くジャスパー、そして遠くから届く人間の声。

『ラスト・サバイバー』では、こうした具体的な存在がヒッグを生へとつなぎ止めています。自分以外に、まだ気にかけ、守りたい存在がいるからこそ、ヒッグは今日も生き続けているのです。その感覚こそが、本作に残された希望として印象に残りました。

『ラスト・サバイバー』の基本情報

■公開日
2026年8月28日
■原作
「ラスト・サバイバー」(早川書房)
■監督
リドリー・スコット
■原作
ピーター・ヘラー
■脚本
マーク・L・スミス
■出演
ジェイコブ・エロルディ、ジョシュ・ブローリン
マーガレット・クアリー、アリソン・ジャネイ
ガイ・ピアース
■配給
ウォルト・ディズニー・ジャパン 
■公式サイト
https://www.20thcenturystudios.jp/movies/last-survivor

(C)2026 20th Century Studios. All Rights Reserved.

まず印象に残るのが、終末世界とは思えないほど美しい自然です。山々の稜線、広い空、緑に覆われた大地。文明が崩壊し、人間同士がわずかな物資をめぐって争っていても、自然だけは何事もなかったようにそこにあります。

撮影を手がけるエリック・メッサーシュミットは、そんな風景の中に人間や飛行機を小さく置きます。広大な土地を飛ぶヒッグの機体を見ていると、「世界が終わった」という言葉そのものが少し違って見えてきます。終わりを迎えたのは地球そのものではなく、人間が築いてきた社会なのだと感じさせる。しかも、その人間たちは生き残るために互いを警戒し、ときには命を奪い合っています。雄大な自然が美しければ美しいほど、その中で争う人間の姿が小さく見える。この対比が、本作の終末世界をより印象的なものにしています。

侵入者を撃つバングリーと、引き金を簡単には引けないヒッグ


(C)2026 20th Century Studios. All Rights Reserved.

ヒッグとバングリーは、同じ場所で暮らしながら、生き残るための考え方が大きく異なります。元軍人のバングリーは、侵入者に対してためらうことなく引き金を引きます。相手がこちらを襲う可能性があるなら、襲われる前に排除する。それは冷酷に見えますが、秩序も法律も失われた世界では極めて合理的です。

一方、ヒッグは簡単には人を殺そうとしません。
その違いが面白いのは、ヒッグだけを「善人」として描いているわけではないところ。バングリーの判断によって命を守られる場面もあり、彼のやり方を単純に否定することはできません。それでもヒッグは、目の前の人間を最初から“敵”として割り切ることができない。生き残る確率だけを考えれば、バングリーのほうが正しいのかもしれません。それでもヒッグが同じ選択をしない姿からは、文明が失われても命の重さまで消えてしまうわけではない、という本作の感覚が伝わってきます。
大柄で力強いジェイコブ・エロルディの体格と、どこか傷ついた少年のようにも見える表情のギャップも印象的。強さだけでは捉えきれないヒッグの人物像を、視線や沈黙から感じ取ることができます。

妻と過ごした、今は誰もいない寝室とヒッグの隣にいるジャスパー

ヒッグの喪失を強く感じさせるのが、妻と暮らした家での描写です。妻と過ごした寝室には、もう誰もいません。ヒッグはそのベッドに腰掛け、かつてそこにあった時間を確かめるように静かに過ごします。大げさに泣き崩れるわけではありません。それでも、妻を失った悲しみと、ひとり残された苦しさが表情や姿勢から伝わってきます。

だからこそ、愛犬ジャスパーの存在が効いてきます。ジャスパーは妻との記憶を残す存在でありながら、同時に「今」のヒッグが世話をし、声をかけ、守らなければならない相手でもあります。誰もいない寝室では、ヒッグは過去の記憶と向き合う。一方、ジャスパーといるときには、自分以外の命へ意識が向きます。妻のいないベッド、隣を歩くジャスパー、そして遠くから届く人間の声。

『ラスト・サバイバー』では、こうした具体的な存在がヒッグを生へとつなぎ止めています。自分以外に、まだ気にかけ、守りたい存在がいるからこそ、ヒッグは今日も生き続けているのです。その感覚こそが、本作に残された希望として印象に残りました。

『ラスト・サバイバー』の基本情報


(C)2026 20th Century Studios. All Rights Reserved.

■公開日
2026年8月28日
■原作
「ラスト・サバイバー」(早川書房)
■監督
リドリー・スコット
■原作
ピーター・ヘラー
■脚本
マーク・L・スミス
■出演
ジェイコブ・エロルディ、ジョシュ・ブローリン
マーガレット・クアリー、アリソン・ジャネイ
ガイ・ピアース
■配給
ウォルト・ディズニー・ジャパン 
■公式サイト
https://www.20thcenturystudios.jp/movies/last-survivor

休日のスケジュールが決まっていない方、何を見ようか迷っている方など"ライトな映画ファン"に対して、映画館に出かけて、映画を楽しむことをおすすめします。SASARU movie編集部では、話題性の高い最新映画を中心にその情報や魅力を継続的に発信していきます。

point注目映画一覧(外部サイト)

Spider-Man: Brand New Day

スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ

2026-07-31

愛する人たちを守るために、彼らの記憶から自らの存在を消すという決断をした『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』の出来事から4年。大人になったピーター・パーカーはスパイダーマンとして、ニューヨークの人々を守り、彼らを脅かす犯罪と戦う日々に全力を尽くしていた。そんななか、人々の期待を背負う彼の体に驚くべき身体的変異が起こり始める。同時に、街では姿なき不可解な犯罪が頻発。“親愛なる隣人”に、かつて直面したことのない大きな脅威が迫る──。

Minions & Monsters

ミニオンズ&モンスターズ

2026-08-07

最強最悪のボスを求めて旅するミニオンズがたどり着いたのは夢あふれるハリウッドの世界。ひょんなことから自分たちでモンスター映画を作ろうと本物のモンスターを召喚するが…超危険なヤツらが次々と解き放たれ、街は大パニックに!さらに仲間割れまで勃発し、ミニオンズ史上最大のピンチが訪れる。大切な仲間と力を合わせれば…きっと世界を救える…ハズ!?

The Dog Stars

ラスト・サバイバー

2026-08-28

謎のパンデミックにより人口の大半が失われ、生き残った者たちが奪い合いを繰り広げる荒廃した世界。パイロットのヒッグは、元軍人のバングリーと共同戦線を張ることで日々を生き延びていた。心の拠り所は、愛犬ジャスパーの存在と亡き妻の記憶だけ。そんなある日、彼のもとに無線を通じて謎の声が届く。世界の終わりになお希望が残されているかもしれないと考えたヒッグは、その声に導かれるように、未知の空へと飛び立つ決意を固める。だがその先に広がっていたのは、凶暴な動物や容赦ない襲撃者がはびこる、殺すか殺されるかの過酷な現実だった。

The End of Oak Street

オークストリートの異変

2026-08-14

郊外の住宅地に暮らすデニースとグレッグは夫婦仲がギクシャクしており、子供たちも気をもんでいた。しかし町が深夜に謎の閃光に包まれ、翌朝 目覚めると信じられない事態になっていた。

劇場版 魔法少女まどか☆マギカ〈ワルプルギスの廻天〉

劇場版 魔法少女まどか☆マギカ〈ワルプルギスの廻天〉

2026-08-28

『叛逆の物語』の事件を経て、世界は表向き均衡を取り戻したかに見えた。しかし、その平和はあまりにも脆い。ワルプルギスの夜にまつわる新たな脅威が姿を現し始めたとき、暁美ほむらは自らが下した選択の代償と向き合うことになる——まどかを守るために、自分はどこまで踏み込む覚悟があるのか。