(C)2025 Paramount Pictures. All Rights Reserved.
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2026.1.23

分断された世界への怒りをぶちまけろ!30日間の“逃走”デスゲーム『ランニング・マン』レビュー

スティーヴン・キング原作、エドガー・ライト監督による近未来サバイバル・スリラー『ランニング・マン』が、1月30日(金)に公開されます。主演は『トップガン マーヴェリック』(22)で注目を集めたグレン・パウエル。

舞台は貧困と富の格差が固定化され、怒りの矛先さえ奪われた世界。殺人番組が娯楽化した近未来に、情報操作で「市民の敵」に仕立て上げられた男の逃走を描きます。単なるアクションに留まらず、メディアの狂気と大衆の残酷さを鋭く突くサバイバル・スリラーです。本作は『バトルランナー』(1987)のリメイクではなく、原作小説の忠実な映画化。実は、『バトルランナー』主演のシュワルツェネッガーもこのプロジェクトを支持しており、劇中には彼への敬意を込めた粋なオマージュ(隠れシュワ!)も。

社会からの追放。怒りはそこから始まった!

物語の怒りは、デスゲームの開始とともに生まれるものではありません。その起点となるのは、冒頭で描かれる、主人公ベン・リチャーズがかつて勤めていた会社を訪れ、再雇用を求める場面です。

声を荒げ、感情を抑えきれず、必死に食い下がる姿。しかし、主張している内容は決して筋違いではありません。責任が曖昧にされたこと、そして生活のために仕事が必要だという現実。そのすべてが、切実で正当な訴えです。

それでも会社は彼を拒絶します。能力や態度の問題ではなく、問題を蒸し返されたくないから。この瞬間、ベンは社会から静かに排除されます。彼が走り出す前に、世界はすでに彼を「扱いづらい存在」として切り捨てられていました。

私欲の通報が、人を殺す

『ランニング・マン』の世界では、視聴者が番組に参加できます。街中で逃走者を見かけた場合、通報すれば報酬が得られる仕組みです。この構造は、SNSにおける「いいね」や告発投稿と重なって見えます。

通報の動機は正義ではありません。「少し得をするから」という軽い理由。その軽さが、人の命を削る行為を“参加型エンタメ”として成立させてしまいます。この社会では、その異常さを疑う者はほとんど存在しません。そこにこそ、本作が描く恐怖の本質があります。

見ず知らずの誰かの一報によって、逃げる男は次々と追い詰められていきます。その過程が、ごく自然な日常として描かれている点に、強い違和感と戦慄を覚えました。
 

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作られた“敵”、演出されたショー


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主人公ベン・リチャーズは、番組の演出によって“悪人”として仕立て上げられていきます。主催者はフェイク映像を流し、視聴者の怒りと憎悪を巧みに煽ります。

実際のベンは、娘のために金が必要なだけの男です。しかし、一度流された映像は「真実」として消費され、彼は「排除されるべき敵」へと変換されていきます。この構造は、断片化された情報が独り歩きし、イメージだけで他者を断罪してしまう現代社会と不気味に重なります。

特に印象的なのが、番組プロデューサーたちの存在です。彼らの判断基準は一貫して「視聴率」のみ。倫理や正義は介在せず、誰をどう演出すれば盛り上がるかだけが問題とされます。その姿は冷酷というより、むしろ空虚。感情も責任も欠落した意思決定です。
 

映像と音が刻む、逃走者の孤独

本作では、映像と音の使い方にも明確な意図が感じられました。

ベンが潜伏するシーンでは、音楽が引き算的に使われ、沈黙が緊張感を支配します。 一方、逃走や銃撃といったゲームショーの場面では、アップテンポな音楽が緊迫した映像に重なり、観客の高揚感を意図的に煽ってきます。暴力が“ショー”へと変換されていく、その恐ろしさも浮かび上がってきました。

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逃走劇としての快感がたしかにある


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本作が優れているのは、社会的寓話に終始せず、純粋なアクション映画としての快感をしっかりと成立させている点です。

市街地での逃走シーンはテンポが良く、過剰なカット割りに頼らない編集によって、「追われる/隠れる/見つかりかける」という緊張のリズムが丁寧に積み重ねられていきます。

派手さよりも切迫感を重視したアクションの連続。一瞬で終わる銃撃や格闘が積み重なり、観客は考える余裕を与えられるのではなく、ベンと同じ呼吸で走らされる感覚に陥ります。
 

共鳴が暴力の構造にヒビを入れる

当初は画面越しにゲームの加担者としてベンを追い詰めていた人々も、彼の必死な走りや家族を想う姿に触れることで、次第に自分たちの立場に疑問を抱き始めます。その小さな共鳴が、暴力をエンタメとして成立させていた構造に、確かなヒビを入れていきます。

ベンは正義の象徴でも救世主でもありません。ただ、生きるために逃げ続けているひとりの男。その姿が、編集や演出を越えて“真実”として届いた――そこに、この物語が提示する、わずかな、しかし確かな救いがあります。

過去が帳消しになるわけではありません。それでも、たしかに変化は起きました。
その一点を描き切ったことこそが、『ランニング・マン』を単なる社会批評に終わらせない理由でしょう。
 

(C)2025 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

映画『ランニング・マン』基本情報


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■公開日
2026年1月30日(金)

■監督
エドガー・ライト 『ベイビー・ドライバー』(17)

■原作
「ランニング・マン(旧題:バトルランナー)」
スティ-ヴン・キング(リチャード・パックマン名義)
デスゲーム小説の原点 20年ぶりの復刊
扶桑社 ミステリー刊
酒井昭伸 訳

■出演
グレン・パウエル 『トップガン マーヴェリック』(22)
ジョシュ・ブローリン 『アベンジャーズ/インフィニティー・ウォー(18)、エンドゲーム(19)』

■配給
東和ピクチャーズ

■公式HP
https://the-runningman-movie.jp/
 

社会からの追放。怒りはそこから始まった!

物語の怒りは、デスゲームの開始とともに生まれるものではありません。その起点となるのは、冒頭で描かれる、主人公ベン・リチャーズがかつて勤めていた会社を訪れ、再雇用を求める場面です。

声を荒げ、感情を抑えきれず、必死に食い下がる姿。しかし、主張している内容は決して筋違いではありません。責任が曖昧にされたこと、そして生活のために仕事が必要だという現実。そのすべてが、切実で正当な訴えです。

それでも会社は彼を拒絶します。能力や態度の問題ではなく、問題を蒸し返されたくないから。この瞬間、ベンは社会から静かに排除されます。彼が走り出す前に、世界はすでに彼を「扱いづらい存在」として切り捨てられていました。

私欲の通報が、人を殺す


(C)2025 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

『ランニング・マン』の世界では、視聴者が番組に参加できます。街中で逃走者を見かけた場合、通報すれば報酬が得られる仕組みです。この構造は、SNSにおける「いいね」や告発投稿と重なって見えます。

通報の動機は正義ではありません。「少し得をするから」という軽い理由。その軽さが、人の命を削る行為を“参加型エンタメ”として成立させてしまいます。この社会では、その異常さを疑う者はほとんど存在しません。そこにこそ、本作が描く恐怖の本質があります。

見ず知らずの誰かの一報によって、逃げる男は次々と追い詰められていきます。その過程が、ごく自然な日常として描かれている点に、強い違和感と戦慄を覚えました。
 

作られた“敵”、演出されたショー


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主人公ベン・リチャーズは、番組の演出によって“悪人”として仕立て上げられていきます。主催者はフェイク映像を流し、視聴者の怒りと憎悪を巧みに煽ります。

実際のベンは、娘のために金が必要なだけの男です。しかし、一度流された映像は「真実」として消費され、彼は「排除されるべき敵」へと変換されていきます。この構造は、断片化された情報が独り歩きし、イメージだけで他者を断罪してしまう現代社会と不気味に重なります。

特に印象的なのが、番組プロデューサーたちの存在です。彼らの判断基準は一貫して「視聴率」のみ。倫理や正義は介在せず、誰をどう演出すれば盛り上がるかだけが問題とされます。その姿は冷酷というより、むしろ空虚。感情も責任も欠落した意思決定です。
 

映像と音が刻む、逃走者の孤独


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本作では、映像と音の使い方にも明確な意図が感じられました。

ベンが潜伏するシーンでは、音楽が引き算的に使われ、沈黙が緊張感を支配します。 一方、逃走や銃撃といったゲームショーの場面では、アップテンポな音楽が緊迫した映像に重なり、観客の高揚感を意図的に煽ってきます。暴力が“ショー”へと変換されていく、その恐ろしさも浮かび上がってきました。

逃走劇としての快感がたしかにある


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本作が優れているのは、社会的寓話に終始せず、純粋なアクション映画としての快感をしっかりと成立させている点です。

市街地での逃走シーンはテンポが良く、過剰なカット割りに頼らない編集によって、「追われる/隠れる/見つかりかける」という緊張のリズムが丁寧に積み重ねられていきます。

派手さよりも切迫感を重視したアクションの連続。一瞬で終わる銃撃や格闘が積み重なり、観客は考える余裕を与えられるのではなく、ベンと同じ呼吸で走らされる感覚に陥ります。
 

共鳴が暴力の構造にヒビを入れる


(C)2025 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

当初は画面越しにゲームの加担者としてベンを追い詰めていた人々も、彼の必死な走りや家族を想う姿に触れることで、次第に自分たちの立場に疑問を抱き始めます。その小さな共鳴が、暴力をエンタメとして成立させていた構造に、確かなヒビを入れていきます。

ベンは正義の象徴でも救世主でもありません。ただ、生きるために逃げ続けているひとりの男。その姿が、編集や演出を越えて“真実”として届いた――そこに、この物語が提示する、わずかな、しかし確かな救いがあります。

過去が帳消しになるわけではありません。それでも、たしかに変化は起きました。
その一点を描き切ったことこそが、『ランニング・マン』を単なる社会批評に終わらせない理由でしょう。
 

映画『ランニング・マン』基本情報


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■公開日
2026年1月30日(金)

■監督
エドガー・ライト 『ベイビー・ドライバー』(17)

■原作
「ランニング・マン(旧題:バトルランナー)」
スティ-ヴン・キング(リチャード・パックマン名義)
デスゲーム小説の原点 20年ぶりの復刊
扶桑社 ミステリー刊
酒井昭伸 訳

■出演
グレン・パウエル 『トップガン マーヴェリック』(22)
ジョシュ・ブローリン 『アベンジャーズ/インフィニティー・ウォー(18)、エンドゲーム(19)』

■配給
東和ピクチャーズ

■公式HP
https://the-runningman-movie.jp/
 

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