(C) 2025 YBK3
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2026.6.4

ゆうばり国際ファンタスティック映画祭、6月4日から開催。前回視えた、映画祭の転換期の熱量と距離感

世界中の映画人が憧れ、冬の夕張の代名詞だった「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」。いよいよ2026年6月4日(木)から7日(日)かけて開催される。本年は世界41の国と地域から500作品が応募された。新プログラミングディレクターに映画プロデューサーの小浜圭太郎氏を迎え、名誉審査員には『さらば あぶない刑事』(16)などの村川透監督、審査委員長には『起終点駅 ターミナル』(15)などの篠原哲雄監督を招聘するなど、映画専門チームとする組織強化が図られた。ゲストには『パッチギ!』(04)などの井筒和幸監督(5日16:15)やFANTASTICS from EXILE TRIBEのメンバー・瀬口黎弥氏(7日12:15)らが来場予定。さらに、宮古島チャリティー国際映画祭との初コラボ企画「NORTH to SOUTH リレー上映」や連動企画として「IDOL GACHINKO BATTLE」も行われる。
しかし、昨年は往年の「ゆうばりファンタ」「映画祭」とは少し毛色が異なる、「地域の祭り」としての再出発に視えた。夕張市の財政破綻やNPO法人の破綻はじめ、激動の転換期を経てきた映画祭。2025年に新体制による第35回が“思い出”として幕を開けた。しかし、前回の映画祭を巡っては、長年応援するファンや支えてきた地元夕張市民の複雑な胸中も交錯している。
本記事では、2025年10月に行われたゆうばり国際ファンタスティック思い出映画祭について振り返る。
 
(text/photo|矢武兄輔[キャプテン・ポップコーン])

新規ファン層の開拓、初夕張で視えたもの


レッドカーペットを歩く岩橋さん (C) 2025 YBK3

「本当にスタッフの皆さんの熱意が伝わってくる、温かい映画祭でした」。
そう笑顔を見せるのは、東京から初めて夕張を訪れたというAさん。お目当ては映画『男神』(25)に出演した岩橋玄樹さんのイベントだ。彼女のような「特定のキャスト」を目的に訪れる層が、動員に貢献した。岩橋さんの登壇は、映画祭の大きな目玉となっていたことは間違いない。一方で、初めての夕張市、初めての映画祭参加ということもあり、運営面での戸惑いもあったという。「スケジュールの変更案内が少し不十分だと感じる場面もありました」と苦笑いする。手作り感を大切にする姿勢は評価されつつも、初参加者への丁寧なナビゲートという点では、まだ伸びしろがあるように思えた。

運営面の視える課題

ボランティアとして現場を支えたBさんも、来場者の変化を肌で感じている。「役者さんのファンが増えて会場は賑わいましたが、逆に昔からのコアな映画ファンが減っている印象を受けました」と語る。運営上の混乱についても率直な意見が漏れた。「パスポートチケットの仕組みの複雑さなど、チケットについてお客様から問い合わせを受ける機会が多かったです」。パスポートがあれば多くの作品を鑑賞できるが、オープニングや最新作には別途チケットが必要になる。この複雑さが、複数プログラムに分かれている映画祭の動線をさらに難解にしていた。「案内体制を強化しないと、現場のオペレーションが回らなくなる」という危機感は、会期中にスタッフ間で共有されている。

入口には貴重なポスターも (C) 2025 YBK3

若い世代が「財政破綻の街」を視たとき


メイン会場の様子 (C) 2025 YBK3

そんな中、意外な角度から夕張市に興味を持つ若者もいた。札幌からラジオの告知をキッカケに、母親と訪れた高校1年生のCさんだ。
「映画祭のことは知らなかったのですが、YouTubeで夕張の財政破綻についての動画を見て、(夕張市のことが)ずっと気になっていたんです」。彼女にとって夕張市は、歴史の中の出来事ではなく、現在進行形の「興味深い場所」だった。映画祭の期間中に廃墟などを巡った彼女は、「映画祭が地域の祭りのようになっていて、想像以上に人が多くて驚いた」と話す。将来は街おこしや自治体の活性化に関わる仕事に興味があると語ってくれた。今回の映画祭が、若者を過疎の街へと呼び寄せる強力なキッカケになっている事実は、従来のコンセプトから変革された成果かもしれない。

市民が視ていた「おかえりなさい」の風景

しかし、長年この映画祭を見守り続けてきた映画ファンや地元事業者である市民の視線は、もう少し切実だ。
初期から通い詰めるDさんは、「(今回の運営体制になる前から)ここ数年のスタッフの頑張りは本当に認めている。字幕の改善など、ひとつずつ問題を解決しようとしているのは伝わる」と評価しつつも、厳しい表情を崩さない。「お客さんが少ないと、わざわざ来てくれたゲストに申し訳ないんだ。経済的に地域に還元できなければ、続けていく意味が薄れてしまう」と、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭が抱える構造的な弱点を突き、集客と周知方法にはさらなる工夫を期待する声もあった。
 

審査員として挨拶する井筒監督 (C) 2025 YBK3


あ・りーさだの杜入口 (C) 2025 YBK3

市内事業者Eさんの言葉も大切なことを説く。かつては自身の子どもが幼稚園児のときにゲストへ花束を贈呈し、街全体で映画人を「おかえりなさい」と迎えた。「10年代頃から市民との距離が開いてしまった。自分たちで守りきれなかった悔しさもある」と吐露する。それでも、映画祭を通じて監督の苦労やクリエイターの熱意にふれることで、当時の市民の映画に対する視座は間違いなく広がった。「(来道した映画人を)きちんとお出迎えしたい」、Eさんの子どもが高校生のときに言っていたことを思い出し「あの頃の接点を取り戻したいんです」と心中を語った。

地域創世を目指す。運営サイドが視るもの

そんな現場の熱意と課題を一身に背負い、奔走しているのが、運営委員会事務局のマネージング・ディレクターであり、現在は運営委員長を務める田村謙治さんだ。
「昨年からSTEM株式会社として運営に携わっています。正直、我々には映画祭のノウハウがなく、最初は手探りでした。市民や地元事業者との連携が不十分なことも自覚しています」。NPO法人の破綻により、赤字問題や協賛企業の減少など、経営面での課題は山積みだった。
しかし、田村さんの目はすでに「次」を見据えている。「第35回の“思い出映画祭”という名称は、新体制のスタートを示すための名称でした。今回の第36回からは、通常の『ファンタスティック映画祭』に戻します。これは復活ではなく、かつての国際的認知度を取り戻すための『再加速』です」と想いを語る。伝統のファンタスティックジャンルを継承し、6月のメロンシーズン初旬に開催時期を固定したのも、告知の早期化や集客、虫対策、寒さ対策を改善するための戦略だ。

帯広出身の星乃夢奈さん (C) 2025 YBK3

編集後記、筆者に視えたこと、そして観にいくこと。


映画祭の醍醐味、ゲストが通りかかるとサイン (C) 2025 YBK3

自主映画の登竜門として、初めて夕張で作品が上映された新人監督のFさんが「運営スタッフの熱意に感動した。ここで上映されることに大きな意味を感じる」と語ったように、この地には、まだ確かに映画の芽を育てる土壌が残っているかもしれない。
課題は山積みだが、手作り感という「温かさ」を残しつつ、国際映画祭としての「誇り」を取り戻そうとする挑戦は、単なるイベントの復活ではない。それは、一度立ち止まったマチが、映画という灯火を頼りに再び歩み出す「再生の物語」になる可能性もある。
伝統を守りながら、新しい才能を世界へ押し出す。90年代のあの熱量を、現代の形で取り戻すことはできるのか、明日から開催のゆうばり国際ファンタスティック映画祭に注目したい。

新規ファン層の開拓、初夕張で視えたもの


レッドカーペットを歩く岩橋さん (C) 2025 YBK3

「本当にスタッフの皆さんの熱意が伝わってくる、温かい映画祭でした」。
そう笑顔を見せるのは、東京から初めて夕張を訪れたというAさん。お目当ては映画『男神』(25)に出演した岩橋玄樹さんのイベントだ。彼女のような「特定のキャスト」を目的に訪れる層が、動員に貢献した。岩橋さんの登壇は、映画祭の大きな目玉となっていたことは間違いない。一方で、初めての夕張市、初めての映画祭参加ということもあり、運営面での戸惑いもあったという。「スケジュールの変更案内が少し不十分だと感じる場面もありました」と苦笑いする。手作り感を大切にする姿勢は評価されつつも、初参加者への丁寧なナビゲートという点では、まだ伸びしろがあるように思えた。

運営面の視える課題


入口には貴重なポスターも (C) 2025 YBK3

ボランティアとして現場を支えたBさんも、来場者の変化を肌で感じている。「役者さんのファンが増えて会場は賑わいましたが、逆に昔からのコアな映画ファンが減っている印象を受けました」と語る。運営上の混乱についても率直な意見が漏れた。「パスポートチケットの仕組みの複雑さなど、チケットについてお客様から問い合わせを受ける機会が多かったです」。パスポートがあれば多くの作品を鑑賞できるが、オープニングや最新作には別途チケットが必要になる。この複雑さが、複数プログラムに分かれている映画祭の動線をさらに難解にしていた。「案内体制を強化しないと、現場のオペレーションが回らなくなる」という危機感は、会期中にスタッフ間で共有されている。

若い世代が「財政破綻の街」を視たとき


メイン会場の様子 (C) 2025 YBK3

そんな中、意外な角度から夕張市に興味を持つ若者もいた。札幌からラジオの告知をキッカケに、母親と訪れた高校1年生のCさんだ。
「映画祭のことは知らなかったのですが、YouTubeで夕張の財政破綻についての動画を見て、(夕張市のことが)ずっと気になっていたんです」。彼女にとって夕張市は、歴史の中の出来事ではなく、現在進行形の「興味深い場所」だった。映画祭の期間中に廃墟などを巡った彼女は、「映画祭が地域の祭りのようになっていて、想像以上に人が多くて驚いた」と話す。将来は街おこしや自治体の活性化に関わる仕事に興味があると語ってくれた。今回の映画祭が、若者を過疎の街へと呼び寄せる強力なキッカケになっている事実は、従来のコンセプトから変革された成果かもしれない。

市民が視ていた「おかえりなさい」の風景


審査員として挨拶する井筒監督 (C) 2025 YBK3

しかし、長年この映画祭を見守り続けてきた映画ファンや地元事業者である市民の視線は、もう少し切実だ。
初期から通い詰めるDさんは、「(今回の運営体制になる前から)ここ数年のスタッフの頑張りは本当に認めている。字幕の改善など、ひとつずつ問題を解決しようとしているのは伝わる」と評価しつつも、厳しい表情を崩さない。「お客さんが少ないと、わざわざ来てくれたゲストに申し訳ないんだ。経済的に地域に還元できなければ、続けていく意味が薄れてしまう」と、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭が抱える構造的な弱点を突き、集客と周知方法にはさらなる工夫を期待する声もあった。
 

あ・りーさだの杜入口 (C) 2025 YBK3

市内事業者Eさんの言葉も大切なことを説く。かつては自身の子どもが幼稚園児のときにゲストへ花束を贈呈し、街全体で映画人を「おかえりなさい」と迎えた。「10年代頃から市民との距離が開いてしまった。自分たちで守りきれなかった悔しさもある」と吐露する。それでも、映画祭を通じて監督の苦労やクリエイターの熱意にふれることで、当時の市民の映画に対する視座は間違いなく広がった。「(来道した映画人を)きちんとお出迎えしたい」、Eさんの子どもが高校生のときに言っていたことを思い出し「あの頃の接点を取り戻したいんです」と心中を語った。

地域創世を目指す。運営サイドが視るもの


帯広出身の星乃夢奈さん (C) 2025 YBK3

そんな現場の熱意と課題を一身に背負い、奔走しているのが、運営委員会事務局のマネージング・ディレクターであり、現在は運営委員長を務める田村謙治さんだ。
「昨年からSTEM株式会社として運営に携わっています。正直、我々には映画祭のノウハウがなく、最初は手探りでした。市民や地元事業者との連携が不十分なことも自覚しています」。NPO法人の破綻により、赤字問題や協賛企業の減少など、経営面での課題は山積みだった。
しかし、田村さんの目はすでに「次」を見据えている。「第35回の“思い出映画祭”という名称は、新体制のスタートを示すための名称でした。今回の第36回からは、通常の『ファンタスティック映画祭』に戻します。これは復活ではなく、かつての国際的認知度を取り戻すための『再加速』です」と想いを語る。伝統のファンタスティックジャンルを継承し、6月のメロンシーズン初旬に開催時期を固定したのも、告知の早期化や集客、虫対策、寒さ対策を改善するための戦略だ。

編集後記、筆者に視えたこと、そして観にいくこと。


映画祭の醍醐味、ゲストが通りかかるとサイン (C) 2025 YBK3

自主映画の登竜門として、初めて夕張で作品が上映された新人監督のFさんが「運営スタッフの熱意に感動した。ここで上映されることに大きな意味を感じる」と語ったように、この地には、まだ確かに映画の芽を育てる土壌が残っているかもしれない。
課題は山積みだが、手作り感という「温かさ」を残しつつ、国際映画祭としての「誇り」を取り戻そうとする挑戦は、単なるイベントの復活ではない。それは、一度立ち止まったマチが、映画という灯火を頼りに再び歩み出す「再生の物語」になる可能性もある。
伝統を守りながら、新しい才能を世界へ押し出す。90年代のあの熱量を、現代の形で取り戻すことはできるのか、明日から開催のゆうばり国際ファンタスティック映画祭に注目したい。

矢武兄輔

まちのえいが屋さん/キャプテン・ポップコーン

20歳の1月。札幌映画サークルに入会直後、さぬき映画祭への参加で『踊る大捜査線』の製作陣や深田晃司監督と出逢い、映画界の現実や地方から発信するエンタメの可能性を知る。そこから「映画館へ行く人を増やす」という目標を持ち、カネゴンを呼んでみたり、学生向け媒体をつくったり、休学して東京国際映画祭で勤務、映画館へ就職→退職→「矢武企画」を起業からの今は某局でラジオDJ。 すべては『踊る』の完結が始まりだった。そして、踊るプロジェクト再始動と共に…! ということで、皆さんにとって映画がもっと近くなれますように。

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