あっという間に2026年。キャプテン・ポップコーンこと矢武兄輔が、2025年の映画界の動向を振り返る「映画回顧2025」コラムです。後篇では、印象的だった興行シーンを振り返ります。
印象的だった興行シーン
(C)ENBUゼミナール
もちろん、1つの作品を十数回以上鑑賞の推し活リピーターの恩恵もありますが、普段映画館へ行かない方もメガヒット作を鑑賞した際に、予告編やロビーのフライヤーで“次の映画”を持ち帰ってくれたのかな、と期待できます。ヒット作が続いたり、映画館への動員が増えることは、年間映画鑑賞回数が国民ひとりあたり1.2回、北海道は0.7回(※1)という産業規模の中では、ポジティブな傾向、と感じております。この感覚は『カメラを止めるな!』や『ボヘミアン・ラプソディ』が公開された18年に似ている気がして、興行収入・入場者数ともに過去最高を記録した19年みたく、26年もそうなるのではないかと期待できます。
※1:一般社団法人コミュニティシネマセンター「映画上映活動年鑑2024」を参照
最近は「4Kデジタルリマスター版」や35mmの作品をデジタルデータ化した旧作も増え、定期的な「ゴジラ・シアター」のほか、イベント的にGW期実施『STAR WARS』(78〜19)9部作の一挙上映、現在もパンフレットの完売が続く11月『落下の王国』(08)が印象深いです。リバイバルされる作品の中には、公開当時よりも話題になった作品も。旧作にも関わらず若年層の動員が目立つ作品もあり、“映画館の環境で観るべき作品”という価値観が見受けられます。筆者もそうですが、“観たことない=新作と同じ状況”という感覚もあるのかもしれません。
その名作の強さを見せつけたのが、話題作や新作の動員を超え10月「月1エヴァ EVANGELION 30th MOVIE Fest.2025-2026」や12月「『バック・トゥ・ザ・フューチャー』公開40周年限定上映」が動員ランキングトップ10入りした事態です。
興行関係者からは、宣伝がない新作より、名作とされ内容の知られている旧作の方が観客が多いという声も、決して少なくないように思います。
(C)2006 Googly Films, LLC. All Rights Reserved.
劇場公開の優劣を懸念する声もありますが、筆者は映画館という環境での鑑賞価値が見出されている証でもありますし、スクリーン鑑賞に値する品質を作品に求められている形と考えます。そもそも、日本映画は多く製作され過ぎているとの指摘も多く、結果、鑑賞体験に選ばれない作品は多いと思われ、お客様と映画館の番組編成する担当の方はより一層、篩にかけてくるでしょう。
篩といえば、映画に対しての話題性も、従来の映画宣伝のように、テレビ局など以前からあるメディアが大量宣伝し「この映画、面白いよ」というイメージを流布させたからといってヒットするわけではなく、SNSなど個人が発信するクチコミの方が信憑性を得られ、大ヒットや興行不振へつながっている現象も見受けられました。
コンテンツにしろ、情報にしろ、“メディア”を発信する側は、これまでのやり方とは違う切り口でユーザーへ届ける工夫を増やしていかなければならないかもしれません・・・。
コンスタントにヒット作も
また、20年の新型コロナウイルスの感染拡大時の状況下を描いた6月『フロントライン』と7月『この夏の星を見る』が評価されていました。前者は豪華客船での集団感染に対応するDMATの医師たちの実話をベースに描き、後者はコロナ禍で複雑な思いを抱える中高生たちの青春映画で映画ファンからの支持が強く、セカンド上映以降も話題に。どちらも「後世に記録として残すべき映画」と言われる素晴らしい作品でした。
(C)2025「この夏の星を見る」製作委員会
(C)2025 映画 「 TOKYO タクシー 」製作委員会
また、8月『劇場版TOKYO MER 走る緊急救命室 南海ミッション』と『8番出口』が50億円を突破。3月『35年目のラブレター』や8月『近畿地方のある場所について』、11月『TOKYOタクシー』(※2)『栄光のバックホーム』(※2)のように各年齢層別にターゲットかつ10億円を突破する作品がコンスタントにあり、新型コロナウイルス禍前に戻ってきた感覚もあります。
※2:現在公開中
印象的だった興行シーン
(C)ENBUゼミナール
もちろん、1つの作品を十数回以上鑑賞の推し活リピーターの恩恵もありますが、普段映画館へ行かない方もメガヒット作を鑑賞した際に、予告編やロビーのフライヤーで“次の映画”を持ち帰ってくれたのかな、と期待できます。ヒット作が続いたり、映画館への動員が増えることは、年間映画鑑賞回数が国民ひとりあたり1.2回、北海道は0.7回(※1)という産業規模の中では、ポジティブな傾向、と感じております。この感覚は『カメラを止めるな!』や『ボヘミアン・ラプソディ』が公開された18年に似ている気がして、興行収入・入場者数ともに過去最高を記録した19年みたく、26年もそうなるのではないかと期待できます。
※1:一般社団法人コミュニティシネマセンター「映画上映活動年鑑2024」を参照
最近は「4Kデジタルリマスター版」や35mmの作品をデジタルデータ化した旧作も増え、定期的な「ゴジラ・シアター」のほか、イベント的にGW期実施『STAR WARS』(78〜19)9部作の一挙上映、現在もパンフレットの完売が続く11月『落下の王国』(08)が印象深いです。リバイバルされる作品の中には、公開当時よりも話題になった作品も。旧作にも関わらず若年層の動員が目立つ作品もあり、“映画館の環境で観るべき作品”という価値観が見受けられます。筆者もそうですが、“観たことない=新作と同じ状況”という感覚もあるのかもしれません。
その名作の強さを見せつけたのが、話題作や新作の動員を超え10月「月1エヴァ EVANGELION 30th MOVIE Fest.2025-2026」や12月「『バック・トゥ・ザ・フューチャー』公開40周年限定上映」が動員ランキングトップ10入りした事態です。
興行関係者からは、宣伝がない新作より、名作とされ内容の知られている旧作の方が観客が多いという声も、決して少なくないように思います。
(C)2006 Googly Films, LLC. All Rights Reserved.
劇場公開の優劣を懸念する声もありますが、筆者は映画館という環境での鑑賞価値が見出されている証でもありますし、スクリーン鑑賞に値する品質を作品に求められている形と考えます。そもそも、日本映画は多く製作され過ぎているとの指摘も多く、結果、鑑賞体験に選ばれない作品は多いと思われ、お客様と映画館の番組編成する担当の方はより一層、篩にかけてくるでしょう。
篩といえば、映画に対しての話題性も、従来の映画宣伝のように、テレビ局など以前からあるメディアが大量宣伝し「この映画、面白いよ」というイメージを流布させたからといってヒットするわけではなく、SNSなど個人が発信するクチコミの方が信憑性を得られ、大ヒットや興行不振へつながっている現象も見受けられました。
コンテンツにしろ、情報にしろ、“メディア”を発信する側は、これまでのやり方とは違う切り口でユーザーへ届ける工夫を増やしていかなければならないかもしれません・・・。
コンスタントにヒット作も
(C)2025「この夏の星を見る」製作委員会
また、20年の新型コロナウイルスの感染拡大時の状況下を描いた6月『フロントライン』と7月『この夏の星を見る』が評価されていました。前者は豪華客船での集団感染に対応するDMATの医師たちの実話をベースに描き、後者はコロナ禍で複雑な思いを抱える中高生たちの青春映画で映画ファンからの支持が強く、セカンド上映以降も話題に。どちらも「後世に記録として残すべき映画」と言われる素晴らしい作品でした。
(C)2025 映画 「 TOKYO タクシー 」製作委員会
また、8月『劇場版TOKYO MER 走る緊急救命室 南海ミッション』と『8番出口』が50億円を突破。3月『35年目のラブレター』や8月『近畿地方のある場所について』、11月『TOKYOタクシー』(※2)『栄光のバックホーム』(※2)のように各年齢層別にターゲットかつ10億円を突破する作品がコンスタントにあり、新型コロナウイルス禍前に戻ってきた感覚もあります。
※2:現在公開中
矢武兄輔
まちのえいが屋さん/キャプテン・ポップコーン
20歳の1月。札幌映画サークルに入会直後、さぬき映画祭への参加で『踊る大捜査線』の製作陣や深田晃司監督と出逢い、映画界の現実や地方から発信するエンタメの可能性を知る。そこから「映画館へ行く人を増やす」という目標を持ち、カネゴンを呼んでみたり、学生向け媒体をつくったり、休学して東京国際映画祭で勤務、映画館へ就職→退職→「矢武企画」を起業からの今は某局でラジオDJ。 すべては『踊る』の完結が始まりだった。そして、踊るプロジェクト再始動と共に…! ということで、皆さんにとって映画がもっと近くなれますように。