2025.5.18

猫背が決め手!?林田浩川監督が札幌で語った撮影の裏側ー『タイクーン』に宿る父の記憶、窪塚洋介との現場

5月17日(土)、札幌のサツゲキにて、BABEL LABEL設立15周年を記念した全国ミニシアターキャラバンの一環として、短編映画『タイクーン』の舞台挨拶が開催されました。本作は、12本の短編から構成されるオムニバス映画『DIVOC-12』の一編で、ソニーによるクリエイター支援プロジェクトから生まれた作品です。

登壇したのは、本作の脚本・監督を務めたBABEL LABEL所属の林田浩川さんと、主演を務めた小野翔平さん。林田監督が自身のルーツを投影した本作の裏話やキャスティング秘話まで飛び出した本イベント。映画に込めた想い、ミニシアターへの敬意、そして撮影現場でのリアルなエピソードまで、たっぷりとご紹介します。

『DIVOC-12』とは?


(C)2021 Sony Pictures Entertainment (Japan) Inc. All rights reserved.

パンデミックの時代に立ち上がった、クリエイター支援の短編映画プロジェクト『DIVOC-12』は、コロナ禍で映像制作が困難となった状況を背景に、ソニーが立ち上げたクリエイター支援プロジェクトです。
12名の監督による短編映画を収録したオムニバス形式で、本作『タイクーン』もその1本として生まれました。

サツゲキでは5月16日(金)から22日(木)まで、『DIVOC-12』(21)を含め、『青春18×2 君へと続く道』(24)、『ヤクザと家族 The Family』(21)といったBABEL LABELの代表作が日替わりで上映されます。
それぞれ異なるジャンルと手法で描かれた作品群を通じて、BABEL LABELがこの15年間で育んできた多彩な表現の幅を感じ取ることができるはずです。

▼上映スケジュールは以下をチェック
BABEL LABEL設立15周年記念!人気作を札幌で一挙上映!林田浩川監督の舞台挨拶も開催

 

ミニシアターの“距離感”が作品を深くする

―――ミニシアターの思い出や魅力を教えてください。

林田:子どもの頃、横浜のシネマ・ジャック&ベティというミニシアターによく通っていました。 最近あらためて思うのは、ミニシアターは人との距離が近いんですよね。誰が隣にいるかがわかるくらいの空気感。みんなで映画を観ているという感覚が、大きな劇場よりも強く残ると思います。 地域とのつながりも強くて、映画体験がよりパーソナルになる場所だと感じています。

小野:この劇場は、札幌プラザ2・5(旧東宝プラザ)から引き継がれたものだと知って感動しました。 古き良きものが大切にされている。その継続がとても素敵だと思いました。

【補足】プロジェクターやスクリーンは新設。お下がりは椅子や劇場内の内装のみ

『タイクーン』に込めたパーソナルな原点

―――『DIVOC-12』という企画への参加について、どのような経緯があったのでしょうか?

林田:コロナ禍で多くの映像制作が止まる中、ソニー・ピクチャーズさんから「何かできないか」と相談があり、立ち上がったのがこのプロジェクトです。
藤井道人監督から短編の話をいただいて、僕も"もしかしたらこれが最後になるかもしれない"という気持ちで参加しました。その想いから1番パーソナルなものを作りたいなと思い『タイクーン』を制作しました。
父がバブル期に難民として日本へやって来たこともあり、活気ある中華街に、貧困の中からやってきた人が放り込まれたとき、何を感じたのか。その視点をもとにしています。

キャスティングの決め手は…猫背?

―――小野さんが今回演じられた主人公「シン」は、中国から移住した青年という設定ですが、役作りで意識されたことを教えてください。

小野:僕自身、日本生まれですが母が中国人で、バブル期の後に出稼ぎで来日しています。その背景が自分と似ていたことで、まず役に入りやすかったですね。
それからは毎週のように横浜中華街を歩いて、監督と現地の空気を感じながら役作りをしました。先程、知ったのですが僕がオーディションに受かった理由のひとつが“猫背”だったそうで(笑)。監督のお父様の姿と重なったと聞いて驚きました。

林田:実は、小野くんの猫背が父にそっくりだったんです(笑)。その瞬間に「この人だ」と思って即決しました。シェフとして働いていた父の背中に、彼の姿が重なって見えたんです。

小野:撮影前には近所の中華料理屋さんでアルバイトをして、包丁で指を切ったこともありました。
セリフの練習は、片言の日本語を話す叔父に電話で毎晩付き合ってもらったりもしましたね。

窪塚洋介が背中を押してくれた撮影秘話


(C)2021 Sony Pictures Entertainment (Japan) Inc. All rights reserved.

―――窪塚洋介さんとの共演シーンも印象的でした。現場でのエピソードはありますか?

小野:とにかくかっこよくて、タバコを吸うシーンはカットがかかるたびに「かっこいいですね…」と自然に声が漏れてしまうくらいでした。

林田:あのシーン、実は船の揺れで背景の文字がズレてしまって、何度も撮り直しました。6時間くらい撮影が押してしまって、「もうダメだ」と落ち込んでいたときに、
窪塚さんが「時間なんて気にせず、好きにやりなよ」と声をかけてくれて。
本当に救われた瞬間でした。

“林田組”、じわり始動中?― 作品を通じた信頼関係

舞台挨拶では、観客からの質問に答えるティーチインも実施されました。

―――今後、藤井監督と横浜流星さんのような“林田組”を築いていきたいと思いますか?

林田:“林田組”はまだ発展途上ですが、一緒に作品をつくった俳優とはまたやりたいと思っています。実際に小野くんには、ドラマ「インフォーマ -闇を生きる獣たち-」(23)にも出演してもらいました。 信頼できる方とは、今後もご一緒したいです。

小野: また呼んでもらえるように頑張ります!

「またここで会いたい」――観客と映画の約束

ミニシアターでしか味わえない“距離の近さ”は、映画体験をより深く、個人的なものにしてくれます。
林田浩川監督がコロナ禍の中で見つめ直した自身のルーツをもとに描いた『タイクーン』には、10分という短さの中に、静かなリアルが息づいていました。
主演の小野翔平さんは、その想いを真摯に受け取り、役として体現することで作品に深みを与えています。

 林田監督は、次は新作を携えて札幌に戻ってきたいと話していました。会場に集まった観客のまなざしと、言葉のひとつひとつが、これから紡がれていく物語につながっていく。
そう思わせてくれる、温かく誠実なひとときでした。

『DIVOC-12』とは?


(C)2021 Sony Pictures Entertainment (Japan) Inc. All rights reserved.

パンデミックの時代に立ち上がった、クリエイター支援の短編映画プロジェクト『DIVOC-12』は、コロナ禍で映像制作が困難となった状況を背景に、ソニーが立ち上げたクリエイター支援プロジェクトです。
12名の監督による短編映画を収録したオムニバス形式で、本作『タイクーン』もその1本として生まれました。

サツゲキでは5月16日(金)から22日(木)まで、『DIVOC-12』(21)を含め、『青春18×2 君へと続く道』(24)、『ヤクザと家族 The Family』(21)といったBABEL LABELの代表作が日替わりで上映されます。
それぞれ異なるジャンルと手法で描かれた作品群を通じて、BABEL LABELがこの15年間で育んできた多彩な表現の幅を感じ取ることができるはずです。

▼上映スケジュールは以下をチェック
BABEL LABEL設立15周年記念!人気作を札幌で一挙上映!林田浩川監督の舞台挨拶も開催

 

ミニシアターの“距離感”が作品を深くする

―――ミニシアターの思い出や魅力を教えてください。

林田:子どもの頃、横浜のシネマ・ジャック&ベティというミニシアターによく通っていました。 最近あらためて思うのは、ミニシアターは人との距離が近いんですよね。誰が隣にいるかがわかるくらいの空気感。みんなで映画を観ているという感覚が、大きな劇場よりも強く残ると思います。 地域とのつながりも強くて、映画体験がよりパーソナルになる場所だと感じています。

小野:この劇場は、札幌プラザ2・5(旧東宝プラザ)から引き継がれたものだと知って感動しました。 古き良きものが大切にされている。その継続がとても素敵だと思いました。

【補足】プロジェクターやスクリーンは新設。お下がりは椅子や劇場内の内装のみ

『タイクーン』に込めたパーソナルな原点

―――『DIVOC-12』という企画への参加について、どのような経緯があったのでしょうか?

林田:コロナ禍で多くの映像制作が止まる中、ソニー・ピクチャーズさんから「何かできないか」と相談があり、立ち上がったのがこのプロジェクトです。
藤井道人監督から短編の話をいただいて、僕も"もしかしたらこれが最後になるかもしれない"という気持ちで参加しました。その想いから1番パーソナルなものを作りたいなと思い『タイクーン』を制作しました。
父がバブル期に難民として日本へやって来たこともあり、活気ある中華街に、貧困の中からやってきた人が放り込まれたとき、何を感じたのか。その視点をもとにしています。

キャスティングの決め手は…猫背?

―――小野さんが今回演じられた主人公「シン」は、中国から移住した青年という設定ですが、役作りで意識されたことを教えてください。

小野:僕自身、日本生まれですが母が中国人で、バブル期の後に出稼ぎで来日しています。その背景が自分と似ていたことで、まず役に入りやすかったですね。
それからは毎週のように横浜中華街を歩いて、監督と現地の空気を感じながら役作りをしました。先程、知ったのですが僕がオーディションに受かった理由のひとつが“猫背”だったそうで(笑)。監督のお父様の姿と重なったと聞いて驚きました。

林田:実は、小野くんの猫背が父にそっくりだったんです(笑)。その瞬間に「この人だ」と思って即決しました。シェフとして働いていた父の背中に、彼の姿が重なって見えたんです。

小野:撮影前には近所の中華料理屋さんでアルバイトをして、包丁で指を切ったこともありました。
セリフの練習は、片言の日本語を話す叔父に電話で毎晩付き合ってもらったりもしましたね。

窪塚洋介が背中を押してくれた撮影秘話


(C)2021 Sony Pictures Entertainment (Japan) Inc. All rights reserved.

―――窪塚洋介さんとの共演シーンも印象的でした。現場でのエピソードはありますか?

小野:とにかくかっこよくて、タバコを吸うシーンはカットがかかるたびに「かっこいいですね…」と自然に声が漏れてしまうくらいでした。

林田:あのシーン、実は船の揺れで背景の文字がズレてしまって、何度も撮り直しました。6時間くらい撮影が押してしまって、「もうダメだ」と落ち込んでいたときに、
窪塚さんが「時間なんて気にせず、好きにやりなよ」と声をかけてくれて。
本当に救われた瞬間でした。

“林田組”、じわり始動中?― 作品を通じた信頼関係

舞台挨拶では、観客からの質問に答えるティーチインも実施されました。

―――今後、藤井監督と横浜流星さんのような“林田組”を築いていきたいと思いますか?

林田:“林田組”はまだ発展途上ですが、一緒に作品をつくった俳優とはまたやりたいと思っています。実際に小野くんには、ドラマ「インフォーマ -闇を生きる獣たち-」(23)にも出演してもらいました。 信頼できる方とは、今後もご一緒したいです。

小野: また呼んでもらえるように頑張ります!

「またここで会いたい」――観客と映画の約束

ミニシアターでしか味わえない“距離の近さ”は、映画体験をより深く、個人的なものにしてくれます。
林田浩川監督がコロナ禍の中で見つめ直した自身のルーツをもとに描いた『タイクーン』には、10分という短さの中に、静かなリアルが息づいていました。
主演の小野翔平さんは、その想いを真摯に受け取り、役として体現することで作品に深みを与えています。

 林田監督は、次は新作を携えて札幌に戻ってきたいと話していました。会場に集まった観客のまなざしと、言葉のひとつひとつが、これから紡がれていく物語につながっていく。
そう思わせてくれる、温かく誠実なひとときでした。

休日のスケジュールが決まっていない方、何を見ようか迷っている方など"ライトな映画ファン"に対して、映画館に出かけて、映画を楽しむことをおすすめします。SASARU movie編集部では、話題性の高い最新映画を中心にその情報や魅力を継続的に発信していきます。

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