(C)2024 TELEFONICA AUDIOVISUAL DIGITAL, S.L.U.
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2025.9.16

“レストラン『ムガリッツ』“本当にレストラン?アートで異質な空間を描いたドキュメンタリー映画レビュー

レストランを映しているはずなのに、まるで実験室やアート作品を観ているよう。ドキュメンタリー映画『ムガリッツ』は、不協和音のような音たちと共に常識を覆すレストランの姿を映し出します。食べることが大好きな私でも、30~40皿で構成されているというコースを食べ切れるのかと観ながら思わず想像してしまうほど驚異的。それでも、不思議と「味わってみたい」という欲望が勝る料理の数々とその背景に引き込まれます。スクリーンの向こう側にある異世界に、私も1度足を踏み入れてみたくなりました。第72回サン・セバスティアン国際映画祭のカリナリーシネマ部門でベストフィルムを受賞しているドキュメンタリー作品が9月19日(金)、いよいよ日本で公開されます。

レストラン?それともミュージアム?


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舞台は、スペイン・バスク州ギプスコア県エレンテリアという自然豊かな内陸部にあるレストラン『ムガリッツ』。1998年、蔦の這う農家を改装して誕生した赤い屋根のお店は、2005年にミシュラン2つ星を獲得。また、「世界のベストレストラン50」において14年連続で世界のトップ10にランクインしている唯一のレストランです。映像を観ていると、ムガリッツはただの食事の場ではなく、研究所であり、美術館であり、キャンプ場のようにも感じてきます。“半年間の営業と半年間の研究”という常識破りのサイクル。料理を超えて、体験そのものを創り出す場所の姿が描かれます。「これはドキュメンタリーなのか?それともフィクションなのか?」と疑いたくなるほど異質な世界観が広がっているのです。

日常の音が誘う特別な空間

監督はムガリッツの常連客でもあるパコ・プラサ。音楽を担当したのは、パコと何度もタッグを組んできた『REC3/レック3 ジェネシス』をはじめ、ホラー映画製作の経験を持つミケル・サラス。彼が生み出す、キッチン道具やフォークを使った音は、美食映画にありがちな軽やかな音楽とは対照的で、不協和音のように耳に引っかかります。映画の序盤から流れてくるこの音に少しばかりの“違和感”を感じました。単なる美食映画ではなく、ある意味“狂気”すらも感じさせる音や空間が、ムガリッツを唯一無二の存在にしているように思います。
 

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ムガリッツの心揺さぶる料理たち


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先に述べたように、コースに出てくる料理はなんと30~40皿。“NO BREAD NO DESSERT”(パンもデザートもない)というコンセプトのもと、ひと皿ごとに手を使って食べるものや、直接口をつけて食べるひと皿など食べ方も異なっていて、「一体どんな感覚になるのだろう」と想像を掻き立てられます。密着した年のテーマは“目に見えないもの”。中には、日本の発酵食品を思わせるものや、茶道を思わせる演出、手裏剣を模したクラッカーなど日本文化へのオマージュも散りばめられています。凍らせた茶葉でつくられた椀、杏とアーモンドの花を対比させた器、逆に普段日本人が食べたことのないような食材を使ったひと皿まで…。驚きと感動、ときに怒りさえ感じてもらえるような料理を目指すという彼らの天才的なひと皿が次々と生まれていく様子から目が離せません。

共同作業が紡ぐ“食の物語”

監督が「レストランや映画製作もチームワークが重要」と語るように、映画からは“チームビルディング”のヒントも受け取れます。オーナーシェフであるアンドニ・ルイス・アドゥリスの考えは「最終決定をくださない、一歩引く、信用と寛容さを持つ…。」ムガリッツの厨房から見えるものは、創造を続けるために必要なこと。強烈なリーダーシップだけではなく、互いの可能性を信じて生み出していく柔軟さが大事なのだと気付かされます。この映画は「食」を超えたアートであり、物語であるかのよう。一生記憶に残るだろうと想像できる体験をスクリーンで垣間見る96分。“おいしそう”というより、とまどいながらも食べてみたい、体験してみたいという気持ちが1番にこみ上げてきます。観終えた時、あなたも“いつかこの異世界に足を踏み入れてみたい”と思わずにいられないはずです。

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映画『ムガリッツ』の作品情報


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公開日:2025年9月19日(金)

監督:パコ・プラサ

脚本:パコ・プラサ マパ・パストール

音楽:ミケル・サラス

撮影:エイドリアン・ヘルナンデス

編集:マパ・パストール

原題:MUGARITZ. NO BREAD NO DESSERT

配給:ギャガ

レストラン?それともミュージアム?


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舞台は、スペイン・バスク州ギプスコア県エレンテリアという自然豊かな内陸部にあるレストラン『ムガリッツ』。1998年、蔦の這う農家を改装して誕生した赤い屋根のお店は、2005年にミシュラン2つ星を獲得。また、「世界のベストレストラン50」において14年連続で世界のトップ10にランクインしている唯一のレストランです。映像を観ていると、ムガリッツはただの食事の場ではなく、研究所であり、美術館であり、キャンプ場のようにも感じてきます。“半年間の営業と半年間の研究”という常識破りのサイクル。料理を超えて、体験そのものを創り出す場所の姿が描かれます。「これはドキュメンタリーなのか?それともフィクションなのか?」と疑いたくなるほど異質な世界観が広がっているのです。

日常の音が誘う特別な空間


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監督はムガリッツの常連客でもあるパコ・プラサ。音楽を担当したのは、パコと何度もタッグを組んできた『REC3/レック3 ジェネシス』をはじめ、ホラー映画製作の経験を持つミケル・サラス。彼が生み出す、キッチン道具やフォークを使った音は、美食映画にありがちな軽やかな音楽とは対照的で、不協和音のように耳に引っかかります。映画の序盤から流れてくるこの音に少しばかりの“違和感”を感じました。単なる美食映画ではなく、ある意味“狂気”すらも感じさせる音や空間が、ムガリッツを唯一無二の存在にしているように思います。
 

ムガリッツの心揺さぶる料理たち


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先に述べたように、コースに出てくる料理はなんと30~40皿。“NO BREAD NO DESSERT”(パンもデザートもない)というコンセプトのもと、ひと皿ごとに手を使って食べるものや、直接口をつけて食べるひと皿など食べ方も異なっていて、「一体どんな感覚になるのだろう」と想像を掻き立てられます。密着した年のテーマは“目に見えないもの”。中には、日本の発酵食品を思わせるものや、茶道を思わせる演出、手裏剣を模したクラッカーなど日本文化へのオマージュも散りばめられています。凍らせた茶葉でつくられた椀、杏とアーモンドの花を対比させた器、逆に普段日本人が食べたことのないような食材を使ったひと皿まで…。驚きと感動、ときに怒りさえ感じてもらえるような料理を目指すという彼らの天才的なひと皿が次々と生まれていく様子から目が離せません。

共同作業が紡ぐ“食の物語”


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監督が「レストランや映画製作もチームワークが重要」と語るように、映画からは“チームビルディング”のヒントも受け取れます。オーナーシェフであるアンドニ・ルイス・アドゥリスの考えは「最終決定をくださない、一歩引く、信用と寛容さを持つ…。」ムガリッツの厨房から見えるものは、創造を続けるために必要なこと。強烈なリーダーシップだけではなく、互いの可能性を信じて生み出していく柔軟さが大事なのだと気付かされます。この映画は「食」を超えたアートであり、物語であるかのよう。一生記憶に残るだろうと想像できる体験をスクリーンで垣間見る96分。“おいしそう”というより、とまどいながらも食べてみたい、体験してみたいという気持ちが1番にこみ上げてきます。観終えた時、あなたも“いつかこの異世界に足を踏み入れてみたい”と思わずにいられないはずです。

映画『ムガリッツ』の作品情報


(C)2024 TELEFONICA AUDIOVISUAL DIGITAL, S.L.U.

公開日:2025年9月19日(金)

監督:パコ・プラサ

脚本:パコ・プラサ マパ・パストール

音楽:ミケル・サラス

撮影:エイドリアン・ヘルナンデス

編集:マパ・パストール

原題:MUGARITZ. NO BREAD NO DESSERT

配給:ギャガ

柴田平美

映画ライター

映画ライター。ねむろ観光大使。UHBの情報番組「いっとこ!」の映画コーナーで俳優や監督のインタビューを6年間担当し、およそ100作品近く携わってきました。私が初めて観た映画は『名探偵コナン 天国へのカウントダウン』(2001)。故郷・根室に映画館がなかったため、観たい映画があると隣町の釧路まで行って観ていました。映画館では、一番後ろの真ん中で、ひとりで観るのが好き。ジャンルは、ラブ・ファンタジー・アクションを中心に、話題作をチェックしています。皆さんの心に残る映画を見つけるきっかけとなれますように。

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