2026.3.18

「映画はなくならない」白石和彌監督、サツゲキ閉館前に語った映画への思い【舞台挨拶レポート】

札幌・狸小路で映画ファンに親しまれてきた映画館『サツゲキ』が、テナントして入居する映画館(建物)の管理会社と、来年度以降の契約更改を交渉していましたが条件が合わず、3月29日(日)の賃貸借契約の満了をもって閉館します。
現在サツゲキでは、クロージング企画として「白石和彌監督特集」を開催中。3月13日(金)~3月19日(木)の1週間限定で、白石監督の作品がリバイバル上映されています。
3月14日(土)には、『彼女がその名を知らない鳥たち』(2017)『死刑にいたる病』(2022)の上映にあわせて、白石和彌監督による舞台挨拶を開催。上映後に行われた舞台挨拶には、多くの映画ファンが来場し、会場は大きな熱気に包まれました。

上映作品のストーリー


(C)2017映画「彼女がその名を知らない鳥たち」製作委員会

■『彼女がその名を知らない鳥たち』のあらすじ
自堕落な日々を送りながら、15歳年上の男・陣治と同居している十和子。彼女は不潔で下品な陣治に嫌悪感を抱きつつも、生活の大半を彼に頼って過ごしています。そんなある日、かつての恋人に似た男と出会ったことをきっかけに、十和子の感情は再び揺れ動きます。そして次第に、過去の失踪事件をめぐる疑念が浮かび上がっていきます。

■『死刑にいたる病』のあらすじ
物語は、大学生の雅也のもとに届いた一通の手紙をきっかけに動き出します。差出人は、世間を震撼させた連続殺人犯・榛村。自身の罪は認めながらも、「最後の事件だけは冤罪だ」と訴え、その証明を雅也に託します。かつて地元のパン屋の店主だった頃に榛村へ信頼を寄せていた雅也は、その言葉を信じて独自に事件の調査を開始。しかし調べを進めるにつれ、事件の真相は思いがけないほど複雑に絡み合い、やがて想像を超える闇が浮かび上がっていきます。
 

『彼女がその名を知らない鳥たち』『死刑にいたる病』で阿部サダヲが創り出した“恐怖”

まず白石監督がふれたのは、2つの作品で阿部サダヲさんが演じたキャラクターの違いについてです。どちらもシリアルキラーの役でありながら、その人物像は対照的。『彼女がその名を知らない鳥たち』では、どこか不潔さをまとった“純愛”。一方、『死刑にいたる病』では“清潔な狂気”ともいえる人物像が描かれています。

白石監督は、『彼女がその名を知らない鳥たち』の演出についてこう振り返ります。「(サダヲさんに)5分前に人を殺してきた“目”をしてほしい…とお願いしたんです。その時の“目”がずっと印象に残っていて、ゾクゾクしました」
一方、『死刑にいたる病』では真逆のイメージを意識したといいます。「今回はまったく違う方向で演じてほしい」と阿部さんに依頼し、その一環として清潔感を演出するため、歯を白くコーティングしてもらったことも明かしました。

 

(C)2022映画「死刑にいたる病」製作委員会

また白石監督は、阿部サダヲさんの“目”の表現にもふれました。
「阿部さんは目にすごく特徴がある人で、どこまでも深く吸い込まれる」「私を通して、その向こう側を見ているんじゃないかと思うこともある」と語り、「“目”に関しては特別な演出はしていません。ほぼ素だと思います」とコメント。
さらに『死刑にいたる病』の終盤にも言及し、「最後のシーンの宮崎優さんの目も、それに近かった。相手を突き刺すような目でした」と振り返りました。

「白石作品を象徴する“痛み”の描写 監督が語るリアルな感覚」

白石監督作品といえば、“痛み”の描写が印象的な作品も多くあります。
代表作『孤狼の血』(2018~2021)シリーズでは泥臭く生々しい暴力表現が特徴ですが、今回上映された『死刑にいたる病』では、それとは異なるアプローチを意識したといいます。「今回は痛みの表現に、ある種の美しさや規律のようなものを持たせたかったんです」と白石監督は語ります。
ここで司会から「これまでの作品の中で、“これは本当に嫌だな”と思う痛みの描写はありますか?」という質問が投げかけられました。
白石監督は過去作品を引き合いにこう答えます。「目を潰されるのは普通に嫌ですね。『孤狼の血 LEVEL2』でもありましたけど…。ただ、目って潰されたことがないから、どんな痛みなのか想像がつかないですけどね(笑)」とコメント。一方で、「爪を剥がされるのは、なんとなく痛みが想像できる。だから、痛みという意味ではそっちの方がリアルに感じるかもしれない」と語り、会場からは笑いが起こりました。

旭川出身の白石監督 TEAM NACS音尾琢真との深い縁

白石監督が手がけた配信ドラマ「仮面ライダーBLACK SUN」(2022)の話題になると、同作にも出演していたTEAM NACSの音尾琢真さんの話にも広がりました。旭川出身の白石監督にとって、音尾さんは同じ高校の後輩。これまで13作品もの白石監督作品に出演しているといいます。
白石監督は、音尾さんについて「いつも素直に慕ってくれるんです」とうれしそうに語りました。
ここで司会から「普段、役作りはどのように依頼しているのですか?」という質問が投げかけられました。白石監督は少し言葉を探しながら、こう答えます。「うーん……もう存在が近くなりすぎていて……。最終的に“コウモリ怪人みたいによろしく”みたいな感じで、だんだん雑になっちゃってますね(笑)」
率直な言葉に、会場は笑いに包まれました。

怪獣映画の話題も飛び出す、和やかなトークのひと幕

トークの終盤では、ディノスシネマズ札幌劇場時代に公開した白石監督の作品『牝猫たち』(2017)の話題にもふれられました。
作中のラストシーンに登場する、日活の怪獣映画『大巨獣ガッパ』(1967)のソフビの話題から、思わぬ方向へ話が広がります。北海道はこれまで、ゴジラ、モスラ、ガメラ、ギララと各配給会社の看板怪獣が上陸した地。もし『雌猫たち』の舞台が池袋ではなくススキノだったら、”ガッパも!”と言えたのに--という話題になりました。
司会から「だから白石さんにガッパのリメイクを撮ってほしい」という声が上がると、白石監督は笑いながらこう返します。「怪獣映画は作ってみたいんですけどね。ゴジラはもう営業していて…、ちょっと渋滞してます(笑)」さらに、「3年くらい前に話してくれていたら、サツゲキの閉館に合わせてガッパがサツゲキを壊す映画を作ったのに(笑)」と続け、会場は大きな笑いに包まれました。

 

「映画はなくならない」白石監督が語ったサツゲキと映画への思い

最後に白石監督は、映画館の閉館にふれながらこう語りました。「サツゲキはなくなってしまいますけど、映画はなくならないですし、僕自身も映画を作り続けていきます」その言葉には、これからも映画を作り続けていくという監督の強い意思がにじんでいました。

サツゲキでの白石作品2作の上映は3月19日(木)まで。サツゲキは3月29日(日)をもって営業を終了します。
新作以外の映画を映画館のスクリーンで観られる機会は、決して多くありません。この機会に、映画館のスクリーンで『彼女がその名を知らない鳥たち』『死刑にいたる病』を体験してみてはいかがでしょうか。

上映作品のストーリー


(C)2017映画「彼女がその名を知らない鳥たち」製作委員会

■『彼女がその名を知らない鳥たち』のあらすじ
自堕落な日々を送りながら、15歳年上の男・陣治と同居している十和子。彼女は不潔で下品な陣治に嫌悪感を抱きつつも、生活の大半を彼に頼って過ごしています。そんなある日、かつての恋人に似た男と出会ったことをきっかけに、十和子の感情は再び揺れ動きます。そして次第に、過去の失踪事件をめぐる疑念が浮かび上がっていきます。

■『死刑にいたる病』のあらすじ
物語は、大学生の雅也のもとに届いた一通の手紙をきっかけに動き出します。差出人は、世間を震撼させた連続殺人犯・榛村。自身の罪は認めながらも、「最後の事件だけは冤罪だ」と訴え、その証明を雅也に託します。かつて地元のパン屋の店主だった頃に榛村へ信頼を寄せていた雅也は、その言葉を信じて独自に事件の調査を開始。しかし調べを進めるにつれ、事件の真相は思いがけないほど複雑に絡み合い、やがて想像を超える闇が浮かび上がっていきます。
 

『彼女がその名を知らない鳥たち』『死刑にいたる病』で阿部サダヲが創り出した“恐怖”

まず白石監督がふれたのは、2つの作品で阿部サダヲさんが演じたキャラクターの違いについてです。どちらもシリアルキラーの役でありながら、その人物像は対照的。『彼女がその名を知らない鳥たち』では、どこか不潔さをまとった“純愛”。一方、『死刑にいたる病』では“清潔な狂気”ともいえる人物像が描かれています。

白石監督は、『彼女がその名を知らない鳥たち』の演出についてこう振り返ります。「(サダヲさんに)5分前に人を殺してきた“目”をしてほしい…とお願いしたんです。その時の“目”がずっと印象に残っていて、ゾクゾクしました」
一方、『死刑にいたる病』では真逆のイメージを意識したといいます。「今回はまったく違う方向で演じてほしい」と阿部さんに依頼し、その一環として清潔感を演出するため、歯を白くコーティングしてもらったことも明かしました。

 

(C)2022映画「死刑にいたる病」製作委員会

また白石監督は、阿部サダヲさんの“目”の表現にもふれました。
「阿部さんは目にすごく特徴がある人で、どこまでも深く吸い込まれる」「私を通して、その向こう側を見ているんじゃないかと思うこともある」と語り、「“目”に関しては特別な演出はしていません。ほぼ素だと思います」とコメント。
さらに『死刑にいたる病』の終盤にも言及し、「最後のシーンの宮崎優さんの目も、それに近かった。相手を突き刺すような目でした」と振り返りました。

「白石作品を象徴する“痛み”の描写 監督が語るリアルな感覚」

白石監督作品といえば、“痛み”の描写が印象的な作品も多くあります。
代表作『孤狼の血』(2018~2021)シリーズでは泥臭く生々しい暴力表現が特徴ですが、今回上映された『死刑にいたる病』では、それとは異なるアプローチを意識したといいます。「今回は痛みの表現に、ある種の美しさや規律のようなものを持たせたかったんです」と白石監督は語ります。
ここで司会から「これまでの作品の中で、“これは本当に嫌だな”と思う痛みの描写はありますか?」という質問が投げかけられました。
白石監督は過去作品を引き合いにこう答えます。「目を潰されるのは普通に嫌ですね。『孤狼の血 LEVEL2』でもありましたけど…。ただ、目って潰されたことがないから、どんな痛みなのか想像がつかないですけどね(笑)」とコメント。一方で、「爪を剥がされるのは、なんとなく痛みが想像できる。だから、痛みという意味ではそっちの方がリアルに感じるかもしれない」と語り、会場からは笑いが起こりました。

旭川出身の白石監督 TEAM NACS音尾琢真との深い縁

白石監督が手がけた配信ドラマ「仮面ライダーBLACK SUN」(2022)の話題になると、同作にも出演していたTEAM NACSの音尾琢真さんの話にも広がりました。旭川出身の白石監督にとって、音尾さんは同じ高校の後輩。これまで13作品もの白石監督作品に出演しているといいます。
白石監督は、音尾さんについて「いつも素直に慕ってくれるんです」とうれしそうに語りました。
ここで司会から「普段、役作りはどのように依頼しているのですか?」という質問が投げかけられました。白石監督は少し言葉を探しながら、こう答えます。「うーん……もう存在が近くなりすぎていて……。最終的に“コウモリ怪人みたいによろしく”みたいな感じで、だんだん雑になっちゃってますね(笑)」
率直な言葉に、会場は笑いに包まれました。

怪獣映画の話題も飛び出す、和やかなトークのひと幕

トークの終盤では、ディノスシネマズ札幌劇場時代に公開した白石監督の作品『牝猫たち』(2017)の話題にもふれられました。
作中のラストシーンに登場する、日活の怪獣映画『大巨獣ガッパ』(1967)のソフビの話題から、思わぬ方向へ話が広がります。北海道はこれまで、ゴジラ、モスラ、ガメラ、ギララと各配給会社の看板怪獣が上陸した地。もし『雌猫たち』の舞台が池袋ではなくススキノだったら、”ガッパも!”と言えたのに--という話題になりました。
司会から「だから白石さんにガッパのリメイクを撮ってほしい」という声が上がると、白石監督は笑いながらこう返します。「怪獣映画は作ってみたいんですけどね。ゴジラはもう営業していて…、ちょっと渋滞してます(笑)」さらに、「3年くらい前に話してくれていたら、サツゲキの閉館に合わせてガッパがサツゲキを壊す映画を作ったのに(笑)」と続け、会場は大きな笑いに包まれました。

 

「映画はなくならない」白石監督が語ったサツゲキと映画への思い

最後に白石監督は、映画館の閉館にふれながらこう語りました。「サツゲキはなくなってしまいますけど、映画はなくならないですし、僕自身も映画を作り続けていきます」その言葉には、これからも映画を作り続けていくという監督の強い意思がにじんでいました。

サツゲキでの白石作品2作の上映は3月19日(木)まで。サツゲキは3月29日(日)をもって営業を終了します。
新作以外の映画を映画館のスクリーンで観られる機会は、決して多くありません。この機会に、映画館のスクリーンで『彼女がその名を知らない鳥たち』『死刑にいたる病』を体験してみてはいかがでしょうか。

休日のスケジュールが決まっていない方、何を見ようか迷っている方など"ライトな映画ファン"に対して、映画館に出かけて、映画を楽しむことをおすすめします。SASARU movie編集部では、話題性の高い最新映画を中心にその情報や魅力を継続的に発信していきます。

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