photo by Melinda Sue Gordon (C) Universal Studios. All Rights Reserved.
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2026.8.18

映画『オデュッセイア』レビュー|クリストファー・ノーランが描く、荒れ狂う海、神々と怪物――知恵で切り開く英雄の帰還

2026年9月11日(金)公開の映画『オデュッセイア』は、古代ギリシャの詩人ホメロスによる英雄叙事詩を、クリストファー・ノーラン監督が映画化したスペクタクル大作です。

トロイア戦争を終えたイタケの王オデュッセウスは、妻ペネロペと息子テレマコスが待つ故郷を目指します。しかし、神々の介入や怪物、荒れ狂う海によって行く手を阻まれ、その旅は10年にも及ぶことに。

腕力で敵を押し切るのではなく、相手の思惑を読み、ときにはその油断さえ利用して、生きて帰る道を探すオデュッセウス。壮大な神話の中心にあるのは、家族のもとへ戻ることを諦めない、ひとりの男の物語です。

戦う前に勝機をつくる、オデュッセウスの知恵

『オデュッセイア』レビュー_トロイの木馬

photo by Melinda Sue Gordon (C) Universal Studios. All Rights Reserved.

オデュッセウスの戦い方を象徴するのが、トロイの木馬作戦です。巨大な木馬に兵士を潜ませ、敵自らの手で城内へ運び込ませる。城壁を正面から破るのではなく、相手の思い込みを利用して内側へ入り込みます。

航海の途中でも、その知恵は幾度も試されます。仲間を動物に変えてしまう魔女キルケ、美しい歌声で船乗りを破滅へ導くセイレーン。次々と待ち受ける試練は、単なる戦いや怪物との遭遇ではなく、オデュッセウスの知恵や忍耐、人間性を試すものでもあります。

故郷へたどり着いた後も力任せには動きません。正体や意図を悟らせず、相手の警戒を解いたところから反撃の機会をつくります。

一方、劇中で語られるのが、客人を迎え入れ、互いの信頼を重んじる「ゼウスの掟」です。この視点から木馬を見ると、贈り物を装って相手の懐へ入り込む作戦は、信頼を逆手に取ったものとも読めます。

映画が木馬を「掟への違反」と断定しているわけではありません。オデュッセウスは知恵によって危機を切り抜ける英雄である一方、その知恵はときに相手の信頼や思い込みを利用するものでもあります。この二面性が、彼を単純な英雄では終わらせません。

マット・デイモンを中心に、神話世界を彩る豪華俳優陣

物語の中心に立つのは、オデュッセウスを演じるマット・デイモンです。長い戦争と航海を生き抜いてきた人物の疲労や警戒心をまといながら、家族のもとへ帰るという意志を、言葉だけでなく表情や佇まいからも感じさせます。

アン・ハサウェイ演じるペネロペは、感情を簡単には表に出しません。王妃としての気品を崩さず、怒りがこみ上げても表情の内側へ押し込める。その姿から、夫の帰還を待ちながら家族と故郷を守ってきた女性の強さが見えてきます。
『オデュッセイア』レビュー_マッド・ディモン

photo by Melinda Sue Gordon (C) Universal Studios. All Rights Reserved.

『オデュッセイア』レビュー_ロバート・パティンソン

photo by Melinda Sue Gordon (C) Universal Studios. All Rights Reserved.

ロバート・パティンソン演じる求婚者アンティノオスは、鋭い表情と相手を見下すような態度でイタケに緊張を持ち込みます。対して、ゼンデイヤ演じる知恵の女神アテナは静けさと悲しみをまとい、人間とは異なる距離からオデュッセウスを見つめる存在です。

シャーリーズ・セロン演じるカリュプソも、単なる誘惑者には収まりません。オデュッセウスを引き留めながら、その振る舞いには葛藤もにじむ。トム・ホランド演じるテレマコスは父を探す息子として、離れ離れになった家族の物語を担います。

家族のドラマ、人間の欲望、神々が介入する世界。それぞれを主演級の俳優が担うことで、壮大な神話が人間の感情と結びついていきます。

3つの物語が生む「まだ会えない」という焦り

本作は、オデュッセウスの航海だけを一直線に追いません。
海上で試練に直面するオデュッセウス、父の行方を追うテレマコス、イタケで夫を待つペネロペ。離れた場所にいる3人の物語を行き来しながら進んでいきます。この切り替えによって、ひとつの危機を乗り越えても観客はなかなか安心できません。オデュッセウスが故郷へ一歩近づいたと思えば、今度はイタケの状況が動き出す。テレマコスが父を追う一方で、ペネロペを取り巻く状況も変化していきます。互いを求めながら、なかなか同じ場所へたどり着けない家族。そのもどかしさが、長い旅の時間をより切実なものにしています。

戦闘、航海、怪物との遭遇、イタケでのドラマが交互に展開するため、約3時間という上映時間を感じさせず、ひとつの場面に停滞する感覚もありません。「オデュッセウスは帰れるのか」だけでなく、「家族は再び同じ場所に立てるのか」という思いが、物語を最後まで引っ張ります。
『オデュッセイア』レビュー_アン・ハサウェイ

photo by Melinda Sue Gordon (C) Universal Studios. All Rights Reserved.

実際の海とIMAX(R)が生む、神話世界のスケール

『オデュッセイア』レビュー_マット・デイモン

photo by Melinda Sue Gordon (C) Universal Studios. All Rights Reserved.

本作のスケールを最も強く体感できるのが、オデュッセウスたちの航海です。

実際の海で撮影された場面では、船を揺らす波や吹きつける風、甲板へ飛び込んでくる波しぶきまで画面いっぱいに迫ります。天候が変われば、船も人間も自然の力にのみ込まれていく。揺れる甲板で身体を支え、波をまともに受ける俳優たちの姿から、実際の海で撮影したからこその緊張感が伝わってきます。IMAX(R)の大画面によって、海そのものが行く手を阻む存在として迫ってくる。その臨場感も圧巻です。

引いた画では、広大な海や海岸線の中に人間や船が小さく収まり、自然のスケールの大きさが際立ちます。長編映画史上初となる全編IMAXフィルムカメラ撮影によって、壮大な風景だけでなく、その中を旅し続ける人間の小ささまで映し出します。
神話世界のスケールを別の形で見せるのが、単眼の巨人キュクロプスです。巨大な身体が空間を埋め、人間と同じ画面に収まった瞬間、その圧倒的な体格差が際立ちます。狭い場所に巨体が存在する圧迫感もあり、大きさだけでなく身体の重量まで意識させる造形です。

広大な海では自然の前で人間を小さく見せ、キュクロプスとの場面では怪物との力の差を突きつける。IMAX(R)の巨大な画面が、オデュッセウスが挑む世界の途方もなさを体感させます。

神話という題材に身構える必要はありません。神々や怪物、荒れ狂う海が待ち受ける壮大な物語でありながら、その中心にあるのは「家族のもとへ帰りたい」というシンプルな願いです。

どれほど試練に遭っても帰還を諦めないオデュッセウスと、彼を待ち続ける家族。その思いがあるからこそ、神話の世界が遠い昔の物語ではなく、ひとりの人間の帰還譚として迫ってきます。

実際の海と全編IMAXフィルム撮影によって、その長い帰路を身体感覚にまで引き寄せた『オデュッセイア』。鑑賞環境を選べるなら、ぜひIMAX(R)の大画面で体験したい作品です。

映画『オデュッセイア』基本情報

『オデュッセイア』レビュー_ポスター

(C) 2026 UNIVERSAL STUDIOS

■公開日:9月11日(金)

■監督・脚本:クリストファー・ノーラン

■出演:マット・デイモン、トム・ホランド
アン・ハサウェイ、ロバート・パティンソン
ルピタ・ニョンゴ、ゼンデイヤ、シャーリーズ・セロン

■配給:ビターズ・エンド ユニバーサル映画

■公式サイト:https://odyssey-film.jp/

戦う前に勝機をつくる、オデュッセウスの知恵

『オデュッセイア』レビュー_トロイの木馬

photo by Melinda Sue Gordon (C) Universal Studios. All Rights Reserved.

オデュッセウスの戦い方を象徴するのが、トロイの木馬作戦です。巨大な木馬に兵士を潜ませ、敵自らの手で城内へ運び込ませる。城壁を正面から破るのではなく、相手の思い込みを利用して内側へ入り込みます。

航海の途中でも、その知恵は幾度も試されます。仲間を動物に変えてしまう魔女キルケ、美しい歌声で船乗りを破滅へ導くセイレーン。次々と待ち受ける試練は、単なる戦いや怪物との遭遇ではなく、オデュッセウスの知恵や忍耐、人間性を試すものでもあります。

故郷へたどり着いた後も力任せには動きません。正体や意図を悟らせず、相手の警戒を解いたところから反撃の機会をつくります。

一方、劇中で語られるのが、客人を迎え入れ、互いの信頼を重んじる「ゼウスの掟」です。この視点から木馬を見ると、贈り物を装って相手の懐へ入り込む作戦は、信頼を逆手に取ったものとも読めます。

映画が木馬を「掟への違反」と断定しているわけではありません。オデュッセウスは知恵によって危機を切り抜ける英雄である一方、その知恵はときに相手の信頼や思い込みを利用するものでもあります。この二面性が、彼を単純な英雄では終わらせません。

マット・デイモンを中心に、神話世界を彩る豪華俳優陣

『オデュッセイア』レビュー_マッド・ディモン

photo by Melinda Sue Gordon (C) Universal Studios. All Rights Reserved.

物語の中心に立つのは、オデュッセウスを演じるマット・デイモンです。長い戦争と航海を生き抜いてきた人物の疲労や警戒心をまといながら、家族のもとへ帰るという意志を、言葉だけでなく表情や佇まいからも感じさせます。

アン・ハサウェイ演じるペネロペは、感情を簡単には表に出しません。王妃としての気品を崩さず、怒りがこみ上げても表情の内側へ押し込める。その姿から、夫の帰還を待ちながら家族と故郷を守ってきた女性の強さが見えてきます。
『オデュッセイア』レビュー_ロバート・パティンソン

photo by Melinda Sue Gordon (C) Universal Studios. All Rights Reserved.

ロバート・パティンソン演じる求婚者アンティノオスは、鋭い表情と相手を見下すような態度でイタケに緊張を持ち込みます。対して、ゼンデイヤ演じる知恵の女神アテナは静けさと悲しみをまとい、人間とは異なる距離からオデュッセウスを見つめる存在です。

シャーリーズ・セロン演じるカリュプソも、単なる誘惑者には収まりません。オデュッセウスを引き留めながら、その振る舞いには葛藤もにじむ。トム・ホランド演じるテレマコスは父を探す息子として、離れ離れになった家族の物語を担います。

家族のドラマ、人間の欲望、神々が介入する世界。それぞれを主演級の俳優が担うことで、壮大な神話が人間の感情と結びついていきます。

3つの物語が生む「まだ会えない」という焦り

『オデュッセイア』レビュー_アン・ハサウェイ

photo by Melinda Sue Gordon (C) Universal Studios. All Rights Reserved.

本作は、オデュッセウスの航海だけを一直線に追いません。
海上で試練に直面するオデュッセウス、父の行方を追うテレマコス、イタケで夫を待つペネロペ。離れた場所にいる3人の物語を行き来しながら進んでいきます。この切り替えによって、ひとつの危機を乗り越えても観客はなかなか安心できません。オデュッセウスが故郷へ一歩近づいたと思えば、今度はイタケの状況が動き出す。テレマコスが父を追う一方で、ペネロペを取り巻く状況も変化していきます。互いを求めながら、なかなか同じ場所へたどり着けない家族。そのもどかしさが、長い旅の時間をより切実なものにしています。

戦闘、航海、怪物との遭遇、イタケでのドラマが交互に展開するため、約3時間という上映時間を感じさせず、ひとつの場面に停滞する感覚もありません。「オデュッセウスは帰れるのか」だけでなく、「家族は再び同じ場所に立てるのか」という思いが、物語を最後まで引っ張ります。

実際の海とIMAX(R)が生む、神話世界のスケール

『オデュッセイア』レビュー_マット・デイモン

photo by Melinda Sue Gordon (C) Universal Studios. All Rights Reserved.

本作のスケールを最も強く体感できるのが、オデュッセウスたちの航海です。

実際の海で撮影された場面では、船を揺らす波や吹きつける風、甲板へ飛び込んでくる波しぶきまで画面いっぱいに迫ります。天候が変われば、船も人間も自然の力にのみ込まれていく。揺れる甲板で身体を支え、波をまともに受ける俳優たちの姿から、実際の海で撮影したからこその緊張感が伝わってきます。IMAX(R)の大画面によって、海そのものが行く手を阻む存在として迫ってくる。その臨場感も圧巻です。

引いた画では、広大な海や海岸線の中に人間や船が小さく収まり、自然のスケールの大きさが際立ちます。長編映画史上初となる全編IMAXフィルムカメラ撮影によって、壮大な風景だけでなく、その中を旅し続ける人間の小ささまで映し出します。
神話世界のスケールを別の形で見せるのが、単眼の巨人キュクロプスです。巨大な身体が空間を埋め、人間と同じ画面に収まった瞬間、その圧倒的な体格差が際立ちます。狭い場所に巨体が存在する圧迫感もあり、大きさだけでなく身体の重量まで意識させる造形です。

広大な海では自然の前で人間を小さく見せ、キュクロプスとの場面では怪物との力の差を突きつける。IMAX(R)の巨大な画面が、オデュッセウスが挑む世界の途方もなさを体感させます。

神話という題材に身構える必要はありません。神々や怪物、荒れ狂う海が待ち受ける壮大な物語でありながら、その中心にあるのは「家族のもとへ帰りたい」というシンプルな願いです。

どれほど試練に遭っても帰還を諦めないオデュッセウスと、彼を待ち続ける家族。その思いがあるからこそ、神話の世界が遠い昔の物語ではなく、ひとりの人間の帰還譚として迫ってきます。

実際の海と全編IMAXフィルム撮影によって、その長い帰路を身体感覚にまで引き寄せた『オデュッセイア』。鑑賞環境を選べるなら、ぜひIMAX(R)の大画面で体験したい作品です。

映画『オデュッセイア』基本情報

『オデュッセイア』レビュー_ポスター

(C) 2026 UNIVERSAL STUDIOS

■公開日:9月11日(金)

■監督・脚本:クリストファー・ノーラン

■出演:マット・デイモン、トム・ホランド
アン・ハサウェイ、ロバート・パティンソン
ルピタ・ニョンゴ、ゼンデイヤ、シャーリーズ・セロン

■配給:ビターズ・エンド ユニバーサル映画

■公式サイト:https://odyssey-film.jp/

早川真澄

ライター・編集者

北海道の情報誌の編集者として勤務し映画や観光、人材など地域密着の幅広いジャンルの制作を手掛ける。現在は編集プロダクションを運営し雑誌、webなど媒体を問わず企画制作を行っています。

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