2025.9.18

対メガギラスから25年、手塚昌明監督インタビュー/「特撮のDNA ゴジラ、旭川上陸」今月23日まで

9月23日(火・祝)まで、旭川市科学館サイパル(旭川市宮前1条3丁目)の開館20周年記念特別展として「特撮のDNA ゴジラ、旭川上陸」が絶賛開催中。先日は、来館者が2万人を超え、盛り上がりを見せています。そもそも「特撮のDNA」とは、「ゴジラ」をはじめ、「ガメラ」「ウルトラマン」「仮面ライダー」などに焦点を当て、怪獣やヒーローの造形物、撮影に使われたミニチュア、衣装、映像技術などを展示し、特撮の技術、歴史、文化などを伝えるイベントです。テーマにするコンテンツや展示内容を変え、全国で開催されており、今回、道内初開催となりました。
いよいよ、ラストスパートの本展示会。SASARU movieでは、初日のオープニングセレモニーに駆けつけてくれた手塚昌明監督(『ゴジラ×メガギラス G消滅作戦』等)にキャプテン・ポップコーンこと矢武企画・矢武兄輔がインタビューをしました。


『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』(01)に登場したゴジラの眼。造形の細かさが確認できる。

――初の北海道開催、展示内容はどうでしょう?

何度、見てもバリエーション豊か。各地域で開催される「特撮のDNA」は観ていますが、必ず新しい資料があります。見るたびに「こんなの残っていたんだ!」という発見ですね。膨大なコレクション、資料がありますので、全部一気に見せられる場所はないです。だから、そういう意味では、各展示場での出会い、驚きを大切にしてほしいです。
 
――今回は「メガギラス」の展示物がメインですが、改めて目の前にしていかがでしたか?

あのジオラマは凄いですね。25年経って、ゴジラとメガギラスがまた対峙するんだな、と思って。そしたら、メガニューラは何十匹も集まり、ビルにも群がり、素晴らしいね! あれは量産用で実際に撮影で使用していたものです。実際に動かすのはピアノ線で操演するんですが、今回の展示のは、ある雑誌で販売していた物。ゴジラの足元に踏み潰されたメガニューラがあって、驚きましたね。これらはモンスターズ(特殊造形の制作会社)の若狭(新一さん)がいっぱい出してくれたんだね。
 

巨大ジオラマ、所々に旭川要素も


『ゴジラVSスペースゴジラ』(94)に登場したリトルゴジラ

――特撮のDNAは展示物との距離が近いことが魅力ですが、今回は展示物の後ろ、裏側も見れますよね、珍しいですか? 

見るだけじゃなくて、素材の匂いとかも感じました。
あれは貴重です。通常は、壁を背景にして資料が展示してあります。今回は展示物の裏側へ回ってみることができるというのは今までなかったと思います、驚きました。本当に距離が近い。「リトルゴジラ」はもう触れる距離でした。「特撮のDNA」は基本、写真撮影が全部OKなのでカメラに納めてほしいですね。
 
――淳くん(劇中に登場する少年の役名)が捨てた卵もありましたね。実は排水溝を見ると、あのシーンが今でも甦ります。そこに捨てなきゃ、羽化は回避できたのに、って・・・。

メガヌロンの卵も本物ですね、アクション用のは自宅(手塚家)にあります(笑)。あの卵の登場シーンですが、山梨の山の中から東京へ持ってきた淳くんが、あのままゴミステーションに捨てておけば何にも起こらなかったんです。近所の方に注意されて、変な正義感を持った。まぁ、回収日以外は捨ててはいけないんですけどね。怪獣映画はこういうことで惨事になることが多いです。でも現実の話ですよね、よくあること。

――怪獣映画って、些細なことを気にかけて、大きな災いを呼びますよね(笑)。
 

メガヌロンの卵

――ご自身が監督された作品の中で「ここは“先輩方のDNA”を凄く受け継いでいる!」と思うところはありますか??

特に『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』(03)なんですが、人形のミニチュアを特撮美術の三池(敏夫)ちゃんに作ってもらっているんですね。カメーバの漂着シーン、あと機龍(メカゴジラ)の格納庫のところではアームから人が降りてくるんですが、そこにも乗せています。私が子どものころに観た円谷英二さんの映画では、大和でも輸送船でも人(ミニチュアの人形)が乗っているのがとても嬉しかったんですよ。つまり、合成ではなくて“作り物を作って置いている”んです。それは小学生の自分でも感じられました。カメーバのシーン、特撮カットでは、人形を一つ一つ置いてもらって、カメーバの上にも乗せて。本編カットでは、カメーバの背中の人だけを立ち上がらせ、全部シンクロさせました。きっと、円谷さんがやりたくでも、技術的にできなかった表現を自分でやれたな、と思い、嬉しかったですね
――今回、展示はないですが、手塚作品の90式メーサー殺獣光線車は映画の中で印象的でした。

メーサー殺獣光線車のオリジナルは『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』(66)ですね。それを観た時、ずっと感激していて「大きいな〜」と。きちんと車輪や砲塔も動いて、合成も凄かった。でも、その後の作品で登場したメーサー車はちょっと違うんですよね。オシャレになってしまって、パラボラが小さいんです、カッコイイんですけどね。だから、『ゴジラ×メカゴジラ』(02)では、パラボラはオリジナルに近い比率にして、牽引車が引っ張るんだよ、と。
牽引車に関しては、1分の1サイズをつくってワイパーを動かして。ミニチュアでもワイパーは動いてますからね。それも特撮の場合は、ハイスピードになるので、おかしくならないように3倍ぐらいに合わせています。
 

『海底軍艦』(63)の轟天号


モスラの卵の殻など

――昨年はゴジラは70周年。長年愛されるキャラクター、特撮文化に感じること、伝えたいことは??

また「ゴジラ」が脚光を浴びて、世界的なヒットもして、ハリウッドでも制作されているというのはありがたいことです。そのシリーズの中で、3作品も監督ができたことは誇りですし観直したら、もっと面白いと思います。そこから、いまの子どもたちが感じるものがあると嬉しいですよね。ずっと続いてきている「ゴジラ」は凄いし、円谷英二さん、本多猪四郎さん、田中友幸、東宝も凄いと思います!
 
――最後に。もし北海道に怪獣を出現させるとしたら、どこに何を出現させたいですか??

広すぎてね(笑)。北海道に行くなら、有名なところを壊さなきゃいけない。いま、一番新しい北海道の名所はどこですか? 北広島市のエスコンフィールドHOKKAIDOですか? 球場をちょっと掘ればなんでもできちゃいますよ、勢いだけですよね。出現させたい怪獣なら、やっぱりメジャーなゴジラですね。ゴジラが有名な街に出現して、新しくできたランドマークを壊すというのが、一番面白いかな。
 
手塚昌明
1955年、栃木県生まれ。
[監督したゴジラ映画]『ゴジラ×メガギラス G消滅作戦』(00)、『ゴジラ×メカゴジラ』(02)、『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』(03)
 

【展示情報】

■開催期間:7月11日(金)~9月23日(火・祝)

■開館時間:午前9時30分~午後5時00分

■開催場所:旭川市科学館サイパル(旭川市宮前1条3丁目)

■当日券:大人1,400円/高校・大学生800円/小・中学生500円/親子ペア1,600円(大人1名+小中学生1名)※親子でなくてもご使用いただけます
 
詳細は旭川市科学館サイパルの特設サイトをご確認ください。
https://www.city.asahikawa.hokkaido.jp/science/20/tokusatsu.html
 
TM &  (C) TOHO CO., LTD.   (C) 特撮のDNA製作委員会 

(C) YBK3 2025

『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』(01)に登場したゴジラの眼。造形の細かさが確認できる。

――初の北海道開催、展示内容はどうでしょう?

何度、見てもバリエーション豊か。各地域で開催される「特撮のDNA」は観ていますが、必ず新しい資料があります。見るたびに「こんなの残っていたんだ!」という発見ですね。膨大なコレクション、資料がありますので、全部一気に見せられる場所はないです。だから、そういう意味では、各展示場での出会い、驚きを大切にしてほしいです。
 

巨大ジオラマ、所々に旭川要素も

――今回は「メガギラス」の展示物がメインですが、改めて目の前にしていかがでしたか?

あのジオラマは凄いですね。25年経って、ゴジラとメガギラスがまた対峙するんだな、と思って。そしたら、メガニューラは何十匹も集まり、ビルにも群がり、素晴らしいね! あれは量産用で実際に撮影で使用していたものです。実際に動かすのはピアノ線で操演するんですが、今回の展示のは、ある雑誌で販売していた物。ゴジラの足元に踏み潰されたメガニューラがあって、驚きましたね。これらはモンスターズ(特殊造形の制作会社)の若狭(新一さん)がいっぱい出してくれたんだね。
 

『ゴジラVSスペースゴジラ』(94)に登場したリトルゴジラ

――特撮のDNAは展示物との距離が近いことが魅力ですが、今回は展示物の後ろ、裏側も見れますよね、珍しいですか? 

見るだけじゃなくて、素材の匂いとかも感じました。
あれは貴重です。通常は、壁を背景にして資料が展示してあります。今回は展示物の裏側へ回ってみることができるというのは今までなかったと思います、驚きました。本当に距離が近い。「リトルゴジラ」はもう触れる距離でした。「特撮のDNA」は基本、写真撮影が全部OKなのでカメラに納めてほしいですね。
 

メガヌロンの卵

――淳くん(劇中に登場する少年の役名)が捨てた卵もありましたね。実は排水溝を見ると、あのシーンが今でも甦ります。そこに捨てなきゃ、羽化は回避できたのに、って・・・。

メガヌロンの卵も本物ですね、アクション用のは自宅(手塚家)にあります(笑)。あの卵の登場シーンですが、山梨の山の中から東京へ持ってきた淳くんが、あのままゴミステーションに捨てておけば何にも起こらなかったんです。近所の方に注意されて、変な正義感を持った。まぁ、回収日以外は捨ててはいけないんですけどね。怪獣映画はこういうことで惨事になることが多いです。でも現実の話ですよね、よくあること。

――怪獣映画って、些細なことを気にかけて、大きな災いを呼びますよね(笑)。
 
――ご自身が監督された作品の中で「ここは“先輩方のDNA”を凄く受け継いでいる!」と思うところはありますか??

特に『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』(03)なんですが、人形のミニチュアを特撮美術の三池(敏夫)ちゃんに作ってもらっているんですね。カメーバの漂着シーン、あと機龍(メカゴジラ)の格納庫のところではアームから人が降りてくるんですが、そこにも乗せています。私が子どものころに観た円谷英二さんの映画では、大和でも輸送船でも人(ミニチュアの人形)が乗っているのがとても嬉しかったんですよ。つまり、合成ではなくて“作り物を作って置いている”んです。それは小学生の自分でも感じられました。カメーバのシーン、特撮カットでは、人形を一つ一つ置いてもらって、カメーバの上にも乗せて。本編カットでは、カメーバの背中の人だけを立ち上がらせ、全部シンクロさせました。きっと、円谷さんがやりたくでも、技術的にできなかった表現を自分でやれたな、と思い、嬉しかったですね

『海底軍艦』(63)の轟天号

――今回、展示はないですが、手塚作品の90式メーサー殺獣光線車は映画の中で印象的でした。

メーサー殺獣光線車のオリジナルは『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』(66)ですね。それを観た時、ずっと感激していて「大きいな〜」と。きちんと車輪や砲塔も動いて、合成も凄かった。でも、その後の作品で登場したメーサー車はちょっと違うんですよね。オシャレになってしまって、パラボラが小さいんです、カッコイイんですけどね。だから、『ゴジラ×メカゴジラ』(02)では、パラボラはオリジナルに近い比率にして、牽引車が引っ張るんだよ、と。
牽引車に関しては、1分の1サイズをつくってワイパーを動かして。ミニチュアでもワイパーは動いてますからね。それも特撮の場合は、ハイスピードになるので、おかしくならないように3倍ぐらいに合わせています。
 

モスラの卵の殻など

――昨年はゴジラは70周年。長年愛されるキャラクター、特撮文化に感じること、伝えたいことは??

また「ゴジラ」が脚光を浴びて、世界的なヒットもして、ハリウッドでも制作されているというのはありがたいことです。そのシリーズの中で、3作品も監督ができたことは誇りですし観直したら、もっと面白いと思います。そこから、いまの子どもたちが感じるものがあると嬉しいですよね。ずっと続いてきている「ゴジラ」は凄いし、円谷英二さん、本多猪四郎さん、田中友幸、東宝も凄いと思います!
 
――最後に。もし北海道に怪獣を出現させるとしたら、どこに何を出現させたいですか??

広すぎてね(笑)。北海道に行くなら、有名なところを壊さなきゃいけない。いま、一番新しい北海道の名所はどこですか? 北広島市のエスコンフィールドHOKKAIDOですか? 球場をちょっと掘ればなんでもできちゃいますよ、勢いだけですよね。出現させたい怪獣なら、やっぱりメジャーなゴジラですね。ゴジラが有名な街に出現して、新しくできたランドマークを壊すというのが、一番面白いかな。
 
手塚昌明
1955年、栃木県生まれ。
[監督したゴジラ映画]『ゴジラ×メガギラス G消滅作戦』(00)、『ゴジラ×メカゴジラ』(02)、『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』(03)
 

【展示情報】

■開催期間:7月11日(金)~9月23日(火・祝)

■開館時間:午前9時30分~午後5時00分

■開催場所:旭川市科学館サイパル(旭川市宮前1条3丁目)

■当日券:大人1,400円/高校・大学生800円/小・中学生500円/親子ペア1,600円(大人1名+小中学生1名)※親子でなくてもご使用いただけます
 
詳細は旭川市科学館サイパルの特設サイトをご確認ください。
https://www.city.asahikawa.hokkaido.jp/science/20/tokusatsu.html
 
TM &  (C) TOHO CO., LTD.   (C) 特撮のDNA製作委員会 

(C) YBK3 2025

矢武兄輔

まちのえいが屋さん/キャプテン・ポップコーン

20歳の1月。札幌映画サークルに入会直後、さぬき映画祭への参加で『踊る大捜査線』の製作陣や深田晃司監督と出逢い、映画界の現実や地方から発信するエンタメの可能性を知る。そこから「映画館へ行く人を増やす」という目標を持ち、カネゴンを呼んでみたり、学生向け媒体をつくったり、休学して東京国際映画祭で勤務、映画館へ就職→退職→「矢武企画」を起業からの今は某局でラジオDJ。 すべては『踊る』の完結が始まりだった。そして、踊るプロジェクト再始動と共に…! ということで、皆さんにとって映画がもっと近くなれますように。

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