北海道別海町など道内でも撮影された『恒星の向こう側』は、第38回東京国際映画祭でコンペティション部門において108の国と地域から1970本の応募がある中で選出された注目の日本映画です。本作は、『四月の永い夢』(17)などで鮮烈な印象を残した中川龍太郎監督が挑む“喪失と再生”をテーマにした3部作の最終章。11月5日(水)に行われたクロージングセレモニーでは、主人公・未知役の福地桃子さんと、母親・可那子役の河瀬直美さんがふたり揃って最優秀女優賞に輝きました。
SASARU movieでは、俳優の寛一郎さん、河瀬さん、中川監督が10月29日(水)に登壇したワールドプレミアの舞台挨拶を。そして、同回上映後の中川監督と、サプライズで河瀬さんが登壇した質疑応答の様子をキャプテン・ポップコーンこと矢武企画・矢武兄輔が東京国際映画祭(以下「TIFF」と記載)からレポートします。
※河瀬直美さんの「瀬」の字は正しくは右側が「刀」の下に「頁」と書きます。
(C) 2025映画「恒星の向こう側」製作委員会
2015年、仲野太賀が初めて映画の主演を務めた『走れ、絶望に追いつかれない速さで』(16)がTIFFの日本映画スプラッシュ部門で上映された中川監督は「(TIFFで)上映したところから、監督としてのキャリアの始まりでした。こうして、10年以上の時間を経て、新しい仲間と一緒にこの場に戻ってこられて、とても嬉しいです」と感謝を口にした。
中川監督は「原点回帰という気持ちでつくった作品。少し作品の幅も変わってきたところで、自分の中で1番最初に自主映画を撮っていた時の気持ちに戻ってつくりました。それを(上映の)原点であり、東京国際映画祭で市山尚三(TIFFプログラミングディレクター)さんに選んでいただいて上映できるということはすごく感慨深いです」と気持ちを明かす。
出演者の寛一郎 (撮影|矢武企画)
映画監督でもある河瀬直美 (撮影|矢武企画)
写真左から中川・河瀬・寛一郎 (撮影|矢武企画)
(C) 2025映画「恒星の向こう側」製作委員会
[質問①]奈良の他に北海道別海町の野付を選ばれた理由を教えてください。奈良の鹿、エゾシカ・・・鹿繋がり?
中川「奈良は日本という国で1番古い場所ですよね。野付半島は、ある意味日本人の大和民族としての文化がすごく離れているところ。つまり、縄文的なものと弥生的なものが、この日本という国の中で、とても対比があると思っていて、そのことを意識してつくりました。奈良を舞台にしたのは、本当に直美さんが出てるから。『私は奈良弁でしか芝居ができへん!』と言うので(笑)。でも、本当に奈良の映画祭に招待していただいたとき、素晴らしい場所なので、その文化としての対比というのがこの物語には必要だと思いました。鹿はたまたまです(笑)。」
監督の中川龍太郎 (撮影|矢武企画)
観客からの質問に答える2人 (撮影|矢武企画)
中川「『僕の樹木希林になってください!』とお願いしました(笑)」
河瀬「龍ちゃん、本当に(芝居が)上手いんですよ。ディレクターより俳優の方がいいんじゃないって。ぜひ、(河瀬・中川で)共演を(笑)」
中川「あの、真面目に質問に答えるとですね(笑)。映画をつくるって、自主制作からやりだしているから、“映画をつくる”と“自分が出る”ということの距離は、そこまで大きく離れているわけではない感じがします。自分がカメラの前に立つことでしか“知れない感情”があり、自分も演出家として、かなり行き詰まりを感じていたところで、直美さんの演出を受けたりして、すごい『なるほど!』と思うところも多くて。『そこにきみはいて』と河瀬さん、2つの作品に出演して、自分自身が演出家として進みたい道も開けました。それは別々のものではなくて、繋がっているものと感じています。」
映画『恒星の向こう側』作品情報
母の余命を知り故郷に戻った娘・未知は、寄り添おうとしながらも拒絶する母・可那子と衝突を重ねる。夫・登志蔵との間に子を宿しながらも、亡き親友への想いに揺れる彼の姿に不安を募らせる未知。母の遺したテープから“もう一つの愛”を知ったとき、彼女は初めて母を理解し、母から託された愛を胸に進んでいく。
※記事内の文章・画像は無断転載・使用を禁止します。
(C) 2025映画「恒星の向こう側」製作委員会
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2015年、仲野太賀が初めて映画の主演を務めた『走れ、絶望に追いつかれない速さで』(16)がTIFFの日本映画スプラッシュ部門で上映された中川監督は「(TIFFで)上映したところから、監督としてのキャリアの始まりでした。こうして、10年以上の時間を経て、新しい仲間と一緒にこの場に戻ってこられて、とても嬉しいです」と感謝を口にした。
出演者の寛一郎 (撮影|矢武企画)
中川監督は「原点回帰という気持ちでつくった作品。少し作品の幅も変わってきたところで、自分の中で1番最初に自主映画を撮っていた時の気持ちに戻ってつくりました。それを(上映の)原点であり、東京国際映画祭で市山尚三(TIFFプログラミングディレクター)さんに選んでいただいて上映できるということはすごく感慨深いです」と気持ちを明かす。
映画監督でもある河瀬直美 (撮影|矢武企画)
写真左から中川・河瀬・寛一郎 (撮影|矢武企画)
(C) 2025映画「恒星の向こう側」製作委員会
監督の中川龍太郎 (撮影|矢武企画)
[質問①]奈良の他に北海道別海町の野付を選ばれた理由を教えてください。奈良の鹿、エゾシカ・・・鹿繋がり?
中川「奈良は日本という国で1番古い場所ですよね。野付半島は、ある意味日本人の大和民族としての文化がすごく離れているところ。つまり、縄文的なものと弥生的なものが、この日本という国の中で、とても対比があると思っていて、そのことを意識してつくりました。奈良を舞台にしたのは、本当に直美さんが出てるから。『私は奈良弁でしか芝居ができへん!』と言うので(笑)。でも、本当に奈良の映画祭に招待していただいたとき、素晴らしい場所なので、その文化としての対比というのがこの物語には必要だと思いました。鹿はたまたまです(笑)。」
観客からの質問に答える2人 (撮影|矢武企画)
中川「『僕の樹木希林になってください!』とお願いしました(笑)」
河瀬「龍ちゃん、本当に(芝居が)上手いんですよ。ディレクターより俳優の方がいいんじゃないって。ぜひ、(河瀬・中川で)共演を(笑)」
中川「あの、真面目に質問に答えるとですね(笑)。映画をつくるって、自主制作からやりだしているから、“映画をつくる”と“自分が出る”ということの距離は、そこまで大きく離れているわけではない感じがします。自分がカメラの前に立つことでしか“知れない感情”があり、自分も演出家として、かなり行き詰まりを感じていたところで、直美さんの演出を受けたりして、すごい『なるほど!』と思うところも多くて。『そこにきみはいて』と河瀬さん、2つの作品に出演して、自分自身が演出家として進みたい道も開けました。それは別々のものではなくて、繋がっているものと感じています。」
映画『恒星の向こう側』作品情報
(C) 2025映画「恒星の向こう側」製作委員会
母の余命を知り故郷に戻った娘・未知は、寄り添おうとしながらも拒絶する母・可那子と衝突を重ねる。夫・登志蔵との間に子を宿しながらも、亡き親友への想いに揺れる彼の姿に不安を募らせる未知。母の遺したテープから“もう一つの愛”を知ったとき、彼女は初めて母を理解し、母から託された愛を胸に進んでいく。
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矢武兄輔
まちのえいが屋さん/キャプテン・ポップコーン
20歳の1月。札幌映画サークルに入会直後、さぬき映画祭への参加で『踊る大捜査線』の製作陣や深田晃司監督と出逢い、映画界の現実や地方から発信するエンタメの可能性を知る。そこから「映画館へ行く人を増やす」という目標を持ち、カネゴンを呼んでみたり、学生向け媒体をつくったり、休学して東京国際映画祭で勤務、映画館へ就職→退職→「矢武企画」を起業からの今は某局でラジオDJ。 すべては『踊る』の完結が始まりだった。そして、踊るプロジェクト再始動と共に…! ということで、皆さんにとって映画がもっと近くなれますように。