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2025.3.14

視える不穏、見えぬ怪奇 30年で10家族を惨殺、暗号を残す殺人鬼vsFBI新米捜査官|ロングレッグス


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独立系ホラー映画として過去10年全米最高興収を記録し、ニコラス・ケイジが製作・出演を兼任した映画『ロングレッグス』が3月14日(金)に日本でも公開。劇場公開に先駆け、キャプテン・ポップコーンこと矢武企画・矢武兄輔が新作映画を解説します!
 
[ストーリー]ごく平凡な家族の父親が妻子を殺害したのち、自ら命を絶つ。そのような不可解な殺人事件が過去30年間で10回も発生していた。いずれの現場にも侵入者の痕跡はなく、「ロングレッグス」という署名付きの暗号文が残されていたのみ。「ロングレッグス」とは一体何者なのか。FBIの新人捜査官のリー・ハーカーは重大な未解決事件の担当に抜擢され捜査するが進展なし。だが、ハーカーの過去とロングレッグスの意外な接点が浮上し、やがて事件はさらなる恐ろしい事態へ。
 
今回の作品で特に注目してほしいポイントは...
①信用できるフィルムメーカーが揃う
②どういうコワさ?
③見える不穏と見えない怪奇
この3つのポイントを踏まえて、ストーリーや作品の魅力をご紹介していきます。
 

信用できるフィルムメーカーが揃う

「2024年のベストホラー第1位」(VARIETY)、「この10年でいちばん怖い映画」(Flickering Myth)と、絶賛票続出の理由は、もちろん恐怖映画としての完成度が素晴らしいということです。しかし、これは感覚の話。では、筆者が期待した要素がなんだったかというと、製作・配給体制が素晴らしいからです。
 
まず、本国での公開を手がけるのは「NEON」です。この会社は『落下の解剖学』(24)、『ANORA アノーラ』(25)などカンヌ国際映画祭のパルムドール受賞作の全米配給権を5年連続で獲得し、その審美眼で急成長を遂げている独立系映画会社です。製作を兼任したのは『ドリーム・シナリオ』(24)で部屋の隅っこから迫り来るシーンも記憶に新しいニコラス・ケイジ。40年以上のキャリアで初めて連続殺人鬼に挑戦。性別も含めケイジとわからないほどの不気味な風貌、常軌を逸した演技が絶賛されています。

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そして、日本で配給するのは松竹。少しマニアックな目線になってしまいますが、筆者は、松竹の外国映画の買い付け作品にハズレはないと感じています。『ロード・オブ・ザ・リング』3部作(02〜04/初公開時)などの大ヒット作品から『エンドロールのつづき』(23)や『クレッシェンド 音楽の架け橋』(22)など世界の感動作も松竹洋画作品という実績があります。ちなみに今年11月に公開される山田洋次監督最新作、倍賞千恵子と木村拓哉出演の『TOKYOタクシー』も、松竹洋画のフランス映画『パリタクシー』(23)が原作です。
 
脚本・監督はオズグッド・パーキンス。実は、アルフレッド・ヒッチコック監督の名作『サイコ』(60)の主演俳優アンソニー・パーキンスの息子で、次回作は『シャイニング』(80)などのスティーヴン・キング原作、『ソウ』シリーズ(04〜)のジェームズ・ワンが製作の『The Monkey』(25)とのこと。
 
もちろん、映画は好みだし感想は十人十色ですが、映画が配給されるバックボーンに良き条件が多いと期待したくなっちゃいますよね!
 

どういうコワさ?

筆者は、なんでもかんでも「ホラー」と表記とジャンル分けされることに常日頃、疑問があります。確かに、本作も「恐怖映画」という意味では間違っていないと思いますが、日本で「ホラー」と聞くと、どうしても「Jホラー」のイメージが強くなる方は少なくないと思います。その場合は、“井戸やテレビから出てくる彼女”のことなど、有名なホラーアイコンを思い浮かべるでしょう。そうなってしまっては、苦手な方は観る前から結構身構えてしまいますよね。
でも、「こわい」には2つの漢字表記があります。「怖い」と「恐い」です。印象や細かいニュアンスで使い分けていると思いますが、前者は主観的な“コワい”、後者は客観的な“オそろしさ”で使い分けしているケースが多いようです。ちなみに文化庁の常用漢字表では「こわい」は「怖い」だけとされています。
 
話は元に戻りますが・・・『ロングレッグス』はどっちのニュアンスかというと総体的には「恐い」の方に感じました。なので、スリラー・サスペンスという解釈をしています。

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見える不穏と見えない怪奇


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この映画の全体を覆う恐怖の属性は「不穏」と「怪奇」です。
まずは、見えない連続殺人鬼の恐ろしさです。冒頭に登場する少女は、ロングレッグスの全貌を把握できていますが、観ている私たちは、アスペクト比4:3の画面(しかも四隅は丸いので昔のテレビ画面?)で、彼の膝から鼻までしか見ることができません。もう少しで顔が現れると思わせた瞬間、シーンが切れます。犯人がすぐそこにいるのに捕まえられない、まるで物語の中で捜査しているFBIと同じ気分です。また、舞台となる90年代半ばのオレゴン州の空気感もジメジメとした冬の冷たい天気が不穏な雰囲気を引き立てています。そのヒンヤリ感が、画と音から伝わってきます。あと暗さです。それは雰囲気の暗さではなく、夜の闇のことです。この映画は、暗闇で行動することが多く、そういう点は目に見えない恐ろしさが倍増していきます。アメリカで実際に起きているシリアルキラーの事件や『セブン』(95)などのサイコ・サスペンス映画ともシンクロしていきます。
前述通り、ケイジが連続殺人鬼のロングレッグスを演じていますが、その全貌やキャラクターは中々わからず、気持ちは怪奇で満たされていきます。ちなみに、顔が見えても、ケイジとは気づかない容姿です。なぜなら、完璧な特殊メイクを施しているからです。資料によると、主人公のリー・ハーカー役のマイカ・モンローは、ロングレッグスがどんな風貌か知らされておらず、取調室のシーンでは録音マイクがマイカの心拍数を拾い、その数値は150bpm[※1]まで急上昇していたとのこと。ロングレッグスの姿は、青白く派手な化粧とボリュームのあるヘアスタイル、いつまでも見た目が変わらない若々しさ。そんな見た目とは裏腹に、登場シーンではロックミュージックが刺激的に轟くのです。なんて怪奇的なのでしょうか。

そして、ロングレッグスの気配が我々に忍び寄り始めると、オカルト的なシンボル、精巧な少女の人形などのアイテム的なメッセージが散りばめられていくのです。
 
他にも見える「不穏」がありますが、それは映画の中で“視てください”。
 
※1:激しい運動をした時に出る心拍数

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『ロングレッグス』の基本情報

監督・脚本:オズ・パーキンス

出演者:マイカ・モンロー、ニコラス・ケイジ、ブレア・アンダーウッド
    アリシア・ウィット、ダコタ・ダルビー

2023年製作/101分/PG12/アメリカ

原題または英題:Longlegs

配給:松竹

劇場公開日:2025年3月14日(金)

公式サイト:https://movies.shochiku.co.jp/longlegs/

信用できるフィルムメーカーが揃う


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「2024年のベストホラー第1位」(VARIETY)、「この10年でいちばん怖い映画」(Flickering Myth)と、絶賛票続出の理由は、もちろん恐怖映画としての完成度が素晴らしいということです。しかし、これは感覚の話。では、筆者が期待した要素がなんだったかというと、製作・配給体制が素晴らしいからです。
 
まず、本国での公開を手がけるのは「NEON」です。この会社は『落下の解剖学』(24)、『ANORA アノーラ』(25)などカンヌ国際映画祭のパルムドール受賞作の全米配給権を5年連続で獲得し、その審美眼で急成長を遂げている独立系映画会社です。製作を兼任したのは『ドリーム・シナリオ』(24)で部屋の隅っこから迫り来るシーンも記憶に新しいニコラス・ケイジ。40年以上のキャリアで初めて連続殺人鬼に挑戦。性別も含めケイジとわからないほどの不気味な風貌、常軌を逸した演技が絶賛されています。

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そして、日本で配給するのは松竹。少しマニアックな目線になってしまいますが、筆者は、松竹の外国映画の買い付け作品にハズレはないと感じています。『ロード・オブ・ザ・リング』3部作(02〜04/初公開時)などの大ヒット作品から『エンドロールのつづき』(23)や『クレッシェンド 音楽の架け橋』(22)など世界の感動作も松竹洋画作品という実績があります。ちなみに今年11月に公開される山田洋次監督最新作、倍賞千恵子と木村拓哉出演の『TOKYOタクシー』も、松竹洋画のフランス映画『パリタクシー』(23)が原作です。
 
脚本・監督はオズグッド・パーキンス。実は、アルフレッド・ヒッチコック監督の名作『サイコ』(60)の主演俳優アンソニー・パーキンスの息子で、次回作は『シャイニング』(80)などのスティーヴン・キング原作、『ソウ』シリーズ(04〜)のジェームズ・ワンが製作の『The Monkey』(25)とのこと。
 
もちろん、映画は好みだし感想は十人十色ですが、映画が配給されるバックボーンに良き条件が多いと期待したくなっちゃいますよね!
 

どういうコワさ?


(C)MMXXIII C2 Motion Picture Group, LLC. All Rights Reserved.

筆者は、なんでもかんでも「ホラー」と表記とジャンル分けされることに常日頃、疑問があります。確かに、本作も「恐怖映画」という意味では間違っていないと思いますが、日本で「ホラー」と聞くと、どうしても「Jホラー」のイメージが強くなる方は少なくないと思います。その場合は、“井戸やテレビから出てくる彼女”のことなど、有名なホラーアイコンを思い浮かべるでしょう。そうなってしまっては、苦手な方は観る前から結構身構えてしまいますよね。
でも、「こわい」には2つの漢字表記があります。「怖い」と「恐い」です。印象や細かいニュアンスで使い分けていると思いますが、前者は主観的な“コワい”、後者は客観的な“オそろしさ”で使い分けしているケースが多いようです。ちなみに文化庁の常用漢字表では「こわい」は「怖い」だけとされています。
 
話は元に戻りますが・・・『ロングレッグス』はどっちのニュアンスかというと総体的には「恐い」の方に感じました。なので、スリラー・サスペンスという解釈をしています。

見える不穏と見えない怪奇


(C)MMXXIII C2 Motion Picture Group, LLC. All Rights Reserved.

この映画の全体を覆う恐怖の属性は「不穏」と「怪奇」です。
まずは、見えない連続殺人鬼の恐ろしさです。冒頭に登場する少女は、ロングレッグスの全貌を把握できていますが、観ている私たちは、アスペクト比4:3の画面(しかも四隅は丸いので昔のテレビ画面?)で、彼の膝から鼻までしか見ることができません。もう少しで顔が現れると思わせた瞬間、シーンが切れます。犯人がすぐそこにいるのに捕まえられない、まるで物語の中で捜査しているFBIと同じ気分です。また、舞台となる90年代半ばのオレゴン州の空気感もジメジメとした冬の冷たい天気が不穏な雰囲気を引き立てています。そのヒンヤリ感が、画と音から伝わってきます。あと暗さです。それは雰囲気の暗さではなく、夜の闇のことです。この映画は、暗闇で行動することが多く、そういう点は目に見えない恐ろしさが倍増していきます。アメリカで実際に起きているシリアルキラーの事件や『セブン』(95)などのサイコ・サスペンス映画ともシンクロしていきます。

(C)MMXXIII C2 Motion Picture Group, LLC. All Rights Reserved.

前述通り、ケイジが連続殺人鬼のロングレッグスを演じていますが、その全貌やキャラクターは中々わからず、気持ちは怪奇で満たされていきます。ちなみに、顔が見えても、ケイジとは気づかない容姿です。なぜなら、完璧な特殊メイクを施しているからです。資料によると、主人公のリー・ハーカー役のマイカ・モンローは、ロングレッグスがどんな風貌か知らされておらず、取調室のシーンでは録音マイクがマイカの心拍数を拾い、その数値は150bpm[※1]まで急上昇していたとのこと。ロングレッグスの姿は、青白く派手な化粧とボリュームのあるヘアスタイル、いつまでも見た目が変わらない若々しさ。そんな見た目とは裏腹に、登場シーンではロックミュージックが刺激的に轟くのです。なんて怪奇的なのでしょうか。

そして、ロングレッグスの気配が我々に忍び寄り始めると、オカルト的なシンボル、精巧な少女の人形などのアイテム的なメッセージが散りばめられていくのです。
 
他にも見える「不穏」がありますが、それは映画の中で“視てください”。
 
※1:激しい運動をした時に出る心拍数

『ロングレッグス』の基本情報

監督・脚本:オズ・パーキンス

出演者:マイカ・モンロー、ニコラス・ケイジ、ブレア・アンダーウッド
    アリシア・ウィット、ダコタ・ダルビー

2023年製作/101分/PG12/アメリカ

原題または英題:Longlegs

配給:松竹

劇場公開日:2025年3月14日(金)

公式サイト:https://movies.shochiku.co.jp/longlegs/

矢武兄輔

まちのえいが屋さん/キャプテン・ポップコーン

20歳の1月。札幌映画サークルに入会直後、さぬき映画祭への参加で『踊る大捜査線』の製作陣や深田晃司監督と出逢い、映画界の現実や地方から発信するエンタメの可能性を知る。そこから「映画館へ行く人を増やす」という目標を持ち、カネゴンを呼んでみたり、学生向け媒体をつくったり、休学して東京国際映画祭で勤務、映画館へ就職→退職→「矢武企画」を起業からの今は某局でラジオDJ。 すべては『踊る』の完結が始まりだった。そして、踊るプロジェクト再始動と共に…! ということで、皆さんにとって映画がもっと近くなれますように。

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