(C)2024 Focus Features LLC. All Rights Reserved. (C)Universal Pictures
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2025.3.18

シンデレラストーリーのその先へ。アカデミー賞5冠!甘く切ない社会の光と影を描く|ANORA アノーラ

アカデミー賞5部門(作品賞、編集賞、主演女優賞、監督賞、脚本賞)を制覇した話題作『ANORA アノーラ』。ストリッパーのアノーラ(通称アニー)がロシアの大富豪の息子と恋に落ちる、誰もが憧れるシンデレラ・ストーリー…かと思いきや、現実はそう甘くありません!その衝撃的な内容に、公開から連日SNSは騒然。SASARU movie編集部が、この話題作の魅力を徹底解剖!
 

『ANORA アノーラ』の気になるストーリー


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ニューヨークでストリップダンサーをしながら暮らすアニーは、職場のクラブでロシア人の御曹司、イヴァンと出会います。彼がロシアに帰るまでの7日間、1万5000ドルで“契約彼女”になったアニー。パーティーにショッピング、贅沢三昧の日々を過ごした2人は休暇の締めくくりにラスベガスの教会で衝動的に結婚!幸せ絶頂の二人でしたが、息子が娼婦と結婚したとの噂を聞いたロシアにいる両親は猛反対。結婚を阻止すべく、屈強な男たちを息子の邸宅へと送り込みます。ほどなくして、イヴァンの両親がロシアから到着。空から舞い降りてきた厳しい現実を前に、アニーの物語の第二章が幕を開ける――。

マイキー・マディソンの圧倒的な演技に魅了されること間違いなし!

主人公・アニーを演じたマイキー・マディソンは、その奔放さと繊細さを併せ持つ演技で圧倒的な存在感を放っています。

ストリッパーの妖艶さ、恋する女の子の可愛らしさ、そして現実の厳しさと戦う力強さ。様々な表情を見せてくれる彼女から目が離せない!アニーの気持ちが徐々に変わっていく様子がリアルで、思わず感情移入してしまいます。

多面性のあるキャラクターを見事に演じ切ったマイキー・マディソン。彼女の演技を見れば、なぜアカデミー主演女優賞を受賞したのかが分かるはず。

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ショーン・ベイカー監督の視点と才能が存分に発揮された作品


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『タンジェリン』(15)や『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』(17)で知られるショーン・ベイカー監督。今回もアメリカ社会の声なき声をリアルに描き出しています。ショーン・ベイカー監督らしい、社会の片隅で生きる人々へのまなざしは鋭くも温かく、息をのむような展開に気が付けばスクリーンに釘付けになります。

また、これまでの作品が社会の裏側に迫る視点を持っていたのに対し、本作には洗練された魅力がプラスされています。特に、ニューヨークからラスベガスへと移る場面転換が、社会格差というテーマと重なり、物語に奥行きを与えているように感じます。

また、アメリカの光と影を映し出す映像美と、ストーリーの展開に合わせた音楽も注目したいポイント。クライマックスからエンドロールにかけて、映像と音楽が響き合い、観たあとも心に残る仕上がりになっていますよ。

現代のシンデレラストーリーとリアルな展開に引き込まれる

まるでシンデレラストーリーのような展開に思えますが、本作はただの夢物語で終わらないことが多くの観客を惹きつけているポイント。

華やかな世界の裏にある、差別や偏見という社会の厳しさ、そして愛のカタチ。ストーリーが進むにつれ、若さ故の甘い幻想と等身大のリアルが交錯し、ほろ苦くも切ない展開へと変化していきます。アニーの選択とその先にある運命とは?

また、恋愛映画としてだけでなく、社会の格差に焦点を当てている点も見逃せません。中でも、イヴァンがアニーに1万5000ドルで「契約彼女」になることを提案するシーンは2人の関係が対等ではないことを表しています。そして、ストリッパーという職業を差別し無理やり離婚をさせようとするイヴァンの両親。母親が息子のイヴァンを思い通りにしようとする様子は強い支配力を感じさせます。

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本作は、社会格差や女性の立場に焦点を当て、シンデレラストーリーの先を描くことでエンターテインメント性と社会的なメッセージを表現しています。ストリッパーとして生きるアニーは、華やかな恋の先で、階級の壁や社会の偏見に直面。彼女の選択とその行方は、現代にも通じる問題を投げかけているように感じられます。

アニーが直面する壁は、私たちが生きる社会にも通じるものがあります。現在、アメリカではDEI(※1)の取り組みでもある多様性・公平性への対応が縮小・廃止の動きが広がっています。アニーが受けた差別や偏見は、映画の中だけの話ではなく、私たちの社会にも確かに存在しています。日本ではまだ十分に浸透しきれていないDEIですが、本作を通じて社会格差や多様性への関心を高めるきっかけになればと筆者は考えています。
 
現代社会の不平等や格差の問題を浮き彫りにする本作は、今観るべき1本。また、この作品は歴代のアカデミー賞と比べるとエンターテインメント性が加わったことで、少しライトに鑑賞できる作品でもあります。感情が揺さぶられ、観終わったあとには色々と考えさせられる映画をぜひ、劇場で体感してください!

※DEIとは、ダイバーシティ(多様性)、エクイティ(公平性)、インクルージョン(包括性)の頭文字を取った言葉です。組織や社会において、多様性を尊重し、すべての人を包摂的な環境で受け入れることを意味しています。
 

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『ANORA アノーラ』の基本情報


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■タイトル:『ANORA アノーラ』 

■公開日:全国公開中

■監督・脚本・編集:ショーン・ベイカー

■製作:ショーン・ベイカー、アレックス・ココ、サマンサ・クァン

■出演:マイキー・マディソン、マーク・エイデルシュテイン、ユーリー・ボリソフ、カレン・カラグリアン、ヴァチェ・トヴマシアン

■配給:ビターズ・エンド ユニバーサル映画

■公式サイト:https://www.anora.jp/

『ANORA アノーラ』の気になるストーリー


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ニューヨークでストリップダンサーをしながら暮らすアニーは、職場のクラブでロシア人の御曹司、イヴァンと出会います。彼がロシアに帰るまでの7日間、1万5000ドルで“契約彼女”になったアニー。パーティーにショッピング、贅沢三昧の日々を過ごした2人は休暇の締めくくりにラスベガスの教会で衝動的に結婚!幸せ絶頂の二人でしたが、息子が娼婦と結婚したとの噂を聞いたロシアにいる両親は猛反対。結婚を阻止すべく、屈強な男たちを息子の邸宅へと送り込みます。ほどなくして、イヴァンの両親がロシアから到着。空から舞い降りてきた厳しい現実を前に、アニーの物語の第二章が幕を開ける――。

マイキー・マディソンの圧倒的な演技に魅了されること間違いなし!


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主人公・アニーを演じたマイキー・マディソンは、その奔放さと繊細さを併せ持つ演技で圧倒的な存在感を放っています。

ストリッパーの妖艶さ、恋する女の子の可愛らしさ、そして現実の厳しさと戦う力強さ。様々な表情を見せてくれる彼女から目が離せない!アニーの気持ちが徐々に変わっていく様子がリアルで、思わず感情移入してしまいます。

多面性のあるキャラクターを見事に演じ切ったマイキー・マディソン。彼女の演技を見れば、なぜアカデミー主演女優賞を受賞したのかが分かるはず。

ショーン・ベイカー監督の視点と才能が存分に発揮された作品


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『タンジェリン』(15)や『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』(17)で知られるショーン・ベイカー監督。今回もアメリカ社会の声なき声をリアルに描き出しています。ショーン・ベイカー監督らしい、社会の片隅で生きる人々へのまなざしは鋭くも温かく、息をのむような展開に気が付けばスクリーンに釘付けになります。

また、これまでの作品が社会の裏側に迫る視点を持っていたのに対し、本作には洗練された魅力がプラスされています。特に、ニューヨークからラスベガスへと移る場面転換が、社会格差というテーマと重なり、物語に奥行きを与えているように感じます。

また、アメリカの光と影を映し出す映像美と、ストーリーの展開に合わせた音楽も注目したいポイント。クライマックスからエンドロールにかけて、映像と音楽が響き合い、観たあとも心に残る仕上がりになっていますよ。

現代のシンデレラストーリーとリアルな展開に引き込まれる


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まるでシンデレラストーリーのような展開に思えますが、本作はただの夢物語で終わらないことが多くの観客を惹きつけているポイント。

華やかな世界の裏にある、差別や偏見という社会の厳しさ、そして愛のカタチ。ストーリーが進むにつれ、若さ故の甘い幻想と等身大のリアルが交錯し、ほろ苦くも切ない展開へと変化していきます。アニーの選択とその先にある運命とは?

また、恋愛映画としてだけでなく、社会の格差に焦点を当てている点も見逃せません。中でも、イヴァンがアニーに1万5000ドルで「契約彼女」になることを提案するシーンは2人の関係が対等ではないことを表しています。そして、ストリッパーという職業を差別し無理やり離婚をさせようとするイヴァンの両親。母親が息子のイヴァンを思い通りにしようとする様子は強い支配力を感じさせます。

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本作は、社会格差や女性の立場に焦点を当て、シンデレラストーリーの先を描くことでエンターテインメント性と社会的なメッセージを表現しています。ストリッパーとして生きるアニーは、華やかな恋の先で、階級の壁や社会の偏見に直面。彼女の選択とその行方は、現代にも通じる問題を投げかけているように感じられます。

アニーが直面する壁は、私たちが生きる社会にも通じるものがあります。現在、アメリカではDEI(※1)の取り組みでもある多様性・公平性への対応が縮小・廃止の動きが広がっています。アニーが受けた差別や偏見は、映画の中だけの話ではなく、私たちの社会にも確かに存在しています。日本ではまだ十分に浸透しきれていないDEIですが、本作を通じて社会格差や多様性への関心を高めるきっかけになればと筆者は考えています。
 

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現代社会の不平等や格差の問題を浮き彫りにする本作は、今観るべき1本。また、この作品は歴代のアカデミー賞と比べるとエンターテインメント性が加わったことで、少しライトに鑑賞できる作品でもあります。感情が揺さぶられ、観終わったあとには色々と考えさせられる映画をぜひ、劇場で体感してください!

※DEIとは、ダイバーシティ(多様性)、エクイティ(公平性)、インクルージョン(包括性)の頭文字を取った言葉です。組織や社会において、多様性を尊重し、すべての人を包摂的な環境で受け入れることを意味しています。
 

『ANORA アノーラ』の基本情報


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■タイトル:『ANORA アノーラ』 

■公開日:全国公開中

■監督・脚本・編集:ショーン・ベイカー

■製作:ショーン・ベイカー、アレックス・ココ、サマンサ・クァン

■出演:マイキー・マディソン、マーク・エイデルシュテイン、ユーリー・ボリソフ、カレン・カラグリアン、ヴァチェ・トヴマシアン

■配給:ビターズ・エンド ユニバーサル映画

■公式サイト:https://www.anora.jp/

早川真澄

ライター・編集者

北海道の情報誌の編集者として勤務し映画や観光、人材など地域密着の幅広いジャンルの制作を手掛ける。現在は編集プロダクションを運営し雑誌、webなど媒体を問わず企画制作を行っています。

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